1. 中期経営計画
高島<8007>は2020年12月、2023年3月期を最終年度とする中期経営計画「サステナX(クロス)」を発表した。前中期経営計画「サステナ2020」の基本戦略である「ダントツ戦略」「生産性の向上」「コーポレート・ガバナンスの強化」は踏襲しつつ、「ダントツ戦略のさらなる進化」「生産性向上による強靭なコスト競争力獲得」「コーポレート・ガバナンスの強化」によって、バリューチェーンにおける設計から施工・サポートに至るまで各機能の形成・拡充を一層強く推進してきた。また、同時に長期的な成長基盤の確立に向けて、事業構造・ポートフォリオの転換にも注力してきた。
具体的には、「ダントツ戦略のさらなる進化」として、省エネ化ソリューション・軽量化ソリューション・省力化ソリューションの提供を通じて、持続可能な社会の発展に貢献してきた。「生産性の向上による強靭なコスト競争力獲得」として、内部統制・コンプライアンス体制を堅持しつつ、業務全体の見直しやシステム化などによって生産性の向上とコスト削減を図ってきた。「コーポレート・ガバナンスの強化」としては、コーポレートガバナンス・コードの諸原則も踏まえ、より充実した「攻めのガバナンス」体制構築に向けて継続的に取り組んでいる。2023年3月期第2四半期に実行したシステム投資や、2022年12月に子会社化した新エネルギー流通システムと信防エディックスの2件のM&Aは、これらの方針に基づいている。
中期経営計画「サステナX(クロス)」が2023年3月期に終了したことを受け、同社は2023年3月に新中期経営計画として「サステナV(バリュー)」(2024年3月期~2026年3月期)を策定した。超長期的な目標として2050年に「カーボンニュートラル社会の実現」を掲げ、市場の成長機会を捉えた価値創造により、サステナ社会への適応と持続的成長を同時に実現することを目指している。
「カーボンニュートラル社会の実現」に事業活動を通じて貢献しながら、中期的目標として2026年3月期に連結売上高1,100億円(建材セグメント700億円、産業資材セグメント200億円、電子・デバイスセグメント200億円)、営業利益26億円、親会社株主に帰属する当期純利益19億円、ROE8%以上、ROIC6%以上、総還元性向50%を掲げている。各事業のキャッシュと外部資金を有効に活用することで、親会社株主に帰属する当期純利益及びROEを高める方針だ。中期業績目標は2023年12月に上方修正されており、中期経営計画発表時と比較して売上高が100億円、営業利益が3億円、親会社株主に帰属する当期純利益が2億円、それぞれ上方修正されている。2023年6月に実施した岩水開発のM&Aや足元で好調な建設資材分野、再生可能エネルギー資材分野の業績などを受け、建材セグメントの目標数値を100億円上方修正した格好だ。
このほか、成長投資枠として150億円を設けている。売上高成長率(ポテンシャル)と収益性(営業利益)の2軸で各事業を分類し、戦略投資を実行する領域を決定した。具体的には、自社の強みと成長投資により積極的に拡大を狙う「基盤拡大注力事業」領域と、中長期の市場機会があり、将来の基盤事業に育成すべく成長投資を行っていく「将来投資事業」領域に重点的に投資を行う。事業ポートフォリオ強化や多角化を目的としたM&Aのほか、工場・設備、人財、ITなどを投資対象としている。なお、成長投資枠に関しても同社は拡大修正を行っている。中計策定当初は、成長投資枠として100億円超を設定していたものの、2024年3月期第2四半期終了時点で89.5億円の実績と順調な進捗を見せていたことから、成長投資の目標金額をさらに引き上げた格好だ。今後も同社が定めた投資領域において、資本コストを意識しながら積極投資を継続していく。
また、2023年12月に公表した最新の中期経営計画「サステナV(バリュー)」では、資本コストや株価を意識した経営を強力に推進していくことを改めて強調している。これまでも適合計画書において、資本効率性目標の設定や資本配分方針に基づく資本効率と成長性を重視した投資の実行、株主還元の充実を基本方針として掲げるなど、資本コストや株価を強く意識した経営に取り組んできた。今後はさらに「PBR1倍超」を新たな指針として設定し、持続的なROEの向上に加えて、PER(株価収益率)も向上させていく方針だ。具体的には、同社の将来的な利益成長に対する株式市場の期待をより強固なものにするために、M&A企業に対するPMIの推進と収益力の強化、戦略領域への新規投資の継続(M&A、工場など)、産業資材セグメントの再編と競争力の強化、成長と株主還元の両立、株主への情報発信のさらなる強化(外国人投資家、個人投資家)、政策保有株式の縮減による資本効率性の向上、などの取り組みを実行していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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