同社の競合他社には、特装車分野においては極東開発工業<7226>、パーキング設備ではIHI運搬機械、産機領域では日立産機システムなどが挙げられる。ただ、同社は、戦前から続く飛行艇の製造を担う国内唯一の企業であり、防衛関連需要を取り込める希少性や、民需でもボーイングやボンバルディアなど世界の航空機メーカー向けに部品供給するなど、航空機部門において独自性を有する。また、真空装置の分野では韓国真空(KOREA VACUUM LIMITED)のM&Aにより、EV用バッテリー製造装置の製品ラインを強化し、グローバル市場への対応力を高めている点も他社と差別化されるポイントである。
2025年3月期の売上高は266,441百万円(前期比3.6%増)、営業利益は13,970百万円(同18.7%増)となり、売上高は2年連続、受注高は4年連続で過去最高を更新した。原材料費や減価償却費の増加などコスト面の逆風があったものの、特装車や流体、航空機など複数セグメントでの収益改善が全体をけん引した。特に特装車では、物流・環境関連車両の販売が堅調に推移し、主要部品の供給遅延が緩和されたことや売価改定の効果も重なり、大幅な増収増益を実現。また、パーキングシステムでは機械式駐車設備や航空旅客搭乗橋の販売が増加し、収益を下支えした。流体では国内システム製品の需要が増加し、堅調に推移した。航空機では、防衛省向けの修理需要が伸長し、民需では一部機種の増産が進む一方で、「777/777X」など一部機種の減産も影響し、セグメント全体としては増収も利益は横ばいであった。一方、産機・環境システムでは真空製品の減少により減収減益となったものの、グループ全体としてはバランスの取れた事業構成により収益力を強化した。
2026年3月期の通期見通しとしては、売上高は290,000百万円(前期比8.8%増)、営業利益は15,000百万円(同7.4%増)を見込んでいる。「特装車」「流体」を除く全てのセグメントが増加し、受注高は初めて3,000億を上回る見通し。売上高は「流体」「その他」を除く全てのセグメントが増収となり、3年連続で過去最高となる見通し。
同社を取り巻く市場環境は、特装車事業では主要部品の供給遅延等に伴って停滞していた生産活動が徐々に正常化に向かっている。パーキングシステムでも、機械式駐車設備は製品の新設、サービス事業ともに引き続き堅調に推移する見通しで、航空旅客搭乗橋はコロナ禍で落ち込んでいた市場は回復傾向にある。流体も国内官需関連は雨水災害対策関連の市場が拡大傾向にあり、国内民需関連は脱炭素・省エネニーズを背景としたターボブロワの需要増が見込まれる。さらに、航空機も防衛省向けで受注は増加する中で防衛費増額も追い風となろう。産機・環境システムでは、世界的なEV市場の減速により真空乾燥装置の成長速度が鈍化しているが、そのほかのセグメントの追い風が全社的な業績拡大につながろう。
同社は、2030年を見据えた長期ビジョン「SG-Vision 2030」の実現に向け、中期経営計画「SG-2026」の下で既存事業の収益性向上と新規分野の育成に取り組んでいる。特に、水処理、エネルギー、防衛・航空関連の領域で複数のプロジェクトが進行しており、社会課題の解決と企業成長の両立を図る戦略が着実に進んでいる。事業ポートフォリオ戦略としては、特装車事業、航空機事業を「収益力強化事業」、流体事業、パーキングシステム事業、産機・環境システム事業を「成長力強化事業」と位置づけ、加えてROIC 経営の浸透による生産性および資本効率の大幅な改善の推進を通じて各計画値の達成を目指す。また、持続的な成長に向けて海外展開加速(東南アジア・オセアニア・北米への展開強化)、海外拡大や新事業創出へ戦略的にM&Aも推進していく。定量的な目標では、2031年3月期に売上高4000億円以上(うち海外売上1000億円以上)、ROE12%以上を掲げている。
株主還元については、2025年3月期の年間配当は1株当たり52円(前期比5円増)に増配された。2026年3月期はさらに2円増配し、54円とする計画。安定的な配当の実施に向け、今般からDOE(株主資本配当率)を採用し、中計期間中は目標水準を3%程度に設定している。業績堅調な中、複数セグメント全てで順調に成長が期待できる同社の今後の動向に注目しておきたい。
<HM>
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