近年、多くの個人情報漏洩や仮想通貨の流出、キャッシュレス決済の不正利用などのセキュリティ問題が発生し、サイバー攻撃への対応が企業活動における大きなリスクとして注目されている。2020年には、コロナ禍による混乱に乗じたサイバー攻撃も多発し、セキュリティが強固なイメージがある金融機関でもインシデントが発生した。イー・ガーディアン<6050>としてはサイバーセキュリティ領域を次代を担う成長分野と捉えており、脆弱性診断などネットセキュリティ(人的サービス)とクラウド型セキュリティ(自動・機械的サービス)の両輪で市場を開拓している。
同社は2020年10月、サイバーセキュリティ分野でのトータルソリューション提供と、同分野での事業成長を加速させることを目的に、ジェイピー・セキュアを完全子会社化した。ジェイピー・セキュアは、クラウドセキュリティ市場のなかでもソフトウェア型のWAFを提供しており、100万サイト以上の導入実績を持つ業界の草分け的存在である。主力の「SiteGuard(サイトガード)シリーズ」は、ウェブサイトの脆弱性を悪用した攻撃を防御するソリューションとして、官公庁や金融機関をはじめとした大企業から個人向けレンタルサーバまでに導入実績を持つ国内トップシェアクラスの純国産ソフトウェア型WAF製品である。ソフトウェア製品の特性を生かし、多様なシステム環境で利用でき、誤検知が少なく、高い防御性能とユーザビリティの両立を実現している。また、今回のジェイピー・セキュア完全子会社化においては販売代理店チャネルも引き継いだため、今後の事業としての継続や発展にも期待が持てる。直近の業績は、売上高301百万円(2020年5月期)、営業利益82百万円(同)と順調。取得株式は1,100株(議決権所有割合100.0%)、取得価額は946百万円(アドバイザリー費用含む)である。
ジェイピー・セキュアの完全子会社化により、同社が提供するWAFは3つの製品ラインを提案できるようになり、顧客の様々なサイトの環境に適合できるソリューション提供が可能になった。1つ目は、2019年8月に連結子会社化したグレスアベイルが強みとしている従来型クラウド製品であり、自社Webサイトや自社ECサイトなど小規模な事業者が対象である。2つ目は、同社グループ内の協業の成果として開発された次世代クラウド型WAFサービス「GUARDIAX」コンテナ版であり、動画・ECネットワークや金融機関など大規模なネットワークが対象である。そして3つ目として、ジェイピー・セキュアのソフトウェア型が加わり、レンタルサーバ事業者や公共機関、製造業、流通業といった中堅から小規模事業者までが対象となる。現時点で、WAF分野でフルラインナップを提供できる競合他社は国内におらず、総合力において同社が先行した存在となった。今後は、セキュリティ事業を担うEGセキュアソリューションズやグレスアベイル、ジェイピー・セキュアが相互に連携しグループシナジーを生み出していく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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