【QAあり】室町ケミカル、健康食品・化学品事業の売上増加と原価率改善効果により2Q増収増益 3円増配で配当性向30%超を見込む
目次
青木淳一氏(以下、青木):みなさま、本日はお忙しい中ご出席いただき、誠にありがとうございます。室町ケミカル代表取締役社長の青木です。ただいまから、2025年5月期第2四半期の当社決算概要についてご説明します。本日の流れは、スライドのとおりです。
会社概要
会社概要について簡単にご説明します。当社は1917年に売薬の製造・販売を目的として創立しました。戦時に一時廃業しましたが、1947年に再設立しました。創立から100年以上、設立から70年以上の歴史を持つ会社です。
現在はスタンダード市場に上場しています。本社は福岡県大牟田市にあり、従業員は205名です。拠点は福岡県大牟田市以外に、東京、大阪、千葉、茨城にあります。
事業セグメント
事業セグメントについてです。当社は医薬品、健康食品、化学品の3つの事業で成り立っています。売上構成比率は、医薬品事業が約51パーセント、健康食品事業が約13パーセント、化学品事業が約36パーセントです。
医薬品事業では、主に医薬品の有効成分となる原薬を取り扱っています。特徴は、メーカー機能と商社機能を併せ持つ点です。
健康食品事業では、ゼリータイプの健康食品の企画・製造を行っています。形状としては、スティックゼリーの製品が中心です。健康美容成分の苦味や臭いを包み隠しておいしい味の健康食品に仕上げる技術が特徴で、これにより市場から評価を得ています。
化学品事業は、売上高の約8割が液体処理に関するものです。主にイオン交換樹脂や分離膜を取り扱っています。過去から蓄積した技術やノウハウをベースに、お客さまの目的に合わせた製品を選定します。そして、必要に応じてそれらを有効的に組み合わせて装置化まで行い、販売しています。
パーパスと経営理念
当社のパーパスと経営理念はスライドのとおりです。パーパスとしては、「『健康』と『環境』をテーマに、社会へ貢献する」会社であり続けたいと思っています。医薬品事業と健康食品事業で健康を、化学品事業で環境に貢献します。
健康・環境分野で社会の抱える問題に向き合って、それらを解決することにより、当社の経済的・社会的価値を向上し、継続的に成長していきます。
損益計算書
2025年5月期第2四半期の決算についてご説明します。まずは損益計算書です。第2四半期累計期間は前年同期と比較すると、増収増益となりました。売上高は29億6,500万円で、前年同期比1.8パーセントの増加となりました。こちらはおおむね期初計画どおりに推移しています。
前期から回復した健康食品工場をはじめとする工場の稼働率向上や、円安や原材料高騰を反映した販売価格の見直し、顧客の生産スケジュールの変更や仕入タイミング等を受けて一時的に在庫が増加したことから原価率が改善しました。それにより売上総利益も増加しています。
販売費及び一般管理費は、前年同期比で3.1パーセント増加しました。以上により、営業利益は1億5,400万円となり、前年同期比34パーセントの増加となりました。当期純利益は1億2,000万円で、前年同期比29.5パーセントの増加となっています。
売上四半期推移
スライドのグラフは、売上高と営業利益率を四半期ごとに並べたものです。今期下期についても、前期と同様に売上高と営業利益率が上昇する計画です。
営業利益 増減要因(前年同期比)
営業利益に関する前年同期比の増減要因です。営業利益全体は、前年同期比3,900万円の増加となりました。売上高は微増でしたが、工場稼働率の向上や販売価格の見直し、在庫の増加等により、原価率が改善して売上総利益が増加しました。
販売費及び一般管理費は、開発の依頼件数が順調に増加している状況から、開発部門経費を中心に増加しています。
営業利益 増減要因(事業別・前年同期比)
事業別営業利益の前年同期比についてです。医薬品事業は、売上減少により売上総利益が減少しました。健康食品事業・化学品事業は売上増加に加え、工場稼働率の向上と製造体制の見直しによる原価率改善効果により、売上総利益が増加しています。
セグメント別実績 医薬品事業
各セグメントの状況についてご説明します。医薬品事業は、売上高13億5,200万円、営業利益1億6,600万円の減収減益となりました。通期の売上予想に対する進捗率は41パーセントです。
売上高の減少は、主に輸入原薬で当社主力の抗てんかん薬用原薬の市場競争が激化した影響によるものです。また、原価率は円安に対応した価格設定が進んだことや、工場の稼働率の向上に加えて、顧客生産スケジュールの変更等により、在庫が増加して改善しています。販売費及び一般管理費については、開発センターの移転に伴う費用等により開発費が増加しました。
