1. 会社概要
日本創発グループ<7814>は、クリエイティブサービス事業を軸に、顧客が創造性(クリエイティブ)を表現するために必要となる多様なソリューションを提供する「クリエイティブをサポートする企業集団」として、幅広いビジネスを積極的に展開している。事業分野別売上構成比はおおむね印刷分野が7割強、ITメディア・セールスプロモーション分野が1割強、プロダクツ分野が1割強となる。印刷分野を基盤として、M&Aも活用しながら企画提案・製造・制作から配信までをトータルでカバーできるユニークな企業体として、新たな付加価値の「創発」を目指している。
同社はM&Aを活用して業容を拡大しているが、規模の拡大をM&A戦略にはしていない。デジタル化の進展など事業環境の変化に迅速に対応し、グループシナジーによって成長分野での高付加価値サービスの提供を推進するため、持ち込まれた案件から対象企業を厳選し優良な技術・顧客・コンテンツ資産を積み上げている。この結果、伝統的な印刷製造技術のみならず、高い専門技術も有している。これらの技術を生かして、クリエイティブサービスをトータルでカバーできる「創るチカラ」が集まったプロフェッショナル・グループという、ユニークな企業体を構築している。なお、同社企業グループは、純粋持株会社である同社と子会社及び関連会社計61社(2022年12月期末時点)で構成されている。また、同社はM&Aを活用しているため、経営指標としてEBITDA(経常利益+減価償却費+のれんの償却額+金融費用)を重視している。2020年12月期は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けたものの、この要因を除けばEBITDAは拡大基調、EBITDAマージンは上昇基調となっており、評価に値する。
2. 2022年12月期の業績概要
2022年12月期の連結業績※は、売上高が前期比17.9%増の64,416百万円、営業利益が同86.2%増の3,248百万円、経常利益が同50.6%増の3,644百万円、EBITDAが同26.2%増の5,740百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同110.5%増の2,003百万円となった。経済状況が不安定ななかでも、各分野での積極的な営業展開や新規連結(5社)効果などが寄与し増収増益となり、2022年11月に上方修正した各数値を上回って着地した。売上高9,795百万円増加の内訳は、新規連結子会社化5社で約57億円増加、既存事業会社で約40億円強の増加としている。コスト面では、原材料価格の高騰や事業運営コスト上昇の影響を受けたが、原価上昇以上の付加価値による売上増加や事業運営コスト効率化により、各利益は2ケタ増益となり利益率も上昇した。
※2022年12月期より「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、2022年12月期の各数値は当該会計基準等を適用後の数値となる。また、増減は適用前の前期実績との比較となる。
3. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績については、売上高が前期比8.7%増の70,000百万円、営業利益が同1.6%増の3,300百万円、経常利益が同1.5%増の3,700百万円、EBITDAが同1.0%増の5,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.8%増の2,200百万円を見込んでいる。需要の回復によって既存事業会社の業績が安定化することに加え、前期に連結子会社とした7社が通期で業績寄与することなどから増収増益予想としている。具体的な施策としては、積極的な営業展開によって各事業会社の売上拡大を図るとともに、付加価値をあげ売上単価を向上させる。なお、期初時点では新たなM&Aを織り込んでいない。
4. 成長戦略
印刷関連市場はデジタルシフトによって厳しい事業環境であるものの、広告業界の市場はSNS・動画配信などの大幅増加に伴い拡大している。同社は中期経営計画を公表していないが、成長に向けた基本戦略として、高付加価値製品・サービスの拡大によって印刷分野の売上・利益構成比を維持しながら、ITメディア・セールスプロモーション分野及びプロダクツ分野の製品・サービスを拡大し、グループシナジーとワンストップサービスによって一段の収益力向上を目指す方針だ。多様なソリューションを提供する「クリエイティブをサポートする企業集団」としての競合優位性も考慮すれば、さらなる積極的な事業展開によって中長期的に成長するポテンシャルは大きいと弊社では期待している。
■Key Points
・企画提案・製造・制作から配信までをトータルでカバーできるユニークな企業体として、クリエイティブサービス事業の領域拡大に取り組む
・2022年12月期は上方修正後の計画を上回る増収増益で着地
・2023年12月期は増収増益予想、環境変化に応じて事業資産の配分を変更させることで企業間競争での優位性を維持
・グループシナジーとワンストップサービスで収益力向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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