同社のセグメントは「メディア」「エージェント」「HR・DXソリューション」「グローバル」の4つに区分される。「メディア」は求人情報サイトを通じて企業と求職者を結びつける事業であり、基本は前金型の課金体系だが、ダイレクトリクルーティングでは成果報酬を組み合わせる。「エージェント」は人材紹介による採用支援で、完全成功報酬型である。豊富なデータベースと独自のマッチングノウハウを生かし、企業の採用課題に応じた紹介を行う。「HR・DXソリューション」は教育研修、評価制度構築、タレントマネジメント、組織診断などを提供し、採用後の定着や生産性向上にまで踏み込む。クラウド型HRツールを展開し、人事領域のDX支援基盤を整えている。「グローバル」はアジアを中心に拠点を構え、現地で採用支援や人材紹介を展開する。日本で培ったノウハウや教育サービスをローカライズして提供し、海外展開を進めている。
同社の主な強みは3点と考える。第1に、「入社後活躍」を軸にした一貫した事業構造である。求人掲載から入社、人材の紹介、教育・研修、コンサルティングまでを一気通貫で提供できる体制を整えている。採用段階だけでなく、入社後の定着や戦力化までを見据えた支援が可能となり、顧客企業の中長期的な成果を見越した支援をしている。第2に、詳細かつ多面的な情報提供力である。求人広告や人材紹介において、仕事内容や、キャリアパス、組織文化を丁寧に提示し、求職者が入社後を具体的にイメージできるよう支援する。加えて、求職者から寄せられる口コミや体験談をサービスに反映し、企業の実態をよりリアルに伝える仕組みを持つ。これにより入社後のミスマッチを防ぎ、採用の質を高める効果がある。第3に、幅広いサービスラインと豊富なデータベースを活用した提案力である。求人広告、人材紹介、HRテック、研修、グローバルなどを横断的に組み合わせ、数百万件規模の求人・人材データや求職者からのフィードバックをもとに最適解を設計できる点は競合に対する優位性といえる。
2026年3月期第1四半期業績は、売上高が前年同期比7.7%減の14,991百万円、営業利益が同21.5%減の1,328百万円となった。売上面は、メディアにおける一部サービスの投資抑制や、グローバルの一部で売上計上方法を変更したことなどにより減収となった。利益面は、広告宣伝費や販売促進費の削減効果があったものの、メディアの減収や人件費の増加が影響し、減益となった。
2026年3月期通期業績は、売上高が前期比5.3%減の62,200百万円、営業利益が同52.5%減の2,800百万円の見通しである。同社は今期を「事業再構築の年」と位置づけており、メディアの主力サービスである「エン転職」への開発投資やプロモーションを積極化する方針である。短期的には収益低下が避けられないものの、既存サービスの競争力強化や利用者基盤の拡大に向けた先行投資と見られる。足元の業績水準は厳しいものの、中期的な業績回帰に向けた布石と位置付けられる。
成長戦略として、主力サービスである「エン転職」の再強化を進める。入社決定数の増加を目指し、投資を再び拡大するとともに、成功報酬型を含めた多様な収益モデルを構築し、マネタイズの強化を図る。また、ハイクラス・ミドルクラス領域への人材紹介業を強化するほか、商品企画やプロダクト体制の見直し、営業体制の再構築にも取り組んでいく。「engage」に関しては投資を最適化し、商品改善を通じて入社決定率の向上を目指す。これらの施策により、同社は採用支援サービス全体の競争力を高め、持続的な成長の実現を目指す方針である。
株主還元については、2026年3月期は配当性向50%の予定であり、1株あたり年間配当金は24.0円の見通しである。また、2025年5月には自己株式取得を発表しており、上限7.8百万株、50億円の規模で2026年4月末まで実施する計画である。配当と自社株買いを組み合わせた還元方針は、資本効率の向上を意識したものである。業績が調整局面にあるなかで積極的な株主還元を示しており、株価下支えや投資家への安心感につながる可能性があろう。
<HM>
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