(2) インテグレーションソリューション「FASTIO」
IoTインテグレーションソリューションでは、ニーズの高いデータコレクトプラットフォーム「FASTIO」を開発し、外部顧客へ提供している。これはクラウド提供であることから、通信インフラやクライアントソフトのインストールが不要であり、短期間で安価にIoTサービスを利用することができるという点が特徴である。
KDDIとの協業としては、「KDDI顧客向けのカスタマイズ」「IoTパッケージ製品の共同開発」「大規模IoTインテグレーション事業の共同受注」の、大きく3つの活動に分かれる。また、5Gなどの新技術に対する情報連携や実証実験などを行い、今後市場投入するサービスも構築する。
a) KDDI顧客向けのカスタマイズ
顧客の要望に応じて、同社は「KDDI IoT クラウド Standard」の画面、サマリービューや地図表示、演算機能、画面取り込み、値をプロットする機能などをカスタマイズする。
b) 「KDDI IoTクラウド Standard」のパッケージ製品の共同開発
KDDIは、「KDDI IoTクラウド Standard」を中心としたパッケージをラインナップしている。このうち両社は、「サーマルカメラパッケージ」「換気促進パッケージ」「監視カメラパッケージ」「温湿度パッケージ」「位置情報パッケージ」を共同開発しているが、それらの中には「3密」対策用のものも含まれる。
なお、同社自身も同様なパッケージ製品「AITELL」を販売している。これは、「密集場所」対策として店舗や施設の混雑状況をLINEで確認できる混雑状況確認サービスで、このサービスによって、混雑を回避したい来店者が安心して来店できるようになる。また、「密閉空間」として、空間のCO2濃度上昇を検知・アラート通知することで換気を促すパッケージ「アイテル FRESH AIR」を販売している。
c) 大規模IoTインテグレーション事業の共同受注
大規模IoTインテグレーション事業では、同社の「つなぐ力」とKDDIの持つ通信、プラットフォーム、アプリケーションの強みを生かし、共同受注に取り組んでいる。
これまでの共同受注の実績としては、産業用ボイラで業界トップメーカーの三浦工業<6005>向け案件がある。三浦工業は他社に先駆けてオンラインメンテナンスを導入しており、顧客のボイラを通信回線で監視し、データに基づく保守管理を行ってきた。客先は、工場にボイラを含むユーリティティ設備を管理する専任スタッフを常駐させているが、人手不足に悩まされている。三浦工業は、オンプレミス型の集中管理システムを提供しているものの、金額面のハードルが高い。そこで、近年は開発コストを大幅に下げ、中小企業でも利用可能なクラウド型エネルギー管理システムの開発に取り組み、2020年7月より「MEIS.CLOUD+」として提供を開始した。KDDIと同社が加わった同プロジェクトで、同社は開発パートナーとしてカスタマイズを行った。同集中管理システムは、三浦工業の製品を対象としたものだが、他社設備のセンサーから送られてくる信号を受け取るために必要なゲートウェイデバイスの開発も、同社が手がけた。なお、その他にも、航空向けの遠隔作業支援システムや鉄道会社向けの点検機材置忘れ検知システムも共同開発している。
KDDIとの案件は、規模が大きく、当初の開発には困難がともなうが、経験・知見を積むことで、将来は横展開による生産性向上が期待される。現中期経営計画でも、全体を上回る伸び率を目指している。
(3) モニタリングソリューション「ゆりもっと」
創業事業である融雪システム遠隔制御代行サービス「ゆりもっと」は、北海道・北東北を中心に展開している。同社は他社に先駆けて市場に参入したうえ、数々の賞を受賞しており、市場をほぼ独占している。一方で、同ソリューションの普及率は高く、市場が成熟化していることに加え、稼働期間も12月から3月の冬季に限定される。このため今後は、コスト削減の一環としてAIによる融雪ボイラの運転判断情報を提供し、監視業務の効率化を図る方針である。
(4) モビリティサービス「Pdrive」
交通事故のない社会を目指す同事業は、2021年8月期より名称を「GPSソリューション」から「モビリティサービス」へ変更した。通信型ドライブレコーダーを核とし、培ったテレマティクス技術で、様々な業態とのアライアンスを強化し、販売機会を増やしていく。営業・開発の責任者を東京に置き、首都圏での営業活動を強化している。また、垂直統合的な同社の技術領域による柔軟な対応によって、様々な業態とのアライアンスを強化していく。
「Pdrive」は、モバイル通信機能を搭載した高性能ドライブレコーダーを核とするソリューションである。ドライブレコーダー内蔵カメラが撮影した危険運転の動画がプッシュ送信され、管理者はスマートフォンやパソコンでいつでもどこでも危険運転をチェックできる。危険運転の「見える化」により、ドライバーに安全運転意識の向上を促し、事故を未然に防ぐ効果がある。IoTシステムである「Pdrive」は、設置が簡単で、データ管理に手間がかからず、確認もWebブラウザがあればいつでもどこでもできる。一方、既存のドライブレコーダーは自動車の計器からデータを取得するタイプが多く、設置が大変なうえ、データが各車両のドライブレコーダーのSDカードに保存されるので、専用ソフトをインストールしたパソコンでなければ確認できず、リアルタイム性がない。なお、導入後の効果として一例を挙げると、「Pdrive」を採用した車両46台を保有する卸売会社の場合、年間事故件数が導入前の7件から1件に減少し、その結果、保険料事故対応諸経費は171万円の削減効果が得られた。
2017年3月期及び2018年3月期に大口注文があり、フローの売上高が急拡大したが、その後は縮小している。ただし、ストック売上は着実に積み上がっている。なお、2020年3月現在の累計設置台数は31,194台となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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