―米商業用不動産問題など懸念材料も、日銀の政策正常化期待追い風に上値追いなるか―
日経平均株価が初めて4万円台に乗せた。この先は東証株価指数(TOPIX)が史上最高値(2884.80)を更新できるかどうかに市場の関心が移ることとなる。そのTOPIXに大きく影響するメガバンクは相対的に出遅れた状況にある。日銀の金融政策の正常化観測が広がるなか、国内の銀行株には事業環境の好転期待が膨らむ一方、米国では商業用不動産(CRE)融資を巡る不良債権問題が表面化している。銀行株の上昇には金融システム不安を巡る投資家の疑念の解消が必要と言えそうだ。
●半導体株躍進の陰で軟調だった地銀株
週明け4日の東京市場ではレーザーテック <6920> [東証P]や東京エレクトロン <8035> [東証P]、アドバンテスト <6857> [東証P]など半導体 関連株への買い注文が集まり、全体相場を大きく押し上げた。対照的に三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]とみずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]が小幅に下落。メガバンク が冴えない動きとなったほか、七十七銀行 <8341> [東証P]や九州フィナンシャルグループ <7180> [東証P]をはじめとする地銀株は軒並み安となった。
米地銀のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ
時価総額加重平均型の株価指数であるTOPIXは日経平均に比べ、メガバンクの株価動向による影響を受けやすい。年初来の上昇率は日経平均が約20%。これに対しTOPIXは約15%と及ばない。上場来高値をつける銘柄が相次ぐなか、三菱UFJは株式分割考慮後ベースで2006年につけた高値の手前に位置するほか、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]は08年以来、みずほFGは09年以来の高値圏にとどまっている。
銀行株の変動要因である日銀の金融政策について、市場では時期はともあれマイナス金利が解除に向かうとの見方が優勢だ。株式相場に対するネガティブな影響を懸念する向きもあるが、「実際にマイナス金利が解除されればデフレ脱却への象徴的な出来事となるため、日本株には追い風となる」(岩井コスモ証券投資調査部長の有沢正一氏)との声がある。銀行株は政策保有株縮減や、株主還元姿勢の強化への期待もあるだけに、政策修正を受けて材料出尽くしと受け止めた売りが膨らんだ際には、押し目待ちの買いを集める展開も見込めるだろう。一方、マイナス金利解除後の利上げシナリオを見込む市場参加者は少数派であり、国内要因だけで金利が一段と上昇するには高いハードルが存在する。カギを握るのは外部要因で、具体的には米国におけるCREの問題と金利動向と言えるだろう。
●CRE問題「一部にとどまる」との声も
CREに関しては金融当局によるセーフティーネットの存在から、「問題が中小の銀行にとどまる限り金融システム不安は回避される」(国内証券アナリスト)との見方がある。JPモルガン・チェース
その米債券市場では、2年債利回りが10年債利回りを上回る「逆イールド」の状態が続いている。スプレッドは昨年半ばから秋口にかけて縮小に向かったが、足もとではマイナス0.35%程度とまだ開きがある。2年債は金融政策の影響を受けやすく、利下げ観測が強まれば利回りに低下圧力を掛けやすい。一方、10年債では、米大統領選の情勢が変動要因として意識されつつある。共和党候補の予備選で優勢に立つトランプ前大統領は、減税を公約に掲げる。米国の債務膨張リスクが高まるなか、財政不安と利下げ観測が綱引き状態となれば、10年債利回りは4%台で高止まりする展開が見込まれる。
米国経済そのものが堅調ななかで逆イールドが解消すれば、銀行の運用環境にはプラスの影響をもたらす。米国の金融セクターへの評価が高まった場合は、米銀株高を通じて日本の銀行株に上昇圧力が高まりそうだ。ただ2年債と10年債の逆イールド解消時期は7~9月期との見方が多い。目先のところはやはりCRE問題を巡る投資家の不安心理の解消が大きなファクターとなるに違いない。
市場では「TOPIXが最高値を更新すれば日経平均で4万2000円までの上昇が見込めるが、年後半は米国の大統領選挙などへの警戒感が広がりやすく波乱含みとなりそうだ」(立花証券企業調査部部長の鎌田重俊氏)との見方もある。TOPIXの最高値更新に市場の期待が膨らむ一方で、全体相場に関しては「宴の後」の一時的な調整リスクにも留意が必要な状況となっている。
株探ニュース
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