―インバウンド活況にも貢献度大、企業のIP戦略の拡大でも脚光を浴びる―
日本は言わずと知れた「キャラクター大国」だ。世界的人気を誇るアニメやゲーム、映画に魅せられて訪日する外国人観光客が多いことはもちろんだが、各種商品やグッズなど幅広い分野に キャラクターが採用され、高い経済効果を生んでいる。「インバウンド(訪日外国人)」や「IP(知的財産)」にも絡み株式市場で高い関心を集める「キャラクタービジネス」関連株に焦点を当てた。
●タカラトミーは「キデイランド」効果で業績増額修正
インターネットや各種技術の発達などもあり、サービスが多様化、趣味嗜好も複雑に分岐しているのが現代だ。そんな中、世代を超えた人気を誇り高いポテンシャルを秘めているのが「キャラクタービジネス」だ。例えば、日本を代表する玩具メーカーの1社であるタカラトミー <7867> [東証P]は1月26日に24 年3月期連結業績予想の増額修正を発表した。売上高は従来予想の1950億円から2000億円(前期比6.8%増)へ、営業利益は135億円から170億円(同29.6%増)へと最高益見通しに引き上げた。
この業績好調の要因の一つがキャラクターグッズの小売店事業「キデイランド」である。サンリオ <8136> [東証P]のキャラクター「ハローキティ」と名前は似ているが、同社とは関係はなく、名称の由来は英語の「KID」から来ている。「子ヤギ」のことを指し、やんちゃで伸び伸びとしたおちびちゃんといったニュアンスがある。このキデイランドの特徴は「スヌーピータウンショップ」「リラックマストア」「すみっコぐらしショップ」など、キャラクターごとに専門売り場を設けている点にある。各キャラクターで異なる世界観にあわせ、インテリアや装飾などを通じて売り場を演出することで、ファンを更に強く引きつけているのだ。
●世界規模でのキャラクターの「IP」化戦略が進行
今や何か同じ物事に多くの人々の興味関心が向かうというのは、SNSの力で一時的に実現することはあっても、本質的にはその実現難易度が跳ね上がっているといえよう。そんな時代が変化しているなか、多くの人の共通項として比較的機能しやすいのが「キャラクター」だ。
株式市場やビジネスの世界では「IP」と表現されることも多い。日本発で世界的な人気を誇るキャラクターと言えば、ゲームの「スーパーマリオ」や映画の「ゴジラ」、あるいは「ドラえもん」など枚挙に暇(いとま)がない。直近で言えば「鬼滅の刃」のように新たなファンを獲得している事例は多い。その無尽蔵とも呼べる供給量も相まって日本のアニメ漫画コンテンツのファンは年々拡大の一途にある。足もとでは「葬送のフリーレン」「マッシュル-MASHLE-」といった漫画作品のアニメも国内では人気である。
加えて、冒頭で例として出した「キデイランド」の好調には、インバウンド効果も関係しているとされる。一定程度人気化しなければ収益インパクトは限られるが、逆に人気化のきっかけさえつかめば一気に爆発する可能性も秘めている。このように、キャラクタービジネスは国策やインバウンド効果の追い風を受ける、時代に即した頑強なビジネスの一形態と見ることができそうだ。そこで以下では、グローバルで認知度の高いキャラクターを有しており、IP戦略の強化を掲げている銘柄を取り上げた。
●任天堂やセガサミー、バンナムHD、イマジニアなど注目
任天堂 <7974> [東証P]~24年3月期第3四半期のモバイル・IP関連収入などについては、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」関連の売り上げが発生したことにより、売上高は前年同期比9割増に膨らんだ。食品メーカーなどと組んだコラボ商品の開発を強化したほか、「星のカービィ」「スプラトゥーン」のIP関連収入なども増えている。
ソニーグループ <6758> [東証P]~ソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社ソニー・クリエイティブプロダクツにおいて、キャラクターを中心とした国内外のIPビジネスを展開しており、24年秋には東京・京橋に、斬新なコンテンツ(漫画、アニメ、音楽、ゲーム、キャラクター)を専門的に扱う新しいタイプのミュージアムを創設する。また、アニメを中心とした映像ビジネスを展開するアニプレックスは、アニメ「鬼滅の刃」を手掛けたことで知られる。
セガサミーホールディングス <6460> [東証P]~「ソニック」がIP戦略の中核を担い、特に海外で非常に高い人気を得ている。戦略的にグローバルメディアミックス展開を仕掛け、収益機会を拡大。1月26日に全世界同時発売したゲーム「龍が如く8」の世界累計販売本数は、発売1週間で100万本を突破しており、同タイトルでは過去最速記録となる。また、中期経営計画においてIP強化を挙げており、23年8月には「アングリーバード」を手掛けるフィンランドのロビオ・エンターテインメントの公開買い付けによる買収が確定している。
バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]~「ワンピース」「ドラゴンボール」「機動戦士ガンダム」「スーパー戦隊」「プリキュア」「アイドルマスター」シリーズや「それいけ! アンパンマン」「パックマン」など有力なIPを有する。「IP軸戦略」として事業の最大化及び、長期的なIP価値の最大化に向けた取り組みを推進している。24年1月には韓国の縦読み漫画制作会社YLABの日本法人に出資した。
サンリオ~130の国と地域にキャラクタービジネスを展開しており、物販ビジネス、著作権の許諾・管理、キャラクター使用許諾などのライセンスビジネスをグローバルに展開する。今年で50周年を迎えるハローキティは現在も高い人気を誇る。キャラクター開発力に強みを持っており、これまで450種類以上が誕生している。
イマジニア <4644> [東証S]~オリジナルやパートナー企業の有力コンテンツを活用した、キャラクターIPの商品化及びライセンス事業などを展開する。サンエックス(東京都千代田区)やサンリオなどが保有する人気キャラクターのゲームや商品などを幅広く展開しており、リラックマ、すみっコぐらし、ハローキティなどを取り扱う。
KADOKAWA <9468> [東証P]~アニメ、書籍、映画など同社のIPを活用したキャラクターライセンスによる商品化やタイアップ企画・地域コラボ企画などを展開している。24年春作品アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!3」は、グッズ、フィギュア、ゲーム化、ゲームコラボなどへの活用が見込まれる。
●東映アニメや円谷フィHD、寿屋などにも期待
更に、東映アニメーション <4816> [東証S]は、数多くの人気キャラクターを玩具、ゲーム、文具、食品、衣料などあらゆる分野で商品化してきた。中長期戦略では、「IPを戦略の軸に据えたグローバル事業展開」をより一層強化し、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すことを挙げている。また、円谷フィールズホールディングス <2767> [東証P]は、ウルトラマンなどのIPを保有しており、中国でのウルトラマンの認知度は高く、23年5月公表の中期経営計画では中国・ASEAN地域に今後3年間で円谷ブランドを確立する計画である。
タカラトミーは、トミカ、プラレール、リカちゃん、ベイブレードなどの「商品」を、世代を超えた「ブランド」へと成長させてきた。エディア <3935> [東証G]は、コミックやライトノベルの出版や電子書籍の販売など、グループで生み出したオリジナルIPや他社保有IPをさまざまなサービスや商品にクロスメディアで展開する。壽屋 <7809> [東証S]は、フィギュアやプラモデルといったホビー関連品の企画・製造・販売を行っており、高い知名度を誇る。
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