前日16日の米国株式相場はまちまち。ダウ平均は36.78ドル高の28032.38ドル、ナスダックは139.86ポイント安の11050.47ポイントで取引を終了した。FOMCでのハト派姿勢を期待して、寄り付きから堅調に推移した。予想通り大規模緩和策を据え置き、2023年末までゼロ金利を予想していることが明らかになると上げ幅を拡大した。しかし、パウエルFRB議長が会見で現行の資産購入規模が適切であるとし、「現行のガイダンスは極めて強力」との考えを示すと追加緩和期待が後退し、引けにかけては上げ幅を縮小した。
米国株式相場を受けた今日の東京株式市場は売り優勢の展開となった。昨日のFOMCの結果発表は市場の安心感となったが、米株式市場でダウ平均が取引終了にかけて急速に伸び悩んだことから、東京株式市場での株価押上げ効果は限定的だった。また、昨日は菅内閣が発足し菅首相はじめ新閣僚が記者会見に臨み、菅政権の政策に期待する向きはあるものの、新閣僚の顔ぶれは昨日日中までに概ね報じられており、一旦、材料出尽くしと見る向きもあった。さらに、外為市場で1ドル=105円00銭近辺と昨日午後の円の高値よりさらに20-30銭ほど円高・ドル安に振れたことも買い手控え要因となった。なお、きょう東証1部に上場した雪国まいたけ<1375>は公開価格2200円を100円
(4.5%)下回る2100円で初値を付けた。
個別では、JR東<9020>と資本業務提携すると発表した千趣会<8165>がストップ高買い気配となり、第1四半期連結営業利益が前年同期比2.0倍となったアスクル<2678>が10%を超す大幅高となったほか、第1四半期連結営業利益が前年同期比3.2倍となったコーセル<6905>、共同開発先がQRコードセキュリティの提供開始を発表した佐鳥電機<7420>、菅首相が不妊治療への保険適用実現に改めて意欲を示したことが手掛かり材料となったあすか製薬<4514>、21年3月期上半期(中間期)業績予想を上方修正したアルプス物流<9055>が上げた。
一方、求人広告需要の低迷長期化を見込み国内証券が目標株価を下げたディップ<2379>、東証と日証金が信用取引に関する臨時措置を実施すると発表した福島銀行<8562>、21年3月期の連結営業損益が赤字予想と発表したJR東<9020>、JR西<9021>が下げた。
セクターでは、海運業、倉庫運輸関連、銀行業、繊維製品、その他金融業などが値上がり率上位。一方、陸運業、鉄鋼、空運業、非鉄金属、ゴム製品などが値下がり率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の34%、対して値下がり銘柄は59%となっている。
昨日から今日にかけて、注目の記者会見が相次いでいる。ごく簡単に見ておこう。
まず、菅首相の記者会見。これまでの金融財政政策が継続されるのかどうかが焦点だったが、菅首相は、金融緩和、財政支出、成長戦略の3本を柱とする「アベノミクス」を継承することを明言した。想定内とは言え株式市場にとって最大級の支援要因だろう。財政政策を担う麻生財務・金融相は会見で「財政や財政投融資を活用し、景気を戻していくのが今の大きな要素だ」と述べており、また、黒田日銀総裁の任期は2023年まで続くことから、現場レベルでも従来の金融財政政策には殆ど変化がないと見て良いだろう。
次に米国。FOMCでは少なくとも2023年末までゼロ金利政策を維持する方針が表明された。パウエルFRB議長もFOMC後の会見で低金利政策を続けると約束した。これまでの緩和政策が継続することとなる。
FOMCの結果発表を受け、昨日の米国株式市場でダウ平均は一旦上昇したものの、取引終了にかけて伸び悩んだ。一部では、FOMC参加者の経済見通しが前回公表時よりも弱かったことが警戒されたとの見方もあるようだが、これは株式市場にとってはむしろ好材料かもしれない。経済見通しが強気であれば追加緩和の余地が小さくなるが、経済の先行きに警戒感が高まるほどに追加緩和の可能性が高くなる。新型コロナにより経済見通しが総悲観とも言える今年3月に今回の株高が始まったことを思い起こしたい。
再び日本。今日午後は黒田日銀総裁の記者会見が予定されている。金融緩和策の維持や菅政権との協調姿勢が示されると見られている。注目しておきたい。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。FOMCや新内閣発足に関連した材料は株価に次第に織り込まれてきている。その中で、今日15時30分に予定されている黒田日銀総裁の会見内容を確認したいとのムードが広がり、積極的な売買が見送られる可能性もありそうだ。ただ、前場のTOPIXの下落率が0.51%で、日銀によるETF買いの思惑が働く可能性もある。
<AK>
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