第一実業、売上高、各段階利益ともに過去最高 エナジーソリューションズ、自動車、エレクトロニクスが業績を牽引
目次
宇野一郎氏(以下、宇野):みなさま、こんにちは。第一実業株式会社 代表取締役 社長執行役員の宇野一郎です。平素より、当社並びに当社グループへご関心をお寄せいただき、また格別なご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
本日は、まず常務執行役員CFOの府川より2024年3月期決算概要について説明し、私からは中期経営計画「MT2024」の進捗と通期業績予想についてご説明します。
その後、府川より資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について、当社の取り組みをお話しします。
決算のポイント
決算のポイントです。当期の連結業績は当初の予想を上回り、増収増益で売上高、各段階利益ともに過去最高となり、中期経営計画「MT2024」における3年目の計画を前倒しで達成する好業績となりました。
これは2016年3月期から移行した事業軸制と、当社の強みであるグローバルネットワークを生かした各地域における事業活動に加え、当社独自のエンジニアリング力を生かした「モノ×コト」売りが着実に進化している成果だと考えています。
連結業績
府川治氏(以下、府川):当期の決算概要についてご説明します。当期の連結業績は増収増益で、売上高、各段階利益ともに過去最高となりました。
業績を大きく牽引したのはエナジーソリューションズ事業、自動車事業、エレクトロニクス事業で、エリアでは米州と欧州が業績に寄与しました。
受注高は前期に初めて2,000億円を超え、当期も2,040億円と好調を維持しています。
当期純利益の増減要因
当期純利益の増減要因についてです。売上総利益は前期比プラス19.5パーセントで、約52億円の増加となりました。そのうち円安による影響は5億円程度ありました。
販管費については約28億円の増加です。主な要因は人件費で、エンジニアリング力の強化と営業体制の増強を主たる目的として採用を続けています。2024年3月末現在で連結従業員数は1,402名で、前期比で83名増加しています。
その他の増減要因については、スライドに記載のとおりです。
海外売上高(仕向け先ベース)
当期の海外売上高は、米州および欧州エリアが大きく伸長し、前期比9.9パーセント増加の約905億円となりました。米州エリアはエナジーソリューションズ事業や産業機械事業の大型案件が大きく寄与し、40.5パーセント増加の約192億円です。
欧州エリアでも、エナジーソリューションズ事業が大型プロジェクト案件の売上により大きく貢献し、エレクトロニクス事業についても車載向けの販売が好調でした。この結果、前期比32.7パーセント増加の約105億円となりました。
中国エリアは、国内景気の減速による影響を懸念していましたが、自動車事業における日系企業向けの売上が貢献し、4.3パーセント増加の約319億円となっています。
また、アジアエリアについては、産業機械事業、エレクトロニクス事業が市況の影響を受けたため、4.6パーセント減少の約287億円となりました。一方で、自動車事業など、前期より好調なセグメントもありました。
なお、アジアでの成長市場と位置付けているインドに、自動車や二輪、家電業界など、現地企業がターゲットの搬送システムを製造する会社を設立しました。これを機に、インド市場の開拓を加速させます。
セグメント別業績(売上高・営業利益)
セグメント別の業績についてご説明します。プラント・エネルギー事業は、国内外向けの各種プラント用設備や地熱開発向け機材などの販売が減少しました。営業利益については、バイナリー発電装置の不具合対応による引当金の計上が大きく影響し、減益となりました。
エナジーソリューションズ事業は、当期の予定どおり、国内外向けにリチウムイオン・バッテリー製造装置の販売があり、売上高、営業利益ともに大幅に増加しました。
産業機械事業は、医療関連機器の自動組立装置、プラスチック製品や食品業界向けの成形機、米州エリアでは塗装関連プロジェクトが順調に進捗し、売上高、営業利益ともに増加しました。
エレクトロニクス事業は、中国や欧州で車載関連向けの電子部品実装装置等の売上が増加したものの、半導体関連の販売が減少したため、減益となりました。
自動車事業は、中国とアジアで日系企業向けの自動組立ラインや成形機の売上が増加しました。営業利益については、自動車セグメントとして過去最高となりました。
ヘルスケア事業は、高度管理医療機器向けの製造装置の売上が増加したものの、錠剤印刷検査装置等の販売が減少し、減益となりました。
航空・インフラ事業は、コロナ禍明けの投資回復に伴い受注した、エアライン向けの地上支援機材等の販売があり、売上高、営業利益ともに増加しました。
連結財政状態
連結財政状態についてです。当期末の総資産は、前期末に比べ約413億円増加の約1,938億円となりました。これは主に現金および預金の減少があったものの、受取手形、売掛金及び契約資産や前渡金が増加したことによるものです。
負債合計は約315億円増加の約1,204億円となりました。これは支払手形及び買掛金や、前受金が増加したことによるものです。
