―サイバー空間の安全保障こそ喫緊の課題、動き出す岸田政権に共鳴する関連有望株は―
リモートワークの定着や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)シフトと並行してクラウドセキュリティーの重要性が高まっており、株式市場でもその役割を担う銘柄への注目度が上昇している。IoT時代が発展を遂げる過程でセキュリティーの充実は必須条件であることにほかならず、サイバー攻撃は実社会のリスクとして国家レベルで対応を考えなければならない喫緊の課題だ。岸田政権でもサイバーセキュリティーは国家安全保障の重要項目として力を入れていく姿勢を明示しており、ここから先、中長期的なトレンドとしてサイバー防衛 関連株に投資マネーが集結する可能性が高くなってきた。
●加速するサイバー攻撃リスク
法人・個人を問わずサイバー攻撃リスクが高まっている。コンピューターウイルスや不正アクセスの件数は近年急増しており、情報処理推進機構(IPA)のデータによると2021年は前年比でほぼ倍増している。不正アクセスのなかで、特に増加傾向が際立つのはファイルやデータの奪取や改ざんで21年は特にそれが顕著であった。
また、15年から20年までの5年間でみるとサイバー攻撃の件数は8.5倍に増加したことが情報通信研究機構(NICT)の調査で分かっている。大手企業であっても、取引関係にあるシステムが脆弱な中小企業などを対象にサイバー攻撃が行われ、通信回線や端末などからの情報漏洩や、生産機能停止などを引き起こすいわゆるサプライチェーン問題が近年は頻発化している。今年の春先にはトヨタ自動車 <7203> [東証P]が、部品を製造するサプライヤーがサイバー攻撃を受けてトヨタの管理システムにも影響が及んだことにより、国内全工場の稼働停止に至ったことは記憶に新しい。
●セキュリティー対策に税制優遇
そうしたなか、政府が情報システムにサイバーセキュリティー対策をした防衛関連企業への税制優遇を検討することが8月中旬に伝わった。また、防衛技術の海外流出を防ぐ目的で国内企業への事業承継を促す基金の設立も報じられている。既に岸田首相は5月の日米首脳会談後に防衛費予算の大幅増額について半ば公約的に言及しているが、サイバー防衛も安全保障のうえで多大なウエートを占めることはいうまでもない。
中国やロシアからのサイバー攻撃の増加を念頭に置き、防衛産業の機密漏洩対策は待ったなしで対応する方向にある。税制優遇は防衛省から装備品を受注する企業が対象だが、下請け企業を含めれば数千社にのぼるとされるだけに、同法案の経済的波及効果は大きい。これについては23年度予算の概算要求や与党税制改正大綱に反映し、23年通常国会へ関連法案の提出を目指すとされている。
●官民連携で迎え撃つ時代に
日本ではサイバー犯罪に対する対策強化を目的とした改正警察法が4月1日に施行となり、警察庁に捜査の陣頭指揮などを行う「サイバー警察局」及び「サイバー特別捜査隊」が発足している。身代金要求型のランサムウエアによる被害が急増しているが、外国の政府がそのバックに存在するようなケースも少なくない。現実空間以上にサイバー空間における国家安全保障は重要で、決して蔑(ないがし)ろにはできない。サイバー警察局の発足はサイバー関連部門の一元化によって、迅速な判断や行動で安全を確保することが骨子だ。
官民連携によるサイバー攻撃対応も今後スピードアップしていくことが予想される。民間のサイバー防衛関連企業については、端末用セキュリティーソフトの提供はもちろん、セキュリティー人材の派遣、偽装メールなどを使った標的型攻撃に対応したWeb監視やネットワーク遮断、更には感染や攻撃を受けた際の初動対応及び復旧工程などを担う企業群が挙げられ、株式市場でも一段と熱い視線が注がれていくことは必至だ。
今回のトップ特集では、サイバー防衛という国家安全保障の根幹にかかわる重要分野において、今後活躍が見込まれる有望株を6銘柄厳選した。
●日本の将来を守るサイバー防衛関連6銘柄
◎サイバーセキュリティクラウド <4493> [東証G]
世界屈指のサイバー脅威インテリジェンスとAI技術を駆使したサイバーセキュリティーの開発・提供を行い、100%自社で開発したWebセキュリティーサービスを展開している。Webサーバーに対する攻撃を検知・遮断・可視化するクラウド型サービス「攻撃遮断くん」を主力に業績は飛躍的な伸びを示している。直近では日本の防衛産業をサイバー攻撃から守るという命題のもと「防衛関連事業者向けサプライチェーン防衛パッケージ」を開発、国家安全保障を担う企業の一角としてマーケットでも認知された。22年12月期は単独でトップラインが前期比4割の伸び、営業利益も5割増と急成長を見込んでいるが、一段の上振れも視野。早晩切り返し、8月19日の2204円の戻り高値奪回から一段高へ。
