「仕上げ局面の米国株、上値追い期待の日本株の行方は?」
◆風雨が強まる高所
さて、2020年相場が始まる。チャート面から相場を予想すると、新年は高値を更新するものの、「乱高下」の展開を覚悟することになりそうだ。
新年も過剰流動性の地合いが続くだろうが、米国株は過去最高値を大きく更新しており、「山高ければ谷深し」の如く、調整に転じるとヒヤリとした局面になることも想定される。マーケットで関心を集める「米中通商交渉」は第1段階で合意に達したものの、第2段階、第3段階に向けて米中両国の駆け引きは続こう。そして、トランプ米大統領の強権ツイートも続く。日経平均株価はアベノミクス相場の最高値2万4448円(18年10月)を突破するとみているが、日本株は「米国次第」でもあり、やはり高所では風雨が強まることを覚悟しておきたい。
◆NYダウ仕上げ局面、3万2000ドルも
まず米国株だが、 NYダウが最高値を更新する強さの背景には、行き場を失った世界の投資マネーの流入がある。過剰流動性に伴う需給相場だが、これは09年3月のリーマンショックから始まり、新年3月でまる11年になる。表現を変えれば「マネーゲーム相場」が11年も続いているということだ。
NYダウ(19年12月24日終値は2万8515ドル)を月足でみると11年間上昇トレンドを描いているが、トランプ大統領が当選した16年11月から18年1月まで上昇角度が急になり、18年12月のクリスマス安値からの上昇はその角度をさらに強めている。つまり、ホップ、ステップ、ジャンプと「三段上げ」の長期波動がみてとれる。
二段目の上げ幅が約1万1100ドルで、それを三段目に当てはめると「3万2000ドル前後」となる。時価から3500ドル(△12%)ほどであり、新年にそれを目指すのは十分可能だ。
ただし、上昇チャートで三段目というのは「仕上げ局面=天井局面」でもある。3万2000ドルの到達如何に関わらず、NYダウはそういう高値局面にあって「風雨が強まる」ことを承知しておくべきだろう。
◆日経平均は2万8000円指向の公算も
日経平均(12月26日終値2万3924円)は18年10月の高値2万4448円を目前に足踏みが続くが、12月中旬に材料出尽くし感から高値を打ち、そして年末にかけて調整という流れはセオリー通りでほどよいスピード調整でもある。米国株が最高値を更新しており、新春に2万4448円を突破する可能性は十分にある。
日経平均を月足チャートでみると、アベノミクス相場が始まった12年12月(9500円処)から18年1月の2万4129円まで大きく三段上げを描いている。余韻で同年10月に2万4448円まで高値を伸ばすが、三段上げ達成の後でもあり18~19年は概ね2万円~2万4000円の往来となっている。2万4448円の高値を抜けずにいるので「ダブルトップ」「三尊天井」という高値形成の懸念も出てはいる。
ただ、月足のトレンドは60ヵ月移動平均線(2万128円)を下値に上昇基調を続ける。高値2万4448円を突破するなら2年間の往来突破であり、上昇4波として2万7000~2万9000円に向けて走り出すことが想定される。長期の上値傾向線(15年高値―18年高値を結んだ延長線)が2万7000円方向で、18年10月高値(2万4448円)→同12月安値(1万8948円)の下げの倍返しが2万9000円台。17年や19年の上昇率(約20%)を当てはめると2万8700円近辺となる。
◆乱高下、年間N字波動を想定
これらの状況を踏まえて「2020新年相場」を予想すると、日経平均は4月頃まで「2万3000~2万6000円」で乱高下しながら上値追いとなろう。だが、5月からは「下値2万2000~2万1000円」を覚悟するような調整となり、米大統領選を終えた11月から年末にかけて切り返すイメージを描いている。年間を通すと「N字」波動でイッテコイ、もしくはマイナスになることも想定する。
繰り返しになるが、世界の屋台骨である米国株がマネーバブルで高所にきている。「山高ければ谷深し」の如く、何かをキッカケに調整となれば大きな調整になる可能性があることを頭に入れておきたい。
トランプ大統領になってから株式市場は堅調だが、そこには「売りを誘わせて、買い戻しを誘わせる」というトランプ流の相場操縦がある。言うまでもなくツイッターを用いて警戒感や安心感を誘うコメントを頻繁に発信し、その都度マーケットや投資家を振らしてきた。そして、株価が高値圏にくると強権ツイートで「懸念」を募らせることは多くの投資家が承知している。
NYダウ、日経平均とも上値追いが期待できるものの、日足や週足に下値抵抗線を引き、トレンド転換に注意しながら個別株に対応していきたい。
◆注目株、主力組は3パターンから絞り込み
新年もカネ余りを背景に需給相場が続き、インデックス型の投信やETFなどへの資金流入が続こう。ただし、相場全体が高値圏にあり乱高下することも想定されるので、個別株は「押し目買い、吹き値売り」の対応が求められよう。注目株としては主力組のほか、チャート妙味の小型株を取り上げておく。
まず、主力株に簡単に触れておくと、安値圏にある三菱電機 <6503> 、パナソニック <6752> 、SUMCO <3436> 、味の素 <2802> 、宇部興産 <4208> 、住友金属鉱山 <5713> などが待ち伏せ妙味あり。
中段踊り場にあるものではNEC <6701> 、アンリツ <6754> の切り返しに注目する。
また、上昇基調にあるソニー <6758> 、村田製作所 <6981> 、エムスリー <2413> 、伊藤忠テクノソリューションズ <4739> はチャートの陰転に注意しながら、順張りで上値追いの展開に期待が持てよう。
◆注目株、チャート妙味の小型株
○EV/PHV用充電スタンドを手掛けるモリテック スチール <5986> の株価が調整十分。18年1月に1380円へ急騰も、19年8月に308円まで調整し、現在400円近辺。戻り余地大だけに、この安値圏を待ち伏せる。
○セキュリティ関連ではソリトンシステムズ <3040> 。新年3月、日本でいよいよ5Gの商用化が始まるが、サイバー攻撃に対する防御は不可欠であり、同社のセキュリティーシステムへの需要が高まろう。今20年12月期は増収増益が期待され、1200円台の踊り場にある株価は水準訂正に向かう可能性が高い。
○ITソリューションを提供するソルクシーズ <4284> 。金融業界や自動車メーカーなどのIT投資が活発化、19年12月期は経常利益9億円(前の期比12倍)を見込み、配当は16円に前の期比で1円増やす。株価は8月から1000円を上値にもみ合いを続けてチャートは値固め十分。上放れて18年の高値1638~1921円を目指す公算大。
○人工知覚APを手掛けるKudan <4425> [東証M]。自動運転や自律ナビなど用途拡大でライセンス収入が伸びる。18年12月に上場、19年2月につけた2万5160円高値から11月安値7430円まで急調整したが、下値固め十分で待ち伏せ妙味あり。
○好業績の人材サービス関連からキャリアリンク <6070> 。20年2月期上期(3-8月)の経常利益は前年同期比5.8倍の3億4600万円で着地。通期の経常利益予想4億1900万円に対する進捗率は82%で、さらなる上方修正が期待できる。チャートは7月に600円台に乗せた後もみ合いを続けており、二段上げを待ち伏せたい。
○最後に超低位株からブロードメディア <4347> [JQ]。株価80円前後という超低位株だが、チャートは底値固め終盤と判断され穴株として面白い。子会社再編を終えて業績は黒字、eスポーツ教室を手掛けているのも面白い。
※新年が皆様にとりまして良い年になりますようお祈り申し上げます。
(2019年12月26日 記)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
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