(2) アドバンストテクノロジー事業
アドバンストテクノロジー事業は、デコレーション&ディスプレー分野(金属調加飾フィルム、高透明二層シート)、コンバーティング分野、その他に分けられる。
デコレーション&ディスプレー分野の売上の大半を占める金属調加飾フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに特殊金属を蒸着させ、耐候性を保つために表面側にPMMA(アクリル樹脂)シート、下面側にABSフィルムを重ね、ドライラミネート工法※により貼り合わせた6層構造となっている。同フィルムは平面的な形状だけでなく、異型押出成形やフィルムインサート成形、真空成形など様々な加工技術を用いることで立体的な形状にすることも可能となっている。メッキ加工品との比較で見た長所は、錆びが発生せず車体の軽量化に寄与すること、製造時に廃液が発生しないなど環境負荷が小さいことに加えて、電波並びに光の透過性が高く、成型性、意匠性にも優れるといった点が挙げられる。こうした長所が評価され、自動車や自動二輪車の内外装品向けに採用が拡がっている。
※基材となるフィルムに接着剤を塗布し、乾燥炉で乾燥させた後、別のフィルムと圧着して貼り合せる加工方法。
自動車向けでは、国内だけでなく中国や欧米、韓国、南米等で販売実績があるが、2022年に入ってからは米国の電気自動車の外装部品向けに相次いで採用されるなど、米国向けの販売が急増している。自動二輪車向けでは、エンブレム用としてインドや東南アジアで採用されている。製造拠点は古河工場と名古屋工場の2拠点体制で、フィルムを製造する前工程を古河工場で、シート成型加工を行う後工程を名古屋工場で担当している。
金属調加飾フィルムのうち、自動車外装用の競合としてはオランダの大手化学メーカーであるAkzo Nobel N.V.(アクゾノーベル)が挙げられるが、参入企業はまだ少ないようだ。また、金属調加飾フィルムの製法には同社やAkzo Nobelのような金属蒸着法を採用している企業と、転写法を採用している企業等がある。転写法は量産性に優れるためコストが低いものの、耐候性が弱く自動車の外装用としては別途ハードコートが必要となる場合が多い。
高透明二層シートについては、2021年3月期にスマートフォン筐体向けから撤退し、現在は光学特性の高さや歪みの少なさ、防塵特性等の強みを生かして内装ディスプレイの大型化が進む車載分野(センターインフォメーションディスプレイ(CID)やヘッドアップディスプレイ(HUD)向け等)の拡販に注力している(同分野では三菱ガス化学<4182>が最大手)。製品特性が評価され、ここ数年は欧州系の自動車メーカー向けに採用が増えている。
コンバーティング分野には、医療用湿布の不織布印刷や離型フィルムへの印刷・シリコン処理加工等が含まれ、安定収益源となっている。また、その他として液晶ディスプレー向けの拡散板や食品包材向け開封テープ等の仕入販売を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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