で前場の取引を終えている。
22、23日の米株式市場でダウ平均は84.50ドル安、108.82ドル高ともみ合い。22日は米連銀総裁のタカ派発言や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容が重しとなった。23日は週次失業保険申請件数の減少などを受けた金利高が一時嫌気されたが、半導体エヌビディアの好決算やその後の金利低下が投資家心理を改善させた。ナスダック総合指数は+0.13%、+0.72%と続伸。祝日明けの日経平均は40.4円高からスタート。米長期金利の上昇一服やハイテク株高を支援要因に寄り付きから買い戻しが先行した。また、午前に衆議院で行われた次期日本銀行総裁候補の植田和男氏の所信聴取の内容が総じて金融緩和の修正に慎重なものになったことも安心感を誘い、一段と買い戻しが進展、午前中ごろには日経平均は27465.90円(361.58円高)まで上昇した。
個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅高を受けて東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>などが急伸。太陽誘電<6976>、イビデン<4062>、TDK<6762>、SMC<6273>、安川電機<6506>などハイテク株も全般上昇。三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>の不動産、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運、ホンダ<7267>、日産自<7201>、マツダ<7261>など輸送用機器も高い。レーティング格上げを材料にガンホー<3765>、三菱ケミG<4188>なども大幅高。
一方、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、みずほ<8411>の銀行、日本製鉄<5401>、JFE<5411>、冶金工<5480>の鉄鋼、三菱商事<8058>、住友商事<8053>の商社、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>の非鉄金属など、バリュー(割安)・高配当利回り銘柄の一角が軟調。武田薬<4502>、第一三共<4568>、中外製薬<4519>の医薬品、東洋水産<2875>、日清食HD<2897>、ヤクルト<2267>の食料品など、ディフェンシブ系の一角も冴えない。東証プライム市場の値下がり率上位にはメドピア<6095>、鎌倉新書<6184>、インフォマート<2492>、インソース<6200>など中小型グロース(成長)株が散見される。
セクターでは海運、電気機器、不動産が上昇率上位となった一方、医薬品、鉱業、鉄鋼が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の70%、対して値下がり銘柄は25%となっている。
国内が祝日で休場の間、米株式市場は踏ん張りを見せた。ナスダック総合指数は小幅ながら22、23日と連日で上昇し、200日移動平均線の上方を維持。S&P500種株価指数も75日線の上方を保った。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月31日-2月1日開催)では0.5ポイント(pt)の利上げを好ましいと判断する参加者が数名いたようだが、ほとんど全ての参加者が0.25ptへの利上げ幅縮小に賛同していたことが判明。一方、景気減速のリスクよりも、インフレの上振れリスクを懸念視する声の方が多く、インフレ率が目標の2%に向かって明確に低下するまでは景気抑制的な政策スタンスを維持することが適切との見解が総じて示されたもよう。
また、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はサービス部門でのインフレ圧力の根強さを指摘し、物価は一部で予想されたほどには急速に下がらない可能性があるとの見解を示した。米セントルイス連銀のブラード総裁も政策金利を5.375%まで引き上げるべきとのタカ派な見解を示した。
総じて米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢の鮮明化が警戒されるものの、これまでの雇用や物価関連の指標の上振れや、FRB高官の一連のタカ派発言などを踏まえれば、概ね織り込み済みの内容で、サプライズには乏しかった。このため、警戒されていた米長期金利の上昇も一服し、21日に3.95%にまで上昇していた米10年債利回りは22、23日と小幅ながら連日で低下し、3.88%まで水準を切り下げた。
米長期金利の上昇一服が安心感を誘う中、半導体大手エヌビディアが好決算を発表し、株価が急伸したことで、投資家心理はさらに改善した。指数寄与度の大きいハイテク株が強い動きを見せており、これが足元の相場の踏ん張りにつながっているようだ。
加えて国内では、注目されていた次期日本銀行総裁候補の植田和男氏への所信聴取の内容も相場のサポート要因となっている。本日午前に衆議院で行われた所信聴取において、植田氏は現在行っている金融政策は適切であり、金融緩和を継続することで企業が賃上げできる環境を整えるべきとの見解を示した。また、政府・日銀が掲げる2%の物価目標については「持続的・安定的に達成するには時間がかかる」とも述べており、総じて安心感のある内容となった。
一方、気掛かりな材料もある。米10-12月の実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率+2.7%と、速報値の+2.9%から下方修正された。特に注目なのは、米GDPの約7割を占める個人消費が+1.4%と速報値の+2.1%から大きく下方修正された点だ。
これまで、米国経済は、マクロの景況感悪化を背景に企業のセンチメントが急速に悪化し、法人向けサービスが落ち込む一方、力強い個人消費を背景に個人向けサービスは需要の堅調さを保ってきた。これが米経済のソフトランディング(軟着陸)やノーランディング(景気減速を伴うことなくインフレも鎮静化)への期待につながっていた。しかし、今回の米GDP改定値の結果を受けて、やや雲行きが怪しくなってきたように見える。今週発表された米小売企業の決算が総じて冴えなかったことも思い出される。
他方、前日に発表された米新規失業保険申請件数は予想外に減少し、3週間ぶりの低水準となった。これにより、引き続きFRBの早期利上げ停止やその先にある利下げ転換は到底期待できる状況にないといえる。法人向け需要が落ち込み、頼みの個人向け需要にも不透明感が強まってきた中、一方で雇用は堅調さを保ち、金融政策による下支えには期待ができない。米経済の先行きは非常に難しくなってきたといえそうだ。
また、米長期金利の上昇が一服し、次期日銀総裁候補の植田氏の所信聴取も無難に通過した割には、本日の東京市場でのグロース株は、半導体を中心とした電子部品関連を除けば強くない。実際、東証グロース市場指数やマザーズ指数は軟調な展開となっている。祝日前に75日線や200日線を下放れた日経平均が再び同水準に戻ってきたことは、海外短期筋の売り転換を防ぐ意味でポジティブに捉えられるものの、足元の個人投資家の物色意欲の低下はやや気掛かりだ。今晩発表される米1月個人消費支出(PCE)コアデフレーターを前に様子見ムードが強まっているだけであればよいが、25日、75日、100日線など主要移動平均線を割り込んできているマザーズ指数の動きに注意したい。
こうした中、3月下旬までは季節性要因なども踏まえ、引き続きバリュー(割安)株や高配当利回り株などの押し目買いに投資を限定するのがよさそうだ。ほか、継続的な需要拡大が見込まれるインバウンド・リオープン関連などに安心感がありそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
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