7月29日にネクスグループは、同社連結子会社が管理する非公開の重要資料に対し、外部から不適切なアクセスが試みられていたことを発表した。アクセスを試みたのは、クシムの現代表取締役である田原弘貴氏が代理人に指定したOMM法律事務所所属の弁護士であり、ネクスグループはこれを『重大な問題』と指摘している。
ネクスグループによると、このアクセス試行が行われたのは2025年2月中旬。OMM法律事務所に所属する弁護士の氏名および事務所名を用いたアカウントから、特定のURLでのみアクセス可能な資料への閲覧申請がなされた。最終的にリクエストは拒否され、資料閲覧には至らなかったものの、ネクスグループが経緯を確認したところ、弁護士側は「事務所が本人の同意を得てアカウントを作成した」と回答。さらに「田原氏から資料が保管されているクラウドサービスの管理はクシムが行っていると説明されていた」とも述べたようだ。
当時、田原氏はクシムの取締役であり、弁護士は田原氏の指示に従っただけで自身には責任がないとの立場を示した格好となる。
一方、クシムは7月30日付で公表した文書において、今回のアクセス対象となった情報資産は同社に帰属すると主張し、「不正アクセス」との指摘には事実誤認が含まれているとの見解を示した。
ただ、ネクスグループ側は、当該資料がアクセス時点で同社グループの子会社に帰属していたとし、アクセス行為自体に問題がある可能性を指摘している。
双方の主張には隔たりがあり、今後の対応や調査の行方が注目される。
クシムを巡っては、2024年11月に当時取締役であった田原氏が倉元製作所<5216>の渡邉敏行氏らと組んで株主提案を行い、その結果、2024年4月末の臨時株主総会で田原氏自身が代表取締役に就任した経緯がある。旧経営陣は、この一連の手法を「ウルフパック的だ」と強く批判。また、田原氏自身も売却済みの子会社を取り戻す意向を繰り返し表明しており、今回の不正アクセスもその一環としてネクスグループは警戒しているのであろう。
さらに今回関与が指摘されているOMM法律事務所は、過去に三ッ星<5820>の経営権争いにおいても助言役を務めていた。この案件は「ウルフパック」的として問題視され、買収を仕掛けた側が証券取引等監視委員会(SESC)から課徴金処分を受けたが、その処分は乗っ取りが成立した2年後に下されている。結果的に、買収者側は課徴金95万円を支払い、経営権の奪取に成功している。「ルールを逸脱しても、得られるリターンがペナルティを上回るなら躊躇しない」――そんな価値観を持つ勢力にとって、日本の資本市場は格好の標的となっている現実が垣間見える。
企業を巡る不適切な手法や法制度の隙を突く行為が目立つ中、ネクスグループの今後の調査結果や対応に市場の注目が集まっている。
<NH>
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