今後、新規の輸入契約の取り扱いを増やして、合成・精製等の自社製造案件を着実に立ち上げることで、少数の主力商品に頼らない事業の構築を進めていきます。
セグメント別実績 健康食品事業
健康食品事業についてです。売上高が5億2,300万円、営業利益が500万円となりました。通期の売上予想に対する進捗率は52.3パーセントです。
前第3四半期に新たに上市したOEM製品が売上高をけん引する状況が続いています。工場稼働率の改善や販売価格の見直しにより、原価率の改善も進んでいます。
また、開発力の強化を見据えた人員拡充により開発費が増加しました。営業利益はプラスに転じていますが、まだ改善が必要な状況と認識しているため、さらなる製造原価低減策を打ちながら、受注案件を増やす予定です。
セグメント別実績 化学品事業
化学品事業についてです。売上高が10億8,900万円、営業損失が1,700万円となりました。通期の売上予想に対する進捗は45.4パーセントです。
主力のイオン交換樹脂は、仕入販売品を中心とした販売が増加して、大幅に増収を達成しました。今期の水処理装置の売上高は当初の予定どおりの実績となっています。
近年上市した高付加価値で高機能なイオン交換樹脂を推進力として、特に電力業界等の開拓を進めています。PFAS問題等の新たな課題解決を見据え、営業開発体制を拡充しています。今後は、展示会の出展や学会での講演・発表等を加速して、お客さまの抱える課題の聞き取りや当社の持つ技術のアピールを行いたいと考えています。
貸借対照表
貸借対照表の動きについてご説明します。仕入・製造や販売のタイミングの関係により、製品・商品の在庫が増加しています。また、資金需要に応じた長期借入金の調達を行っています。
キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況です。現金及び現金同等物の期末残高は前期末比で2億7,800万円増加しました。引き続き、事業拡大のために必要な設備投資等を行っていきます。
取り組み状況・トピックス①
取り組み状況とトピックスについてご説明します。1つ目は、化学品事業に関わるPFAS関連の話題です。
2026年4月を目途に、PFASの基準値が「暫定目標」から「水質基準」に格上げされ、水道事業者に対して検査義務が課せられる見込みとなっています。以前から、この問題に当社の技術を役立てるべく準備等を進めてきましたが、それらの内容についてご紹介します。
安心・安全な水を提供し続けるためには、PFASを除去することに加え、しっかりとモニタリングを続けること、その除去方法がサステナブルであることが特に重要な要件となります。当社では、この3要件それぞれについて対応を進めてきました。
除去に関しては、すでにPFAS除去用のイオン交換樹脂の販売を開始しています。モニタリングに関しては、東京学芸大学との共同研究において、簡便な分析方法の確立を進めている状況です。また、サステナビリティについても、PFAS除去用イオン交換樹脂の再生に関する基礎技術までは確立したため、実用化に向けて着実にステップを進めていきたいと考えています。
3つの要件の中で最も重要である除去については、PFASの吸着材として一般的に想起される活性炭に比べても、イオン交換樹脂は高い吸着性能を持っていること、より幅広いタイプのPFASを吸着する能力を有していることを付け加えます。
多くの水道事業者に当社製品を採用いただくには、まだまだ多くの障壁はあるとは思いますが、みなさまに安心して水道水をご利用いただくために、この3つの要件それぞれに対する取り組みを最優先で進めていきます。
取り組み状況・トピックス②
その他のトピックスは、スライドに記載のとおりです。
医薬品事業では、複数の新たな輸入原薬を今期から納入開始しました。そのうちの1つは大手後発薬メーカー向けの胃腸薬用原薬で、ピーク時の売上高は年間1億円を見込んでいます。輸入原薬の採用プロセスには多大な労力と時間はかかりますが、採用品目を着実に積み上げていくことで、少数の主力品に頼らない製品構成を構築したいと考えています。
健康食品事業では、協力会社とのコラボレーションにより、従来のゼリー製剤に加え、錠剤やカプセルなどさまざまな剤型に対応できる体制を構築しました。バリエーションを増やすことで、お客さまのさまざまな要望にお応えし、売上高をさらに伸長していきたいと考えています。
化学品事業については、電力業界への参入状況もお伝えします。前期に初参入を果たしましたが、当期においてもすでに2つの発電所において当社の高架橋度イオン交換樹脂の採用が決定しました。電力業界は実績がものをいう業界だと聞いていますので、今後もこのような採用実績を武器に、全国津々浦々の発電所への採用と幅広い用途への適応拡大を進めていきます。
