前週末13日の米国株式相場は反発。ダウ平均は399.64ドル高の29479.81ドル、ナスダックは119.70ポイント高の11829.29ポイントで取引を終了した。ワクチンの実用化が鍵となり、来年の回復への期待が強まり寄り付きから上昇。FRBが当面、大規模緩和を継続するとの見方も買い材料となった。米国株高を受けた今日の東京株式市場は買いが先行した。新型コロナ感染拡大への懸念が高まっているほか、外為市場で1ドル=104円60銭台と先週末15時頃に比べ20銭ほど円高・ドル安に振れていることなどが上値抑制要因となったが、寄り付き段階では買いが優勢となった。取引開始前に発表された7-9月期の国内総生産(GDP)速報値が予想を上回ったことも買い安心感となった。
個別では、東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>などの半導体関連株の一角が高く、米長期金利が底堅いことを受けた三菱UFJ<8306>などのメガバンクや第一生命HD<8750>などの保険株が上げ、持株会社制への移行と社長交代を発表したパナソニック<6752>が堅調だった。また、決算発表に関連し、中間期の連結営業利益が前年同期比52.1%増と第1四半期段階の3.2%減から増益に転じたしたキャリアインデ<6538>、20年12月期利益予想を上方修正したサイバーリンクス<3683>が一時ストップ高となり、20年12月期(9カ月決算)業績予想を上方修正したノーリツ鋼機
<7744>、21年3月期業績予想を上方修正したCKD<6407>が10%を超す大幅高となったほか、21年3月期業績予想を上方修正した日本郵政<6178>、マツモトキヨシ<3088>が上げた。
一方、第1四半期連結営業損益が1.95億円の赤字となったスマートバリュー<9417>、20年12月期連結営業損益を下方修正したダントーHD<5337>が10%を超す大幅安となり、4-9月期連結営業利益が大幅増益となったが材料出尽くし感が先行したライドオンE<6082>、エムアップ<3661>が下げた。
セクターでは、海運業、空運業、不動産業、保険業、銀行業などが値上がり率上位。一方、その他製品が値下がりした。東証1部の値上がり銘柄は全体の74%、対して値下がり銘柄は22%となっている。
日中韓など15カ国が東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名し、国際貿易で今後、中国の存在感が高まると見られている。一方、11日の当欄で、世界の株価が上昇する中で中国の株式市場に活気が感じられないと書いた。米国でバイデン次期政権の誕生が濃厚となっているが、そのことと何か関係があるのか。市場では、トランプ大統領は中国に対して強硬な姿勢で臨んだというのが一般的な評価だろう。
対して、バイデン政権となれば米中対立が緩和するとの見方もあるようだ。ただ、バイデン政権では中国との対立がこれまで以上に深刻になる分野もありそうだ。少し考えてみる。
バイデン氏はトランプ大統領が執着した報復関税に対しては概ね否定的な一方、トランプ大統領が深入りを避けたとされる人権問題を重視するとの見方が多いようだ。
また、トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」を掲げ国際協調に消極的だったのに対し、バイデン氏は同盟国や友好国と連携して中国と向き合う姿勢だとされる。トランプ大統領が対中政策で注力した貿易などの分野は米中2国間の問題にとどまった一方、人権問題に関しては欧州はじめ自由主義陣営の関心が高く、米国が人権問題に強硬な姿勢をとれば、同盟国や友好国はこれに容易に同調する可能性もあるだろう。
関税や貿易の問題は「落としどころ」を探りやすいが、人権問題はイデオロギーや中国が主張する核心的利益が絡む問題でもあり妥協点が見出しにくい。トランプ大統領の時代には米中対立は飽くまで米国と中国の2国間の駆け引きだったが、バイデン政権となれば、対立の構図は2国間から互いの同盟国や友好国を巻き込んだ抜き差しならない問題に発展しかねない。このように考えると、今後、中国にとって国際社会との向き合い方は、トランプ大統領時代よりはるかに困難になる可能性がある。このことは頭の片隅に置いておきたい。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。引き続きワクチン開発の進展への期待感が株価支援要因となっていることに加え、午前の時間帯にダウ平均先物が堅調に推移したことなども安心感となっている。一方、足元の新型コロナ感染拡大への警戒感は強く、また、目先高値警戒感が意識され、上値追いには慎重となりそうだ。
(小山 眞一)
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