―幅広い施設で導入加速、活躍領域広げサービスロボ分野の主役に躍り出る―
人手不足を反映し、さまざまなサービスロボットに活躍期待が高まっているが、こうしたなか「業務用清掃ロボ」関連株に注目してみたい。最近では、AI(人工知能)を搭載したスマート清掃ロボも登場するなど、清掃業界に大きな潮流の変化をもたらしている。その陰では、熾烈な開発競争が繰り広げられており、それがまた更なる清掃ロボの進化につながっている。市場規模の大幅拡大も予想されることで、関連企業に対する投資家の視線は、今後熱を帯びることになりそうだ。進化する「業務用清掃ロボ」関連株を追った。
●24時間365日フル稼働可能
深刻な人手不足が、日本経済に暗雲をもたらしている。ここにきて、人手不足倒産が相次ぎ発生するなど、看過できない状況だ。人材が確保できないことで、業績が堅調な企業でさえも倒産するケースが出ている。こうしたなか、関心が高まっているのが、人と協働するサービスロボだ。現在、ファミレスをはじめとする外食産業では、料理の配膳・下げ膳用途のロボが店内で活躍する場面が頻繁に見られるようになった。
サービスロボの活躍領域は、コロナ禍を経て急速に広がった。慢性的な人手不足に加え、非接触というニーズも捉えた格好だ。配膳ロボに加え、警備、受付(案内)、医療をはじめとして、物流業界では配送ロボなど、身近な分野での活用が加速しており、清掃分野でもその存在感を高めている。
清掃ロボの利点は、人手不足に対応し24時間365日フル稼働することが可能なことや、業務の効率化などが挙げられる。部外者の立ち入りが禁止されている場所においても清掃が可能だ。また、人による作業では、清掃員によって仕上がりに差が出ることがあるが、これも清掃ロボに任せれば一定の品質が維持できる。また、エレベーターとの連携により、清掃ロボが自律的にフロアを移動するものまで登場し、AIを搭載したことで利便性が格段に向上している。
かつて、清掃ロボといえば家庭用の“お掃除ロボ”が主流だったが、いまや清掃範囲が極めて広い工場や大型店舗・施設まで、業務用として幅広く使用されており、年々市場規模を拡大させている。業務用清掃ロボメーカーに話を聞くと、競合の増加には若干警戒しつつも「予想以上に引き合いが多い」としており、更なる注力姿勢をとる構えだ。
市場調査の富士経済による「業務用清掃ロボット、警備ロボットなど有力施設・店舗における自律走行ロボットの国内市場(稼働台数)を調査」でも、稼働台数の拡大を予想している。同社では、業務用清掃ロボについて「清掃員やスタッフの人手不足を背景に小売、宿泊施設、オフィス、病院など幅広い施設で導入増加が予想される。また、小規模飲食店などでは、家庭向け製品と同等の小型ロボットの需要が増える」と分析。大型・中型スーパーや150坪以上のドラッグストア、ショッピングセンターなどは、業務用清掃ロボ導入の有望施設としており、2030年には23年比で5.3倍の2万5000台が稼働するとみている。
●アルファクスはJR西グループに採用
家電大手ではパナソニック ホールディングス <6752> [東証P]が業務用の清掃ロボを手掛けており、共用部やホールなど広い空間から狭小部まで、用途に合わせた製品で攻勢を掛ける。今月9日からは、業務用小型ロボ掃除機「RULO (ルーロ)Biz」のソフトウェアアップデートを提供。RULO Bizは、オフィスビルの専有部や店舗など、大型ロボ掃除機の導入が難しい場所を清掃できる業界最小クラスのクラウド型業務用ロボ掃除機。アップデートにより、オフィス環境での走行性能が向上し、清掃可能な範囲が一段と広がったことで、より効率性が増した。RULO Bizを月額定額制で提供する清掃プラットフォームサービスも好評だ。
株式市場でも、清掃ロボ関連株に向ける視線は熱い。注文システムや配膳ロボでニーズを捉えるアルファクス・フード・システム <3814> [東証G]は、7月10日の取引時間中に同社のAIロボ「サービスショット」シリーズのお掃除ロボ「α9号(通称アルファナイン)Sveabot S100」が、JR西日本 <9021> [東証P]グループで車両や駅の清掃、商業施設・オフィスビルのメンテナンスなどを行うJR西日本メンテックに採用されたと発表。これを受けて、同日株価は急伸しており、投資家の清掃ロボに対する関心の高さをうかがわせるものとなった。
●注目度アップのアマノ