通期業績予想
2025年5月期の業績予想についてご説明します。第2四半期の実績としては、営業利益・経常利益が当初予想を上回っています。今後の売上予定品目や費用等の使用見込みを加味し、通期の業績予想に変更はありません。引き続き対応を進めていきます。
FY2025 数値計画(中期経営計画2025)(再掲)
中期経営計画の進捗についてご説明します。発表後から、数値計画に変更はありません。
成長戦略・体制強化(中期経営計画2025)(再掲)
成長戦略・体制強化についても、公表内容に変更はありません。
中期経営計画 数値目標の進捗
数値目標に関しても計画自体に変更はありません。業績予想の数値については、スライドにあるとおり、発表済みの売上高・利益をご参照いただければと思います。中期経営計画最終年度となる今期は、当初の計画を下回る見立てですが、少しでも計画に近づけるよう最後まで努力を継続していきます。
株主還元方針
株主還元の方針です。これまで配当性向20パーセント以上を目標に、安定的な配当を目指してきました。2024年5月期は3円の増配を行い、今期についても3円の増配を行う予定です。これにより、今期は配当性向30パーセント超の水準に達する見込みです。
今後の目標水準についてはまだ定めていませんが、当社の財政状態や将来の業績見通し、事業展開、経営体質の強化などを総合的に勘案し、安定した配当を継続することを基本方針としています。半年後の新中期経営計画発表時に、あらためて方針についてご説明する予定です。
以上でご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:PFASへの対応について
司会者:「PFASへの対応について、業績貢献の規模や考え方について教えてください」というご質問です。
青木:PFASについては先ほどご説明したとおり、基準値がようやく暫定目標から水質基準へと格上げされたタイミングです。今後の計画については、各社、各自治体などいろいろなところの動きを見た上で、あらためて計画を立てたいと思っています。
現時点で、この件について経営計画上の売上目標を設定するなどのことはしていません。ただし、今回このようなスイッチが入ったため、まずは今後の動向を注視していきます。
私の個人的な考えでは、上水だけではなく、排水についても今後規制化が進んでいくことを予想しています。そのような予想をしている企業もたくさんあり、ご相談もいただいています。そのようなことをすべて情報として集約・検討した上で、あらためて目標値を設定したいと考えています。そのようにご理解いただければと思っています。
質疑応答:化学品事業の黒字化について
司会者:「化学品事業について、なぜ赤字なのでしょうか? 黒字化の目途は立っているのですか?」というご質問です。
青木:現在、化学品事業はいろいろな先行投資をしている段階と捉えていただければと思います。特にPFASも含め、かなり多くの開発依頼が来ています。そのような中、当社の技術・ノウハウを展示会や学会発表により外部にアピールするケースも多くあり、その分だけ経費もかさみますし、特に開発経費もかかっています。
また、当社のビジネススタイルとしては、輸入商売のかたちでこれまで進めてきたのですが、今後は輸出案件も手がけようとしています。そのような要素により、渡航費用等も含め、かなりの先行投資をしています。
現在は投資をするフェーズだと捉えており、引き続き積極的に進めたいと考えています。将来的にはこの事業で大きく花を咲かせたいと考えていますので、ご理解いただければと思います。
質疑応答:医薬品事業の新規輸入原薬の取り扱いについて
司会者:「医薬品事業は年間計画未達となりそうです。新規輸入原薬の取り扱い開始まで、どの程度の時間がかかるのでしょうか?」というご質問です。
青木:輸入原薬について、商品の場合は活動をスタートして2年から3年くらいかかります。製品の場合は開発プロセスなども鑑みると、早くて3年、通常は4年くらいの時間がかかります。
現在、商品・製品ともに開発依頼を数多くいただいており、それらのステージを進めています。今年7月には新中期経営計画の発表を予定しているため、その時に少しでも上積みすべく、この半年でさらにスパートをかけて開発を進めたいと考えています。
質疑応答:PFAS除去におけるイオン交換樹脂の優位性について
司会者:「PFASの除去に関して、活性炭メーカーによると『運用コストとサステナビリティの面でイオン交換樹脂より活性炭に分がある』とのことですが、その点についてどのようにお考えですか?」というご質問です。
