同社の競合環境を見ると、ファッション領域では青山商事<8219>やはるやま商事などが主な比較対象であり、いずれもスーツ需要縮小という構造課題に直面している。同社はその中で、ビジネスカジュアルやレディースの強化を鮮明に打ち出し、客層拡大と構成比のシフトを進めている点が特徴的である。また、年間スーツ販売数約79万着、認定スタイリスト約約2,600人を有する接客力と業界No.2のポジションを維持している。エンターテイメントではマーケット自体は縮小気味になっているが、快活CLUBで圧倒的なシェアを確保。ファッションで培ってきた接客力、清潔・整理・整頓など店舗運営力やサービス面でも他社店舗との差別化が効いている。そのほか、ブライダル分野では婚姻数の減少という市場環境下において、プロデュースした結婚式数約11万組と実績を持つ中で、アニヴェルセルブランドの高付加価値モデルに強みを持つ。
2026年3月期第1四半期の連結業績は、売上高43,741百万円(前年同期比2.0%増)、営業利益2,356百万円(同0.1%増)と、売上は5期連続の増収を確保した一方で、人件費や新規出店コストの影響により営業利益は微増となった。ただ、通期業績予想の進捗に対して、各段階利益はそれぞれやや上回って推移しているようで、順調な進捗が確認された。ファッション事業では、新規出店及び既存店が堅調に推移し増収も、出店コスト等の増加により減益。ORIHICAの新規出店が 7店舗、パジャマスーツ、Tシャツ、ビズニットなどのカジュアル衣料が好調だった。エンターテイメント事業は、鍵付完全個室店舗の拡大推進とサービス料金や飲食メニュー価格の適正化等により既存店が堅調に推移し増収、第1四半期として過去最高売上高及び最高益を達成した。ブライダルは基幹店の「表参道店」「みなとみらい横浜店」を中心に施行組数が増加して、増収及び営業損失改善となった。
市場環境としては、ファッションでは少子高齢化と働き方改革によるスーツ需要の縮小が構造的な課題となる一方、コロナ禍を経てビジネスカジュアルやリモートワーク対応の需要が拡大している。エンターテイメント市場は人口減少の逆風があるものの、娯楽の多様化や個室ニーズの高まり、また「サードプレイス」としての需要の伸びを背景に安定した成長が続く。ブライダル市場は婚姻数減少が続くが、披露宴の単価上昇や少人数婚の定着といったトレンドが見られ、消費者の価値観変化を取り込める企業が優位に立つ構図である。同社はこれら環境変化に対し、ファッションでは商品ミックス転換と新規出店、エンターテイメントでは鍵付完全個室店舗とサービス面の拡充、ブライダルではブランド力を軸とした高付加価値戦略で対応していく。
中期経営計画(2024~2026年度)では、2027年3月期に売上高2,000億円、営業利益180億円を掲げており、営業利益率9%、ROIC6.7%、ROE7%、EPS120円を目標としている。今期計画を達成すると中計最終年度の数値感は比較的達成度は高いか。ファッションではショッピングセンター内立地の強化やカジュアル・レディース・ウェルネス領域の拡充を進め、売場効率の改善とORIHICAでは200店舗体制を目指す。ウェルネス・スポーツウェア市場への進出とコラボ先の拡大や、DX施策としてAI技術の活用によるEC強化と店舗業務の平準化の推進を図っていく。将来的には売上構成をビジネス4割、カジュアル3割、レディース3割を一定の目安としているようだ。エンターテイメントでは快活CLUBの鍵付完全個室モデルを拡大し、都市型店舗の稼働率向上と女性客比率増加を狙う。具体的には、2026年度に都市型店舗稼働率60%(2024年度実績49.8%)、都市型店舗比率21%(同11.5%)、都市型店舗女性比率35%(同24.5%)を目指している。ブライダルはリソース配分を見直し、主力基幹2店舗を徹底強化、多様化するニーズへの対応を進めている。好立地を活かしたハイブランドとのコラボ企画の推進や、イベント・パーティ誘致による認知度向上などMICE拡大および売上拡大を図っている。
さらに、グループ共有ノウハウ・アセットを活用したシナジーの発揮とガバナンスを強化し、2033年度には営業利益300億円を目指している。長期方針では、M&Aなども視野にいれた新規事業確立、既存事業・新規事業の海外展開なども視野に入れているようだ。
株主還元については、配当性向50%以上かDOE3%以上のいずれか高い方を選択する方針を掲げ、2026年3月期は1株当たり80円(前年75円)への増配を予定している。すでにPBR1倍に到達しているが、総還元性向70%以上も掲げている。ガバナンス面では指名・報酬委員会の権限強化、コンプライアンス体制の刷新を進めており、より健全な経営体制を推進するとともに盤石なガバナンス体制構築を継続していく。
総じて、AOKIホールディングスは、既存3事業の深化と構造転換に加え、新規事業やM&Aも視野に入れながら、2033年度に営業利益300億円を目指す中長期成長シナリオを描いている。短期的には人件費や新規出店コストが利益を圧迫する局面が続く可能性もあるが、ファッションにおけるカジュアル・レディースの強化や快活CLUBの完全鍵付個室化モデル含めて中期計画の数値目標達成は十分に射程圏内にある。直近株価は上昇基調にあり2018年5月につけた1810円を超えて9月12日に1,860円へ到達。配当利回り4.4%水準、PBR1.1倍台と依然として割安感が残る中、今後の株価動向には注目しておきたい。
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