前日17日の米国株式相場は反落。ダウ平均は167.09ドル安の29783.35ドル、ナスダックは24.79ポイント安の11899.34ポイントで取引を終了した。10月小売売上高が予想以上に鈍化したほか、パウエルFRB議長が短期見通しのリスク上昇を警告したことも手伝い終日軟調推移となった。
米国株安を受けた今日の東京株式市場は売りが先行した。東京都が新型コロナの警戒レベルを、4段階の指標で最も深刻な「感染が拡大している」へ引き上げる方向で最終調整に入ったと伝えられるなど感染拡大の懸念が一段と強くなっていることに加え、11月に入り昨日までに日経平均が3000円を超す上げとなったこともあり利益確定売りが出やすかった。さらに、外為市場で1ドル=104円10銭前後と昨日15時頃の水準から30-40銭ほど円高・ドル安に振れたことも上値抑制要因となった。
個別では、公募増資・自社株処分を発表し1株価値の希薄化や株式需給悪化が懸念されたショーエイコーポ<9385>、窒化ガリウムの伸び悩み見通しをマイナス視された住友電工<5802>、関係会社の火災による業績への影響が懸念されたDNC<4246>、東証による信用規制強化を嫌気したツインバード<6897>が下げた。また、円高傾向を受けホンダ<7267>など自動車株の一角が下落し、米長期金利の低下を受け第一生命HD<8750>、三菱UFJ<8306>などが軟調だった。
一方、Web会議システムに顔認証機能を導入した日本エンター<4829>、21年4月期業績予想を上方修正したヤーマン<6630>が10%を超す大幅高となったほか、「シン・ウルトラマン」効果にも注目とし国内証券が目標株価を引き上げたフィールズ<2767>が上げ、日米豪とASEANがCO2の地下貯留で連携すると報じられ関連企業として国際帝石<
1605>、スパコン「富岳」が計算速度で世界首位となったことを受けた富士通<6702>が堅調だった。
セクターでは、非鉄金属、海運業、空運業、輸送用機器、精密機器などが値下がり率上位。一方、鉱業、石油石炭製品、不動産業が値上がりした。東証1部の値下がり銘柄は全体の59%、対して値上がり銘柄は35%となっている。
相場を主導するのはバリュー株(割安株)かグロース株(成長株)か。市場では主役が目まぐるしく変わり、引き続き議論も活発だ。先週10日の当欄では、ワクチン開発進展のニュースで株式市場の主役がグロース株からバリュー株へ一気に変わるという見方はやや無理があり、「ここから時間をかけて少しずつシナリオ転換するというのが穏当な見方ではないだろうか。」と書いた。
次期米大統領として有力なバイデン氏は、新型コロナウイルス対策を最優先課題に位置づけると表明しており、トランプ政権の経済優先から軌道修正となりそうだ。また、パウエルFRB議長は昨日のオンライン討論会で、新型コロナウイルス流行について
「感染が速いペースで広がっており今後数カ月は厳しい状況になる」と指摘し、一段の金融・財政支援が必要になる可能性があるとの認識を示したと伝えられた。しかし、米国議会が「ねじれ」状態となれば、感染防止に動いた際の財政措置が中途半端なものになる可能性もある。
「株価=景気/金利」の式で言えば、分子の景気は上述のようにコロナ対策や議会での論戦次第では拡大期待が一時的に後退する場面も想定され、経済対策としては分母の金融政策に頼る場面がありそうだ。パウエルFRB議長は景気の二番底懸念に対し量的緩和の拡充を検討する考えを表明しており、この点は安心材料だ。ただ、ゼロ金利状態が長く続いており緩和余地は乏しくなっている。
このように、分母の金融緩和余地、分子の景気拡大シナリオはどちらもやや道が狭くなっており、バリュー株、グロース株、いずれのシナリオも決定力不足の感がある。ワクチン実用化期待などを手掛かりに株式市場は活気づいているが、ここは兜の緒を締めてかかる場面かもしれない。バリュー株、グロース株についてはもう少し考えを進めたいが、紙面の都合で次の機会に回す。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。円相場の方向や米国株式の動向などを確認したいとする向きも多く、積極的な買いは手控えられそうだ。一方、相場の先高観は依然強く、今日の下げは健全なスピード調整との見方が多いことに加え、前場のTOPIXが0.53%の下落となっており、日銀によるETF買入れの思惑が働く可能性もあり、下値があっても限定的だろう。
(小山 眞一)
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