1. 印刷システム機材事業と改元
ムサシ<7521>の2018年3月期第2四半期は印刷機器・材料を扱う印刷システム機材事業の不振が顕著だった。これ対して同社は5つの対策で売上高の回復と収益力の改善を目指す方針だ。
5つの対策のうち、市場シェア拡大の取り組みと印刷後加工分野の商機拡大はこれまでも取り組んできている。シェア拡大については長年の取引関係や競合メーカー側の低価格攻勢が、印刷後加工分野に関しては顧客の印刷会社の設備投資余力低下が、それぞれ課題となっているとみられる。
業務効率化ソフトの販売は、顧客側もメリットを実感しやすいため、販売が伸びると期待される。また新分野の開拓は、首尾よく成功すれば収益改善効果は大きいと考えられる。エム・ビー・エスとの協業によるビジネスフォーム印刷会社への販売強化は、子会社化した狙いそのものであり、最も実現性が高く、効果も大きい施策といえる。
印刷業界、ひいては同社の印刷システム機材事業に対しては改元による特需も期待できると弊社では考えている。改元を巡ってはカレンダー業界が影響を受ける典型例として取り上げられることが多いが、官公庁や企業で使用されているビジネスフォーム(各種用紙や伝票、領収書などが典型)もまた、改元によって影響を受ける物が多い。カレンダー同様、これらの印刷物も2018年央と言われる新元号の発表を機に、刷り直しの特需として出てくる可能性が高い。同社が2017年9月に子会社化したエム・ビー・エスはまさにビジネスフォーム印刷の分野に強みを持っており、改元の特需は印刷システム機材事業の収益改善に取り組む同社にとって大きな追い風になると期待される。
改元特需は同社の他部門にも及ぶ可能性がある点も注意が必要だ。例えば同社は選挙システム機材事業において選挙に関連するソフトウェアを自治体に多数納入している。こうしたソフトウェアの中では元号が使用されているため、ソフトウェアのアップデート(改修、買い替えも含む)が必要になり、それが同社にとってビジネスチャンスになると期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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