3. 手数料ポイント制度
手数料ポイント制度とは、損害保険代理店の主な収益源である損害保険会社からの手数料率が、損害保険会社が定める基準によって変動する制度のことである。同制度導入前は一定の基準を満たせば一律20%前後の手数料が相場であったが、ポイント制度の導入によって20~120のポイント格差が生じるようになった。一例を挙げると、保険料10万円の自動車保険を販売した場合、同制度導入前は20%の20,000円が代理店に手数料として支払われた。一方、同制度導入後は、ポイントが20であれば手数料は4,000円、100であれば20,000円、120であれば24,000円と大きく変動する。
手数料ポイントが収益に直結するため、いかにポイントを高めるかが重要であり、代理店の規模(年間の収入保険料)と前年対比の増収率がポイント決定の大きな要因と見られる。これに代理店のグレードに応じた認定ランクや業務品質、専属性(自社損害保険のシェア)、損害率、各損害保険会社が推進する施策の達成率等、様々な要素が上乗せされ手数料ポイントが決まる。ポイント決定の大きな要因と見られる代理店規模と増収率をそれ以外でカバーすることは難しい。このことから、損害保険会社は保険代理店に対して、手数料ポイント制度の改定を通じて代理店の事業規模拡大や統廃合の推進を求めているとも考えられる。このため、同社は手数料ポイントの獲得が難しい小規模代理店を中心に、事業承継及びM&Aを通じて事業規模の拡大を進め、高い手数料ポイントの獲得・維持を図ることで全体の収益を最大化している。
損害保険会社は効率化のために損害保険代理店数を削減する必要があることが同制度導入の背景にあると考えられる。地方に多い個人経営の代理店を合併するほか、損害保険会社が出資している保険代理店に吸収合併する等、様々な施策を講じている。これに対し同社は、同社グループの営業収益の約半分を占める東京海上日動火災保険をはじめとした各損害保険会社に対して事業承継のための営業活動を積極的に行い、事業承継を必要としている中小規模代理店の紹介を受けている。株式上場により知名度が向上し、代理店が同社に直接問い合わせるケースも増えているようだ。損害保険会社が同制度導入を通じて代理店の統廃合を進めているなかで、代理店の大規模化や効率化がどのように進むかが注目される。
いずれにしても、大規模代理店が有利となる同制度が維持される限り、中小規模代理店の統廃合は進み、代理店の大型化・効率化の流れは避けられないと言える。損害保険会社が提示する代理店手数料体系は毎年改定されるが、同社のような上位代理店は事業承継及びM&Aを通じて、相対的に収益性を維持できる環境にあると弊社では考える。なお、従来は同社が事業承継した保険代理店における1件当たりの取扱保険料は平均2,000~3,000万円だったが、最近では1億円規模の代理店からの相談も増えているようだ。同社の事業承継先はこれまで保険販売を専業とする専業代理店が大半を占めていたが、今後はより規模の大きな兼業代理店に重点を置く方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 田窪芳人)
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