3. 内部成長戦略
内部成長戦略では、「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「付帯収入増加と費用削減」「戦略的な「攻め」の資金活用」を運用方針としている。「高稼働率の維持・向上」は、スポンサーやPM(プロパティ・マネジメント)会社との連携により、タイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取り込みや、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)向上によるテナント退去の防止、ダウンタイムの短縮などを目指す。「賃料増額に向けた取り組み」では、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額や是正を推進する。「戦略的な「攻め」の資金活用」については、潤沢なフリーキャッシュ及び内部留保の活用によるポートフォリオのブラッシュアップ戦略を講じる。これは、内部成長スピードの加速、インフレの影響を賃料に転嫁しやすくするバリューアップ工事(環境の醸成)、先行投資による将来キャッシュ・フローの創出、獲得したキャッシュ・フローをポートフォリオへ投じブラッシュアップ(循環投資)、内部成長によるROAの向上を通じたEPUの持続的成長などを目指すものだ。特に「戦略的な「攻め」の資金活用」は、「NEXT VISION II+」の数値目標達成のための重要な戦略であり、これによって分配金向上へのプラスアルファを生み出す計画である。
2025年5月期に賃料収入年成長率2.3%と前中期目標の2%を達成したことから、新たに賃料収入年成長率5%という意欲的な目標を設定した。その実現に向け、第1に「全テナントへの賃料増額改定依頼」を実施し、特殊な事情を除く契約更新対象のすべてのテナントに対し、オフィス・レジデンスともに賃料改定の申し入れを行う。第2に「バリューアップ対象物件の拡大」を目指し、セットアップオフィス化(オフィス家具や通信設備が整っており、すぐに業務を開始できる状態に内装が完成したオフィスにすること)及びレジデンス専有部のバリューアップ対象を拡大する。第3に「成長資産の取得」を行い、賃料ギャップのある、またはバリューアップ効果の高い成長資産の取得に努める。同REITでは、これらの3つの施策により強力に内部成長を推進することで金利上昇やインフレに対応し、分配金の継続的な増加を図る考えである。
オフィスの期中平均稼働率は、2025年5月期にはセットアップオフィス化の工事実施により一時的に97.8%に低下したものの、2025年11月期には99.1%に上昇し、リーシング状況は好調である。テナント入替時には、フリーレント付与月数の短期化に加え賃料増額を同時に実現しており、オフィス需要の堅調さが確認できる。2025年11月期は6期連続の賃料増額改定となり、期当たり75百万円強の増益を実現した。現在、東京都心及び大阪の複数物件で市場賃料の上昇による賃料ギャップ(市場賃料との乖離)が7.8%に拡大しており、今後の契約更新等を通じて賃料増額改定が実現しやすい環境にある。また、セットアップオフィス化工事の実施など、バリューアッド運用により含み益の拡大を実現している。同REITの主要顧客は中小事業者が中心であるが、マーケット賃料が上昇傾向で、空室率も低下傾向であるなど、オフィス運用の好事業環境が続いている。
レジデンスにおいては、2025年11月期の期中平均稼働率は96.3%となった。バリューアップ工事に伴う一時的な低下が見られたものの、期末にはおおむね前期と同水準に回復しており、安定トレンドを維持している。投資エリア別では、保有物件が集中する東京圏を中心に、コロナ禍を経て都市部への人口流入が追い風となり、リーシングが好調に推移している。なお、オフィスではテナントが原状回復後に引き渡すため期中平均稼働率が高いが、レジデンスでは入居者の退去後にオーナーが工事をするため、現在の期中平均稼働率は上限に近い水準と言える。
実績面では、2025年11月期には入替賃料・更新賃料いずれも増額で改定し、賃料収入は期当たり63百万円強の増加となった。特に、バリューアップ戦略に基づくレジデンス専用部のリニューアル工事の実施により、賃料の大幅な増額改定が実現した。また、礼金取得率は約60%の高水準を維持し、更新率も70%台後半の水準で推移するなど、良好なリーシング環境がポートフォリオの安定化を支えている。市場の賃料急上昇に伴い賃料ギャップが拡大していることから、これを解消して今後の賃料上昇につなげる計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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