―改正案は公訴時効が1年から3年に延長、対策強化によって存在感を高める銘柄とは―
全体相場は戻り足に転じているが、それに伴いテーマ物色の流れも徐々に復活する兆しにある。そのなか、ネット監視関連株に新たな視点で投資妙味が膨らんでいる。
政府は今月8日、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷抑止を目的として、「侮辱罪」の厳罰化に加え、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」の創設を盛り込んだ刑法など関連法の改正案を閣議決定した。今国会中の成立を目指す。
現行では、具体的事例を示して人の社会的評価をおとしめる名誉毀損罪として「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」との刑罰がある。これに対して、インターネット上などでの事例を示さない悪口は侮辱罪にとどまり、現行の法定刑では「拘留(30日未満)もしくは科料(1万円未満)」と罰則が軽い。インターネットの普及やSNSの一般化による誹謗中傷の深刻化を想定していなかったためとされ、これを時代に合ったものに改正する。
●SNS上での誹謗中傷問題が契機に
きっかけの一つは2020年5月に、インターネット上で誹謗中傷を受けたプロレスラーの木村花さんが自ら命を絶った問題で、これを契機に厳罰化を求める動きが進んだ。木村さんがテレビのバラエティー番組に出演し、番組内での言動などをめぐってSNS 上で誹謗中傷を受けていたとされる。繰り返し行われた誹謗中傷に関しては社会問題となり、海外メディアでも報じられた。
複数の報道によると、今回閣議決定された改正案では、拘留は1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑で、科料は1000円以上1万円未満を強制徴収する。「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」としている名誉毀損罪に準じた扱いとする。公訴時効は1年から3年に延長となる。
施行は公布から20日後を予定していると伝えられている。施行後は各メディアで取り上げられることが想定され、マーケットの投資テーマとして浮上し、関連株に物色の矛先が向かう可能性は十分にある。
●エルテスは「Webリスクモニタリング」に注目
関連銘柄として、まずはエルテス <3967> [東証M]が有力視される。同社は24時間365日、人工知能(AI)と人の目でWeb上の投稿を監視することで、炎上リスクのある投稿を早期に検知することができる「Webリスクモニタリング」を手がけている。人の目でチェックを行うことで精度の高いリスク検知を行うことが強みであり、炎上リスクが顕在化した際には論調把握を行い、適切な初期対応も支援するという。また、薬機法モニタリングや回収対象商品のCtoC市場モニタリングなど、企業の課題に合わせたサービスの提供が可能としている。11年のサービス開始以降、累計1000社以上の企業が利用している。
また、SNS投稿を監視し、投稿内容のリスクをAIが判定する「モニタリアン」も要注目となる。キーワードを設定するだけでAIが24時間365日、SNS上の投稿をモニタリングし、結果をWebポータル上で報告する。リスクを検知した際は数分以内にアラートメールで知らせるサービスだ。
●イーガーディは「ネットパトロール」で活躍
インターネットのセキュリティーサービスを総合的に手がけるイー・ガーディアン <6050> も有望株としてマークしたい。「ネットパトロール」という監視サービスが注目され、月間1000万件の投稿監視実績を有する「有人監視サービス(投稿監視)」や、24時間365日体制で大量の動画投稿をチェックする「動画監視サービス」などを行っている。
新サービスも相次いで開始しており、3月に入ってからは、高度化・頻発化するサイバー攻撃に対応する「SOCサービス」の提供開始を発表。1月には複合的なネットサポート需要拡大に伴い「東京センター」を拡張移転したほか、ECプラットフォームの運営サポート需要増加に対応して「大阪センター」を2月に増床しており、今後の業績への貢献が見込まれる。
●ポールHDは4期連続増配見通しを評価
インターネット上の不正アクセスなどを監視するサービスを展開するポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス <3657> は、好業績が期待可能な銘柄として注目したい。同社では23年1月期連結業績として21%営業増益を見込むほか、4期連続の増配を計画している。前期はECサイトやQRコード決済関連モニタリング、不正対策、カスタマーサポートの増加によって、ネットサポート事業が業績を牽引した。今期はデバッグ・検証、ネットサポート以外にもサービス領域を拡大し、業績拡大を目指すとしている。
このほか、投稿監視やソーシャルメディアでのサポート業務などを行うアディッシュ <7093> [東証M]はトップラインの伸びが高水準となっているほか、口コミ関連事業やインターネット広告代理店事業を展開するサイバー・バズ <7069> [東証M]もコンプライアンスに重点を置いたインフルエンサーマーケティングで利益成長路線に復帰している。インターネット上で法律相談ができるサービスを行う弁護士ドットコム <6027> [東証M]や、同様に法律相談も可能なサイトを運営するココナラ <4176> [東証M]などにも目を向けておきたい。
株探ニュース
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