純資産合計は、約98億円増加の約734億円となりました。主に配当金の支払いがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益約75億円の計上や、その他有価証券評価差額金の増加があったことによるものです。
連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローについてです。当期における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末と比べて約21億円減少し、約302億円となりました。
各キャッシュ・フローの状況についてご説明します。営業活動によるキャッシュ・フローは、約17億円の支出となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益の計上、前受金の増加があったものの、前渡金の増加、売上債権及び契約資産の増加があったことによるものです。支払い先行型の大型案件が多かったため、当期は営業キャッシュ・フローが一時的にマイナスとなっています。
投資活動によるキャッシュ・フローは、約5億円の支出となりました。これは、投資有価証券の売却による収入があった一方、固定資産の取得支出や、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出があったためです。
財務活動によるキャッシュ・フローは約9億円の支出となりました。主に配当金の支払いによるものです。
定性目標 2年目の成果
宇野:中期経営計画「MT2024」の2年目についてご説明します。中期経営計画の2年目は、非常に良い結果となりました。これは、スライドに掲げている定性目標一つひとつへの取り組みの成果であると考えています。
特に「エンジニアリング機能の強化」では、人材の増強や、エンジニアリング本部によるプロジェクト案件を包括的に管理する体制の整備、リスクマネジメントの強化を行いました。これらにより大型案件の売上を確実にできたことが、業績に大きく寄与しました。
また、「戦略的事業投資」としては、エンジニアリング機能の強化を目的とし、シミュレーションエンジニアリングに強みを持つウエイブエンジニアリング社を買収しました。さらに工場DXの加速化を目指し、スタートアップ企業である米国MODE社に出資しました。当社が目指す「次世代型エンジニアリング商社」の実現に向けた投資は、今後も積極的に進めていきます。
定量目標
定量目標については、2年目の計画値をすべて上回っただけでなく、3年目の計画も前倒しで達成することができました。特に営業利益が飛躍的に増加したことは、大きな成果でした。
当社は事業軸制に移行して以来、売上高2,000億円の達成を目標の1つとしてきましたが、その目標の達成に大きく近づいた1年となりました。
通期業績予想
2025年3月期の通期業績予想は、スライドのとおりです。売上高は2,000億円、営業利益は100億円、経常利益は103億円と、当社の史上最高値を目指していきます。なお、受注高は2,100億円を予想しています。親会社株主に帰属する当期純利益はほぼ横ばいの予想ですが、ROEについては10パーセント以上を目指します。
なお、当社は年次での業績管理としているため、通期のみの開示としています。
株主還元
株主還元についてご説明します。当社は、株主に対する利益還元を経営の重要施策の1つと位置づけています。
昨年10月1日付で普通株式1株を3株の割合で株式分割しており、株式分割前の中間配当は、創立75周年記念配当15円を含め78円でした。
スライドのグラフは株式分割後の配当額で表示しており、2024年3月期の1株あたりの配当額は、78円の3分の1である26円となります。株式分割後の期末配当は、34円の予想に対し11円増配の45円を予定しています。
2025年3月期の配当については、中間配当、期末配当ともに36円で年間72円を予想しています。
セグメント別 通期業績予想
今期のセグメントごとの見通しについてご説明します。スライドは、セグメントごとの計画値と業績予想の一覧です。
プラント・エネルギー事業
プラント・エネルギー事業は、石油・化学プラントの案件を中心に売上計上予定です。下期には大型案件の売上を予定しています。また、海外でプラント用設備の売上計上を見込んでいるため、営業利益の大幅な増加を予想しています。
当事業は取引先各社の事業再編計画や、構造改革に沿った合理化提案などを進め、中国、タイ、インドなどの非日系企業への案件の開拓を推進し、業績の拡大を目指していきます。
エナジーソリューションズ事業
エナジーソリューションズ事業です。今期は、海外において複数の大型案件の売上計上を予定しており、これらを確実に実現するため、現場管理をしっかりと行っていきます。
EV市場の鈍化の兆しが見える中、今期は電動化に向けた長期の投資計画が続く日系企業に特化した活動を進め、受注拡大に注力します。
当事業は引き続き、エンジニアリングの強化に加え、材料販売やセパレーター、全固体電池や新工法など、新事業への取り組みを本格化させていきます。
産業機械事業
産業機械事業です。今期は食品や住宅関連向けの成形機を中心に売上を予定しています。
製造業における労働者不足解消のため、省人化・自動化のテーマが急増しています。当事業ではそれに対応した自動化設備を幅広い分野のお客さまに提案し、受注獲得に向けた活動を積極的に行っていきます。
昨年から注力している医療機器分野では、北米の大手企業による中南米への事業展開に追随していきます。