ここにきて、業務用清掃ロボ分野で注目度が増しているのが、勤怠管理システム大手のアマノ <6436> [東証P]だ。同社は、AIによる高度な自律走行を実現した小型床洗浄ロボ「HAPiiBOT(ハピボット)」などを展開している。同製品は、専用クラウドサービスでロボの稼働状況の確認や清掃ルートの変更がパソコンやスマートフォンで可能だ。アマノは、14年に国内では初めて本格的に業務用ロボ清掃機の事業展開を開始。18年には大型施設向け自律走行式ロボ床面洗浄機「EGrobo(イージーロボ)」を発売し、清掃作業員の人手不足対策や作業効率化によるコスト削減を支援してきた。6月には、セコム <9735> [東証P]のセキュリティーシステムと清掃ロボを連携させ、店舗やオフィスなどの警戒状態を解かずに、清掃ロボを稼働させるための相互連携規格を確立し運用を開始するなど、新技術の取り込みにも積極的だ。同社の25年3月期は、連結営業利益で前期比7.3%増の210億円を計画し最高益を更新する見込み。株価は最高値圏でもみ合っており、ここからの動向に投資家の熱い視線が注がれている。
●信号は「クリナボ」で出発進行
日本信号 <6741> [東証P]は鉄道・交通などの信号大手だが、業務用清掃ロボにも注力している。同社のセンサー技術を最大限に生かし、安全なうえ誰でも簡単に使用でき、タイルやワックスを塗る床材に最適な自動床清掃ロボ「CLINABO(クリナボ)」を展開。JR東日本 <9020> [東証P]の高輪ゲートウェイ駅などでも採用されており、駅構内での清掃に従事している。また、カーペットやフローリングなどに最適な、次世代自動床吸じんロボ「CLINABO CL02」も手掛ける。8月に発表した25年3月期第1四半期(4~6月)決算は、連結営業損益が2億200万円の赤字になったものの、経常損益段階では6億1800万円の黒字(前年同期は9億9700万円の赤字)に浮上。通期では営業利益で前期比17.2%増の80億円を計画している。同社の業績は、下期偏重の傾向が強いだけに注視が必要だ。
●「一望打塵」で攻勢掛ける東京機
新聞輪転機大手の東京機械製作所 <6335> [東証S]だが、最近では自律走行清掃ロボの開発完了が話題を呼んだ。同社は8月、ニシオホールディングス <9699> [東証P]傘下の西尾レントオールと提携し、共同開発を進めてきた建築現場などでの活用を目的とする自律走行清掃ロボ「一望打塵(いちもうだじん)」が完成したと発表。主に建築現場などの粉じん・砂利・コンクリート片・木片・ネジ・釘・ペットボトル大までの多様なゴミの集じんに対応可能だ。厳しい事業環境に置かれる新聞向け輪転機を製造しているだけに、業績面では逆風環境にあるが、25年3月期第1四半期(4~6月)は連結営業損益が黒字転換するなど利益採算は改善傾向にある。株価は下値模索の展開が続くが、清掃ロボに加え新規事業へも注力しており、FA(ファクトリーオートメーション)市場への展開を本格化させているだけに今後の動向から目が離せない。
●マキタ、Kudanにも活躍期待
電動工具最大手でグローバルに展開するマキタ <6586> [東証P]だが、さまざまなクリーナーや集じん機のほかに、ロボクリーナーも手掛ける。マッピング機能で清掃カバー率が約95%、スマホアプリに対応しオフィス、店舗、倉庫などの掃除で活躍している。同社にとってロボ掃除機分野の製品は、業績面では大きな存在とはいえない。ただ、社会的ニーズを受けて需要が拡大するなか、今後の展開には目を配っておきたい。25年3月期の連結営業利益は、前期比13.3%増の750億円を予想している。株価は、今月11日に5137円まで買われ年初来高値を更新。その後は上昇一服も4800円近辺では、頑強な展開を見せており注目は怠れない。
AI関連の一角として注目度が高いKudan <4425> [東証G]にも目を向けたい。同社は7月、産業用清掃ロボソリューションを展開するラトビアのスクワッド・ロボティクス社が、Kudanの3D Lidar SLAMアルゴリズム「KdLidar」を中核エンジンとして搭載した自律型床清掃ロボを発売することになったと発表。「KdLidar」を搭載することで、清掃ロボは状況認識を強化し、複雑な空間で高精度かつ安定したナビゲーションを実現するという。業績は厳しい局面が続き株価も下値模索の展開が続くが、AIに絡み切り口が多彩な同社なだけに、そろり再評価機運の高まりに期待も。
そのほかでは、装着型のロボットスーツ「HAL」を展開するCYBERDYNE <7779> [東証G]が、世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型除菌・清掃ロボ「CL02」を擁する。エレベーター自動昇降やクラウド連携などによるビルのスマート化と管理コスト削減を実現するため、ゼネコンなどと協力しオフィスビルを中心に導入を進めている。また、業務用清掃・洗浄機器輸入販売商社の蔵王産業 <9986> [東証S]は、多くの自動床洗浄機のラインアップを揃えるが、誰でも簡単にプロのクリーニングが可能なロボクリーナーも手掛けている。
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