1. 事業内容
2019年9月期末現在、純粋持株会社であるアイナボホールディングス<7539>の下に連結子会社4社、非連結子会社2社を擁してグループを形成している。事業セグメントは、戸建住宅事業と大型物件事業に分けられており、各セグメントの売上高(2019年9月期)は、戸建住宅事業60,843百万円(売上高比率87.4%)、大型物件事業8,741百万円(同12.6%)、また営業利益は、戸建住宅事業2,913百万円、大型物件事業566百万円となっている。ただしこれらのセグメントは受注先(受注金額)の大小によって分けられているだけであって工事内容はほぼ同じである。前者は主に一般住宅用の工事であり、中小ゼネコンや一般工務店などからの受注であるのに対して、後者は主に大手ゼネコンなどからの受注となっている。
さらに戸建住宅事業は外壁工事、住設工事、建材販売、住設販売のサブセグメントに、大型物件事業はタイル販売・工事、住設販売・工事のサブセグメントに分けられている。それぞれのサブセグメントの総売上高に対する比率(2019年9月期)は、戸建住宅事業の外壁工事が20.4%、同住設工事が26.1%、同建材販売が20.9%、同住設販売が20.1%、大型物件事業のタイル販売・工事が5.8%、同住設販売・工事が6.7%となっている。
2. セグメント及びサブセグメントの概要
(1) 戸建住宅事業
主に地場の中小ゼネコンや工務店、ハウスメーカーやビルダーから受注する案件※。施主からの直接受注は少ない。
※工事に伴うタイル資材や住設機器の販売高はそれぞれの工事部門に含まれている。
a) 外壁工事
一般住宅や小型マンション、店舗等の内外壁タイル、床タイル、エクステリアなどの工事を行うもの。タイルだけでなくサイディング(外壁材)など様々な素材に対応している。
b) 住設工事
主にシステムキッチン、バス、トイレ等の水周りや各種リフォーム工事、太陽光発電システムの設置工事などを行うもの。基本的には外壁工事とは別受注だが案件によっては同時受注の場合もある。バスルームの工事件数は年間2万件近くに上り、業界では最大手クラスである。
c) 建材販売
一般住宅、店舗、中小マンション向けの各種建材の卸売。比較的タイル建材の販売が多い。主な販売先は工務店や地場のハウスビルダーなどで、二次卸業者への販売はない。
d) 住設販売
建材販売と同様に工務店や地場のハウスビルダーなどへ住設機器の販売を行うもの。
(2) 大型物件事業
工事内容は戸建住宅事業とほぼ同じであるが、受注先が大手ゼネコンからの大型物件(ビル、マンション等)をこのセグメントに入れている。大林組<1802>、(株)鴻池組、長谷工コーポレーション<1808>などからの受注が比較的多い。
a) タイル工事
内外装タイル、床タイル、石材の工事など。
b) 住設工事
システムキッチン等の住宅設備や空調設備などの工事。主にビル、マンション向け。
3. 主な仕入先と販売先
同社の得意先は大手ゼネコンを筆頭に約7,000社に上る。これらの顧客が常に稼働しているわけではなく、また1件当たりの金額も数百万円から1億円以上と様々であるため、後述するように売掛金の回収が経営上の重要な要素となる。
一方で主な仕入先は、建材や住設機器ではLIXILグループ<5938>が最も多く、そのほかにTOTO<5332>、リンナイ<5947>、クリナップ<7955>、大建工業<7905>などからの仕入れが多い。
また工事を行う下請け業者は大小合わせて2,000社近くになるが、この中の半数近くは同社専業の下請け業者である。後述する保険制度などにより同社との信頼関係は厚く、長い付き合いが続いている。
4. 競合、特色、強み
同社のような外壁工事や建材・住設機器の販売を行っている企業は数多くあり、それぞれの分野で多くの競合会社が存在する。事業全体において特にこれと言った競合会社を探すのは簡単ではないが、あえて競合会社を挙げれば、(株)小泉、渡辺パイプ(株)などである。ただし外壁工事の分野では、近年は施工会社が減る傾向にあり競合会社は少なくなっている。このような業界の中で同社は、以下のような特色を生かして同業他社との差別化を図っている。
同社の特色の1つは総合技術研修センターを有していることで、ここで多くの下請け会社に対して専門性の高い技術研修を行い施工をサポートしている。また同社が研修を行うことで様々な工種への対応が可能になっている。さらにこの技術センターで各現場の施工が予定どおりに進捗しているかを半年に1回必ずチェックしており、これによって個人差による工事仕上がりのばらつきを減らしている。
自家保険制度を設けていることも同社の特色だ。これは下請け業者から出来高の一部を徴収し、これを協力会にプールして、万が一下請け業者(作業員)が事故などで業務を行えなくなった場合には、1週間分の所得を補償するものだ。この制度によって同社と下請け業者との信頼関係が厚くなると同時に、職人の定着率が高まり、工事仕上がりの精度が高まっている。
売上管理、原価管理や工事進捗管理はどの企業でも行っていることだが、同社の場合はこれに加えて請求管理、入金管理、その結果としての未収金管理を徹底して行っている。具体的には各案件において仕入と売上を少額であっても行単位で管理し、PL上の管理だけでなくBS上の管理(チェック)も行っている。このようなBS上の管理は工事の進捗状況を見ながら見極める能力が重要であり容易なことではない。近年、建材販売を行っている同業他社が工事施工分野に進出するケースは多いが、この未収入金管理が複雑で手間が掛かる(非効率な)ため、多くの競合他社は工事事業から撤退している。ある意味でこの未収入金の管理が「見えない参入障壁」になっており、同社の特色であり強みとも言えるだろう。その結果として、同社の2019年9月期末のネットキャッシュ(現金及び預金−借入金)は10,523百万円と豊富であり、バランスシートは強固である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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