青木:両者を価格の面で比較すると、イオン交換樹脂は活性炭よりも価格が高くなります。しかし、吸着性能については、イオン交換樹脂に優位性があると考えています。消耗品ですから、運用中の交換頻度は活性炭よりも低くなるメリットはあると思います。したがって、トータルのランニングコストで見た場合には、その差は微妙だと考えています。
現在、いろいろなお話をいただいていますが、それらを総合的に勘案すると、おそらく活性炭とイオン交換樹脂のそれぞれの優位性を活かし、併用するケースが多くなるのではないかと予想します。我々も活性炭を仕入れて販売しているため、そのような意味では活性炭メーカーを競合相手というよりも協力相手と捉え、お客さまの状況に応じてそれらをうまく組み合わせながら、最適なパターンを提供することを優先して進めたいと考えています。
質疑応答:新中期経営計画について
司会者:「新中期経営計画の感触を教えてください。売上高・利益については、今回の中期経営計画の再チャレンジというイメージでしょうか?」というご質問です。
青木:現在、新中期経営計画を積み上げている最中ですので、今年7月に予定している決算説明会であらためてご説明したいと考えています。我々としても、長期の目標はすでに公開しているため、それに近い、できればさらに上回るくらいの計画をお示しできればと思います。
そのためにも、この半年間において、全事業で抱えている開発の進捗状況が非常に大事になってきます。場合によっては、それらが柱になっていくこともあるため、引き続き開発を進めている状況です。
質疑応答:イオン交換樹脂の新規開拓について
司会者:「イオン交換樹脂の新規業界開拓の中に、全国の水道業者は早期に入ってくるのでしょうか?」というご質問です。
青木:水道事業者への展開については、複数の事業者からご相談をいただいています。当然、全事業者というわけにはいかない状況もありますが、学会や展示会にはかなり多くの水道事業者が来ているため、そこで盛んにアピールしながら、より多くの獲得を目指していきたいと考えています。
質疑応答:イオン交換樹脂のPFAS除去レベルを示すデータについて
司会者:「PFAS問題で、活性炭よりもイオン交換樹脂のほうが吸着レベル・除去レベルが高いとのことですが、データではどの程度異なるのでしょうか?」というご質問です。
青木:データが手元にないため、数字でご説明できる状況にありません。ただし、学会等ではイオン交換樹脂のデータを公開しているため、またの機会にあらためてデータをお示しできるよう進めていきたいと考えています。
活性炭よりイオン交換樹脂のほうが吸着性能に分があるという話も、データをもとに優位性を確認した上でのことです。そのようにご理解いただければと思います。
質疑応答:売上高・利益における上期と下期の数値の開きについて
司会者:「2024年5月期の実績と2025年5月期の予想において、上期と下期で売上高・利益に大きな開きがあるようですが、何か理由はあるのでしょうか?」というご質問です。
青木:製品・商品について、全事業で抱えているものを見る限り、季節変動といえるものは構成上ないと考えています。では、なぜ差が開くのかというと、基本的にはお客さまが必要とするサイクルで製品・商品を販売するため、大口のお客さまのサイクルに影響されることが要因の1つかと思います。
また、当社内部で振り返ってみた時に、例えば、一部の製品については、夏に当社の工場の定期メンテナンスをする期間があるため、その期間の売上は当然なくなります。それが上期に販売数量が減る理由の1つにもなっていることから、実際には複合要因で差が出ているのだろうと捉えています。
質疑応答:後発薬の供給不足が事業に与える影響について
司会者:「後発品マーケットでは後発薬の供給不足が大きな問題となっていますが、御社の事業に対してプラス面・マイナス面の影響はあるのでしょうか?」というご質問です。
青木:いろいろな要素はありますが、マイナス面という意味では、これはどこでも共通しているとは思いますが、原材料の価格が上がっていることが挙げられます。また、それに伴う品薄で原材料の一部が入手しにくいことは確かにマイナス面としてあるかと思います。
一方で、プラス面という意味では、品薄が続いている状況の中で、後発薬メーカーも薬を確保するために、供給体制も含めて、なんとか製造できないかというご相談が増えるのは間違いありません。我々もそのようなご相談をいただいている中で、できる限りそのご要望に添えるよう開発を進めています。
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