3. 今後の成長戦略
シノケングループ<8909>は今後の成長戦略として、ストックビジネス、ライフケア、不動産ファンド・REIT事業を新たな成長エンジンと位置付け積極的展開していく方針となっている。ストックビジネス(不動産関連サービス、エネルギー、ライフケアの一部)については、アパートメント販売やマンション販売などフロービジネスで広げた自社物件における入居者やオーナーに対する既存サービスの積み上げのほか、既存サービスと親和性の高い新たなサービスを提供することで着実な成長を続けていく方針となっている。また、ライフケア事業においては前述したように高齢者や要介護者に向けたサービスだけでなく、同社物件の入居者等に向けた各種サービスの展開も予定している。
今後、大きく成長する可能性を秘めている事業として、不動産ファンド・REIT事業が挙げられる。第1号ファンドが好評だったことから、現在「HHT-2号ファンド」の組成に向けた準備を進めており、2019年前半にも組成・運営の開始を目指している。ファンドの規模は30億円程度を想定している。なお、REITについてはライセンス取得後にシノケンリート投資法人(仮称)を設立し開始する見込みであったが、当局マターとして待ちの状態が続いているのが現状である。目下の市場環境の不安定さが影響しているものと思われる。しかし、ライセンス取得には関係なく、昨年同様の私募ファンドの組成を行うことは可能であり、それを待つことなく2019年も積極的に不動産ファンドで実績を積み、並行してREIT組成の準備も行っている。また、インドネシアのアパートメントメント「桜テラス」についても、いずれ複数棟をまとめて機関投資家等に売却していくことを予定している。
国内の不動産ファンド・REITの組成に関しては、3つの事業成長機会を創出できると考えている。第1に、販売領域の拡大による不動産セールス事業の成長加速である。不動産ファンドの対象となる物件は、東京23区内の駅徒歩10分圏で、従来は同社の対象外であった価格帯の物件となる。このため一般個人投資家向け商品とのカニバリゼーションは発生せず、不動産セールス事業における新規の増収要因となる。具体的には、23区内では従来、1棟1億円前後の物件を中心に販売していたが、不動産ファンド向けでは1.2~1.5億円程度の物件を目安としている。なお、資産規模が拡大していけば将来的にその他のエリアにも対象を広げていくことになるが、その際も個人投資家向けの価格帯よりも高価格帯の物件を対象に展開していく予定にしている。また、運用利回りについては従来と大きな違いはないが、アパートメントの規模がやや大型化することによって建築コストに占める共有部分のコスト比率が低下するため原価率が低減するほか、営業費用(人件費や広告宣伝費等)も低く抑えることができることから、物件販売の収益性は向上することが予想される。
第2の成長機会としては、不動産ファンド・REIT向けアパートメントの販売増に伴い、ストックビジネスの成長スピードの加速が挙げられる。従来の個人投資家向けアパートメントは1棟当たり約4~8戸であったが、不動産ファンド向けは最大20戸程度の規模が想定されるため、賃貸管理や家賃等の保証債務、保険サービス並びにLPガス・電力の契約件数の増加ペースも加速することが想定される。また、不動産ファンド・REIT資産の運用・管理に伴う手数料収入も入ることになる。年間の運用手数料については資産規模の1%程度が業界平均となっており、これに販売時の手数料が加わることになる。
第3の成長機会としては、REITの上場による顧客層の拡大が挙げられる。従来は、会社員や公務員などの個人投資家が対象であったが、REITでは国内外の機関投資家や個人投資家に販売できることになる。属性によりローン審査が通らなかった見込み客、あるいは既に複数棟所有しており追加ローンが組めない顧客等でもREITが上場すれば少額資金で投資運用が可能となり、機関投資家から少額投資の個人投資家まで顧客層が一気に拡大することになる。
国内のREITに関してはオフィスビルや商業施設、ホテル、レジデンスなど用途特化型の商品が多く組成されているがアパートメント特化型の商品がまだないこと、また、レジデンス系では東京23区内にエリアを絞ったREITがないこと、さらに利回りも5%台と高いことから機関投資家のニーズも大きいと見られ、土地の仕込みさえ順調に進めば今後順調に拡大していくものと予想される。同社では将来的に総額300億円程度の資産規模をもって東証への上場を目指しており、さらに1,000億円規模を目標に事業拡大を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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