今週の新興市場は続落。預金急減を受けて米地銀ファースト・リパブリック・バンクの株価が急落するなど投資家心理が悪化する中、新興株は週前半から軟調に推移。民間で世界初の月面着陸が期待された宇宙ベンチャーのispace<9348>は着陸に失敗し、同社株が2日連続でストップ安比例配分になるなど、個人投資家の含み損益を悪化させる出来事も発生し、週半ばには新興株は大きく下落。一方、米IT大手の決算が総じて予想を上回るものとなったことが投資家心理を支えたほか、週末には日本銀行の金融政策決定会合で政策の現状維持が決まったことで安心感が台頭し、週後半は持ち直した。なお、週間の騰落率は、日経平均が+1.02%であったのに対して、マザーズ指数は-1.01%、東証グロース市場指数は-1.06%だった。
個別では、上述のispaceが週間で-43.6%と急落したほか、M&A総研HD<9552>が-5.5%、ANYCOLOR<5032>が-7.5%、などと時価総額上位銘柄が全般軟調だった。一方、カバー<5253>は業績上方修正を発表して週末に急伸し、週間では+8.0%。ほか、経済再開の動きを好感した物色からスカイマーク<9204>が+13.7%と好調だった。週間上昇率ランキングでは今期見通しが好感されたサイバートラスト<4498>が+46.5%、ソニーG<6758>との資本業務提携がサプライズとなったニューラルポケット<4056>が+33.7%と急伸。一方、ispaceのほか、急性期脳梗塞の治療薬について開発担当の米バイオジェンが臨床試験を一時停止したことが嫌気されたティムス<4891>が-39.5%と急落した。
■連休前に利食い売り優勢、個人の含み損益悪化が気掛かり
来週・再来週の新興市場は弱含みか。マザーズ指数は、年初来高値を更新する日経平均とは異なり、200日移動平均線をサポートラインとして意識しながらも上値の重い展開が続いている。こうした中、大型連休の関係で立会いが週初2日間に限られる来週は、連休中の米連邦公開市場委員会(FOMC)や米雇用統計を前に様子見ムードが強まりそうで、手仕舞い売りなどを誘いやすいだろう。また、米国でインフレ指標の上振れが続く中、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げ継続を示唆すれば、今会合での利上げ打ち止めを期待する市場は失望する恐れがある。再来週も米国では消費者物価指数(CPI)など重要指標が発表されるため、上値の重い展開が続きそうだ。
一方、新規株式公開(IPO)ラッシュが一巡したことで、換金売り圧力は止み、需給環境はやや改善してくる可能性がある。ただ、連休明けの週は国内の企業決算がピークを迎えるため、投資家の目線は東証プライム市場に向きやすく、新興株の銘柄には資金が向かいにくいとも考えられる。
今週は信用買いが増えていたispaceが急落したほか、同様に信用買い残が溜まっていたティムスも急落し、両銘柄が週間下落率ランキングの1、2位を占めた。一方で、日経レバレッジ・インデックス連動型上場投信(ETF)<1570>の信用売りを積み上げてきた個人投資家は足元の日経平均の年初来高値更新もあり、含み損益が悪化している可能性が高い。東京証券取引所の改革要請で割安株への注目度が高まっていることも踏まえると、当面、新興株は相対的な観点から投資妙味に乏しいと考えられる。
短期物色が想定される中、直近IPOの中でもチャートが良好なAnyMind<5027>、モンスターラボHD<5255>、ココルポート<9346>、TMN<5258>に注目したい。
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