1. 企業理念の実践
マーケットが拡大するなかで、クラウドPBXのパイオニアであるプロディライト<5580>はリカーリング収益を中心に成長を続けてきた。足元では「INNOVERA」のアップデートや「パートナープログラム」の導入などにより、対象ターゲットも広がってきた。これを機に、同社は国内で数少ないクラウドPBXの「メーカー」として、企業理念の「日々挑戦」やミッションの「これからもつながるを、もっと。」を実践するため、これまでの良き電話文化を継承しながら「電話のDX」を推進して業界をリードしていくという考えを打ち出した。固定電話とモバイル間の垣根を越え、ユーザーの利便性向上を図り、次世代電話システムのリーディング・カンパニーを目指す方針である。
2026年8月期に営業利益340百万円を達成する計画
2. 中期経営計画
次世代電話システムのリーディング・カンパニーを目指すため、同社は中期経営計画と事業戦略を策定した。中期経営計画では、2026年8月期に売上高2,751百万円(3年平均成長率11.1%)、営業利益340百万円(同38.0%)を達成する高い成長を狙っている。高成長を狙う背景には、システムサービスと回線サービスの好調を続けるという前提の下、「INNOVERA」など高採算サービスの売上高構成比が上昇するとともにリカーリング率が着実に伸びる一方で、端末のアプリ化が進んでいくという想定がある。この結果、営業利益率が継続的に向上する予想となっている。競争激化や技術革新など一般的に想定されるリスクはあるが、現状の市場環境や足元の同社業績を勘案すると、中期経営計画の目標値は十分射程圏内にあると言うことができる。
事業戦略を推進し、重要指標を引き上げる
3. 事業戦略
中期経営計画を達成するため、(1) 主力サービス「INNOVERA」の進化、(2) AI技術の応用、(3) パートナーシップの強化、(4) ブランド力の強化――という、従来からも取り組んでいる4つの事業戦略を強化することによって、「INNOVERA」のアカウント数などの重要指標を向上させていく方針である。
(1) 主力サービス「INNOVERA」の進化
機能追加やSFAとの連携などによって、常に「INNOVERA」の進化を図っていく計画である。2023年8月期までの成果として、Webマーケティング&セールステックのジオコード<7357>の業務管理/MA向けクラウド営業支援ツール「ネクストSFA」との連携や、管理画面やスマートフォンから在席や離席など待機中の従業員の状況を確認できるプレゼンス機能の追加などによって「INNOVERA」を進化させた。2024年8月期以降は、幅広いSFAユーザーにソリューションを提供するため、営業支援プラットフォームで国内有数のkintone(サイボウズ<4776>)やグローバル企業のSalesforceとの連携を推進するほか、業務用音響機器のTOA<6809>のIPオーディオシステムとの連携、状況や条件に応じて着信するユーザーをあらかじめ指定できる機能の付加なども進めていく。
(2) AI技術の応用
外部AIベンダーの技術を活用し、今後見込まれるニーズを見据えたオプションサービスを開発する方針である。2023年8月期には、音声から感情を解析することで、電話業務で通話しているユーザーの状態を5段階で表示する「INNOVERA Emotion」の提供を開始した(特許出願中)。2024年8月期以降は、テキストで音声を読み上げる音声合成技術(2024年8月期リリース予定)、通話録音や留守電の内容を翻訳する音声翻訳技術(2025年8月期リリース予定)、様々な言語に対応した多言語通訳(2025年8月期リリース予定)などの提供を計画している。そのため、完成度の高いエンジンを有する様々なAIベンダーとの協業を進めているところである。このようにAIなどの新技術を積極的に活用することで、将来的に言語やハンディキャップを超えて心を通わすことのできる「バリアフリー・コミュニケーション」プラットフォームを構築する意向である。
(3) パートナーシップの強化
2023年8月期に、これまでの代理店制度を強化した「パートナープログラム」を開始するとともに、営業が個別に対応していた情報を提供する専用ポータルサイトの開設や、販売促進のためのパートナー向けの勉強会の開催を実行した。2024年8月期以降は、ランキングの細分化やゴールドパートナーの設置などパートナーランキング制度の充実、日本各地域を担当するパートナーの戦略的開拓、ポータルサイトで自動的に見積もりができる機能の搭載などにより積極的にパートナーシップを強化、小規模向けプランの開発や「INNOVERA PBX 2.0」へのアップデートにより、小規模~大規模企業、日本全国に広がったターゲットを積極的に取り込んでいく方針である。
(4) ブランド力の強化
Webサイトを中心とした広告活動に加え、情報発信やスポンサーイベントへも積極的に参加する計画である。2023年8月期までの成果として、リスティングの本格活用やランディングページ(サービス紹介ページ)の改善など、リスティング広告やインプレッション広告などWebを中心にサービスを訴求する一方、YouTube広告への配信も開始した。2024年8月期以降は、継続的な展示会への出展やプレスリリースなどを活用した情報発信、スポーツチームのスポンサーや地方自治体のイベント協賛などに比重を置き、従来にも増してブランド力の強化を積極的に図っていく考えである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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