アトラグループ<6029>は、鍼灸接骨院「ほねつぎ」を全国に165院(2023年12月時点)チェーン展開している。柔道整復師、はり師・きゅう師をターゲットに、鍼灸接骨院の経営を総合的に支援する事業を展開している企業である。具体的には鍼灸接骨院のほねつぎチェーン事業に加えて、主に自費施術で必要となる機材を販売する「機材、消耗品販売」、医療費の請求を代行する「アトラ請求サービス」、鍼灸接骨院の予約システムと物販サービスを提供する「HONEY-STYLE」、セミナーの開催や情報発信を行う「アトラアカデミー」などの事業を手掛ける。また、鍼灸接骨院と親和性の高い介護支援やフィットネス関連の事業も行う。さらに2021年12月には、おもちゃ、雑貨、文具販売の(株)ペリカン(2022年4月1日に(株)ビーユーから社名変更)を買収し、玩具販売事業に進出した。戦略としては、少子高齢化のなかで国民医療費抑制の傾向が高まっていることを受けて、医療費に過度に依存しないよう、自費施術の拡大を推進している。これにより、顧客である鍼灸接骨院業界全体の市場規模拡大と同社業績の成長を狙う構えである。
1. 2023年12月期の業績概要
同社は、2024年2月14日に2023年12月期の業績を発表し、通期業績としては売上高が前期比3.7%減の4,497百万円、営業利益が51百万円(前年同期は2百万円の黒字)、経常利益が同308.5%増の62百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が53百万円(前年同期は2百万円の黒字)となり、期初に発表した業績予想である売上高5,155百万円、営業利益130百万円、経常利益125百万円、親会社株主に帰属する当期純利益84百万円に対しては、残念ながらすべてにおいて下振れての着地となった。主力の鍼灸接骨院支援事業においては、ほねつぎチェーンの売上高は前期比2.0%増と増収となったものの、計画に対して新規加盟開発件数が遅れたことで予算比未達、また、当事業における最大の売上構成となっている機材、消耗品販売の売上高は同1.7%増とこちらも増収とはなったが、主要部品の調達遅れにより2023年6月まで機材販売が滞った影響が残り予算比未達であった。玩具販売事業の売上高は前期比8.3%減の1,754百万円となり売上高が大幅に落ち込んだが、同社では2023年1月~2月にかけて不採算店舗8店の閉鎖を実施、さらには2023年3月、4月、7月と新規出店を行ったものの、その立ち上げ遅れが発生、また、主要な取り扱い製品であるトレーディングカードやゲーム機においてメーカー発売時期が遅れたことも影響した。玩具販売事業は2023年12月期において33百万円の営業損失(前年同期は79百万円の営業利益)となっており、2024年12月期の早期黒字化に期待したい。
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の連結業績は、売上高で前期比6.3%増の4,783百万円、営業利益で同134.2%増の120百万円、経常利益で同77.4%増の110百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同48.2%増の80百万円を見込む。売上高は、2023年12月期の4,497百万円に対して約3億円増加、営業利益は51百万円から約70百万円増加する計画となっているが、詳細な事業及び製品別の内訳は非開示である。ただし、同社では2023年12月期に営業損失を計上した玩具販売事業における早期黒字化を目標としており、2023年12月期と比較して増益となる多くの部分は玩具販売事業における収支改善によるものと見られる。同社は、過去において期初に開示した業績予想に対して下方修正及び未達となることが多かったことを踏まえ、今期は期初計画において主力の鍼灸接骨院支援事業における大きな業績拡大を見込んでおらず、例年と比べると保守的な期初計画としているもようである。鍼灸接骨院支援事業における潜在的な業績上振れポテンシャルとしては、(1)機材販売セグメントにおいて2023年11月より販売開始した「アトラゲージ(施術前後で背骨、筋力、神経がどのように変化したが可視化できる新機材)」が想定以上に寄与すること、(2)アトラ請求サービスセグメントにおいて同社が実施していた大型のシステム改修が2023年夏前に終了しており、旧システムから新システムへの切り替えにより想定以上に売上成長の再加速が進むこと、などが挙げられよう。
3. 成長戦略アップデート
接骨院の数は増加傾向にあるが、医療費は減少傾向にあるため、同社では医療費に依存し過ぎることなく、自費施術や物販の拡大、周辺事業への進出などを通じて収益基盤の多角化を進める方針を打ち出している。そのため、鍼灸接骨院の新規開設をやみくもに進めて店舗数の拡大を狙うのではなく、鍼灸接骨院との親和性の高い「ほねつぎデイサービス事業」や「アトラアカデミー」を通じた施術者向けの有料の技術セミナーを通じた収益機会の獲得、さらには自費診療を促進し、競争の激化する接骨院の差別化を図ることができる機材販売(単なるメーカーからの機材仕入れだけでなく、同社自身がメーカー機能を有し、企画から製造・販売まで担う、より独自色の強い機材の提供が今後は徐々に増加すると見られる)などに注力している。同社の強みは、長年にわたり積み上げてきた鍼灸接骨院で培った店舗運営ノウハウであり、店舗におけるオペレーションや経営指導、コンサルティングなどを総合的に展開し、鍼灸接骨院におけるすべての課題に対応することが可能であることだ。2023年8月にはブレインテック関連事業を推進しているメディアシーク<4824>と基本合意書を締結し、接骨院向けに脳波を活用したブレインテックトレーニングサービスの提供も開始するなど、他社との積極的な協業を通じて新たな事業領域への進出も続けている。
■Key Points
・2023年12月期は期初計画に対して売上高・営業利益ともに下振れて着地。鍼灸接骨院支援事業の新規加盟院開発遅れや部材調達難の影響に加え、玩具販売事業におけるトレーディングカードやゲーム機など主要商材の販売遅れの影響も発生
・2024年12月期は玩具販売事業の黒字化達成に加え、鍼灸接骨院支援事業においても既存の接骨院に対するコンサル強化、新たに取り扱いを開始した自社開発機材の販売促進などを通じて期初計画を上回る業績達成を目指す
・医療費の抑制傾向が続くなかで接骨院数は国内で増加傾向が続いており、競争環境は厳しさを増している。今後はやみくもに店舗数の拡大を追い求めるのではなく、各店舗が収益を確保できるような店舗運営ノウハウの提供、他の接骨院との差別化につながるような機材・メニュー提供ができることが重要
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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