また、最先端の育苗技術によるクリーンなイチゴ苗を生産するアグリビジネスや、3Dプリンターを中心としたアディティブマニュファクチャリングなど、開発事業の黒字化も目指していきます。
エレクトロニクス事業
エレクトロニクス事業です。上期は半導体関連の売上を予定しています。デバイス関連の投資回復が見込まれる下期は、それらの需要の取り込みに注力し、計画の達成を目指していきます。
当事業は、市場調査を進めてきた北アフリカ進出に向けて、本格的に活動を開始します。また、物流自動化ソリューション「LOGITO(ロジト)」については、ターゲット業界への拡販を強化していきます。
3月に出資した、IoTプラットフォームを提供しているスタートアップ企業のMODE社との連携強化により、「LOGITO」の拡販や、工場DXのコト売りビジネスを加速させていきます。
自動車事業
自動車事業です。今期は海外向けの塗装設備や、成形機を中心に売上計上を予定しています。
EVシフトへの一部見直しの流れが出てきていますが、ハイブリッドの需要増の動向も捉えているため、電動化製品への取り組みを継続しつつ、内燃機関への投資にもアプローチし、受注の獲得に努めていきます。
ヘルスケア事業
ヘルスケア事業です。高度管理医療機器向け製造装置や、包装機の売上計上を予定しています。
エンジニアリングを伴う大型案件の受注が好調ですが、今後は製品生産のコンセプト段階から、建屋の建設、工場最適化、生産性や品質向上の提案を含めた、プラントエンジニアリング案件の受注獲得を目指していきます。
航空・インフラ事業
航空・インフラ事業です。今期はカーゴハイローダーや、パッセンジャーステップなど、航空機地上支援機材や各種関連設備の売上計上を予定しています。
コロナ禍の影響により、省人・省力・自動化、IoT・ICTやDXの活用に関するニーズが一層高まっており、この需要を捉えた商材を提案していきます。インフラ分野においては、他業界へのアイテム展開を図り、ビジネスを拡大していきます。
最後に、昨年12月に開示した資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について、府川よりご説明します。
現状分析と今後の取り組み
府川:現在までの社内での検討状況をお話しします。スライド左側のグラフは、過去5年間のROE・PER・PBRの推移を表したものです。
ROEについては、中期経営計画「MT2024」の2年間は、目標である10パーセント以上を達成しています。これは当社の考える株主資本コスト7パーセントから9パーセントを上回っていますが、エクイティスプレッドをより意識して事業を推進していきたいと考えています。
なお、当社の株主資本コストは、主要なフレームワークであるCAPMを用いて算出しています。
PBRについては1倍に近づいてきていますが、1倍以上を常に維持・達成していくためには、収益の拡大とともに、市場からの期待値向上をもたらす施策が必要であると認識しています。
以上を踏まえ、企業価値向上のための施策を検討の結果、「ROE向上」と「株主資本コスト低減」という2つのアプローチで、スライド右側に記載した①から④の4つのテーマに取り組んでいくこととしました。
また、株主資本コストについては、IR活動の強化などを通じて市場との対話を推進し、低減に努めていきます。
ROEの現状分析と今後の取り組み
2024年3月期のROEは10.9パーセントです。スライド下段に記載している3つの構成要素から、優先的に取り組むべき課題は、一過性の収益に依存している売上高当期純利益率の改善にあると考えています。
本業での安定的な収益率向上を図るため、事業ポートフォリオを可視化し、重点領域を定めて最適な経営資源の配分を行っていきます。
事業ポートフォリオ分析
スライド左側の図は、当社の7つのセグメントについて、独自の指標を用いてバブルチャートで可視化したものです。縦軸が売上高成長率、横軸が収益性・安定性・成長性を鑑みた当社独自の指標となります。
この結果、自動車事業、ヘルスケア事業、エナジーソリューションズ事業を重点領域とし、プラント・エネルギー事業、産業機械事業、エレクトロニクス事業を基盤領域と定めました。航空・インフラ事業は、成長を期待する事業という位置づけにしています。
スライド右側のグラフは、2030年に向けた売上高とその構成比を表したものです。売上高の比率は、重点領域と基盤領域にて変わるものの、2030年に向かって全セグメントが成長していくことを目指しています。
企業経営を取り巻く環境は、時代や事業分野により変化していきますが、当社は7つのセグメントが相互補完関係にあると考えており、これが強みとなっています。このポートフォリオが、リーマンショックやコロナ禍といった外部環境が著しく悪化した時にも、比較的安定した業績を残すことに寄与したものと考えています。
当社の事業ポートフォリオは、今後もこの7セグメントを維持・発展させることを前提として、経営資源の最適配分に関する議論を深めていきたいと考えています。
宇野氏からのご挨拶
宇野:ご清聴ありがとうございました。中期経営計画の最終年度となる今期も、全社グループ一丸となって、ここに掲げた目標の達成を目指していきます。
引き続きご支援賜りますよう、何卒よろしくお願いします。
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