◎フォーカスシステムズ <4662> [東証P]
独立系のシステムインテグレーターで、次世代クラウドシステム構築の急先鋒。サイバーセキュリティー分野のソリューションでも高実績を誇る。セキュリティー関連では情報資産のデジタル化が進むなか独自ノウハウによる暗号技術に定評があるほか、デジタルコンテンツ保護を目的とした電子透かしをはじめとする高度なソリューションで需要を捉えている。足もとの業績は絶好調で、22年4-6月期営業利益は前年同期比62%増の4億8900万円と高水準の伸びを達成。23年3月期通期では前期比10%増の18億円と5期連続で過去最高利益を更新する見通しにある。株価は1000円大台近辺で高値圏もみ合いの動きにあるが、ここは大勢上昇トレンド途上の踊り場で仕込みチャンスといえる。
◎セキュアヴェイル <3042> [東証G]
ITセキュリティーに特化し、情報セキュリティーの構築・運用、セキュリティー人材派遣、ログ解析サービスなどを柱としている。セキュリティー運用サービスでは24時間365日体制でネットワークインフラを監視しサイバー攻撃に備える同社ならではの対応力で優位性が高い。また、同社のビジネスモデルは顧客企業にハードを一括納入して完結するのではなく、システムセキュリティーに主眼を置いたマネジメントで継続的な収益貢献が見込める点を特長としている。筆頭株主はNRIセキュアテクノロジーズでNRIグループとの連携による展開力も強みといえる。株価は低位で値ごろ感があり、8月19日に325円の高値をつけた後は調整が続いているが、マド埋め完了から再浮上の機をうかがう。
◎FFRIセキュリティ <3692> [東証G]
サイバーセキュリティー専業で専門性の高い人材を擁し、世界トップレベルのセキュリティーエンジニアも複数在籍。輸入製品ではなく、自社で開発する純国産の標的型攻撃に特化したソフトを開発し、政府機関や大手企業との協業で実力をいかんなく発揮している。時価総額100億円未満の小型株だが、日本発の技術を駆使して、サイバー領域における国家安全保障の担い手として抜群の存在感を示している。25年3月期に売上高24億9200万円(23年3月期19億2000万円予想)、営業利益3億3600万円(同4600万円予想)を目標とする中期経営計画を策定している。株価の天井の高さも魅力であり、今から7年前の15年7月に1万8500円の上場来高値に買われた実績がある。
◎イー・ガーディアン <6050> [東証P]
総合ネットセキュリティー企業としてネット上の多岐にわたるセキュリティー事業にワンストップで対応できる強みを持っている。動画投稿監視で高いシェアを誇り、収益への貢献度も高い。メタバース やNFT関連分野への布石も抜かりない。メタバース関連のスタートアップと連携し同分野を深耕。業績は直近まで10年にわたって利益高成長路線をまい進中、22年9月期営業利益は21億7000万円と2ケタ成長予想ながら、なお保守的で上振れる可能性が高い。更に23年9月期も増益トレンドが続く公算大。株価は昨年11月に4125円の高値形成後に調整入りも、3月下旬以降は2800~3200円のゾーンを往来し売り物がこなれた状態。上昇波に転じれば4000円近辺まで売り圧力は限定的。
◎セグエグループ <3968> [東証P]
ネットワークセキュリティー製品の輸入販売や、システムの構築及び保守、システムエンジニア派遣などトータルソリューションを提供する。年々増加傾向をたどるサイバー攻撃に対応し、AIなどの新技術を駆使して顧客企業のセキュリティー対策を支援する。足もとの業績は好調で、22年12月期の最終利益は為替差益及び有価証券売却に伴う特別利益の計上で従来見通しを上方修正、前期比45%増の6億5600万円と大幅な伸びを見込んでいる。海外進出にも積極的で、直近ではタイでセキュリティー製品の販売・保守を手掛ける企業を買収しアジア地域での事業展開に本腰を入れる構え。株価は8月10日にマドを開けて急動意、その後は大勢三段上げの様相で700円割れの押し目は狙いどころに。
株探ニュース
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