同社のシード化合物は、過去に蓄積してきたプロテインキナーゼを中心とした阻害剤が中心となっている。プロテインキナーゼとはタンパクをリン酸化する酵素で、細胞の分化・増殖等の細胞内情報伝達機能を担っている生体内の重要な酵素である。ただ、過剰なリン酸化は様々な病気を引き起こす要因となるため、同社はプロテインキナーゼの機能をコントロールする阻害剤開発を進めることで、有効な新薬候補化合物を創製している。中でも、同社は世界初のキナーゼ阻害剤(ファスジル)に関与したほか、緑内障治療における世界初のキナーゼ阻害剤(リパスジル)の発明を行うなど技術優位性を持ち、キナーゼ阻害剤のパイオニアとなっている。
同社の売上高は、パートナーから得られる各パイプラインの収益「フロントマネー収入(契約一時金)」、「マイルストーン収入」、「ロイヤリティ収入」の3つとその他収益(共同研究費等)の合算数値が主となっている。「フロントマネー収入」はアライアンス締結(ライセンス アウト等)時に受領する収入で、「マイルストーン収入」は臨床開発進行に伴ってその節目毎に受領する収入、「ロイヤリティ収入」は製品上市後販売額の一定比率を受領する収入となる。一般的な開発プロセスは、自社創薬開発、導入品開発(他社品の開発)、コラボ創薬(他社と共同で新薬創製、開発)と3つのプロセスとなるが、製薬会社等へのライセンスアウトが前提となる。ライセンスアウトの時期は状況に応じて戦略的に対応しており、自社創薬開発は収益が大きい。
2024年12月期の売上高は前年同期比10.1%増の471百万円、営業損益は1,209万円の赤字で着地した。9月にグラナテックの国内ロイヤリティ収入がなくなったものの、眼科手術補助剤DW-1002の販売好調かつ数量増加、円安の影響により直近5年で最高の売上高となった。また、緑内障治療剤グラアルファのロイヤリティは順調に増加し、2024年12月にタイで承認取得した。2025年12月期の業績見通しも開示しており、売上高は前期比15.2%減の400百万円、営業損益は670万円の赤字に縮小する見通し。主に、DW-1002、グラアルファのロイヤリティ収入を計上し、DW-1002(日本)のマイルストーン収入等を見込んでいる。研究開発費は、H-1337、DWR-2206の投与完了により減少するが、新薬創出に向けた研究費用(自社創薬・共同研究)は前期比で増加させる。
パイプラインは、眼科領域を中心とした構成で本数は10本を保有している。2024年12月期期初に見込んでいたイベントの達成状況では、H-1337における米国P2bトップラインデータの公表を達成、DWR-2206は国内P2開始を達成した一方で、DW-5LBTの米国再申請から承認取得・上市は未達(CRL受領、再申請の対応中)、DW-1002の中国承認取得から上市と日本申請は未達となった。ただ、2月19日にDW-1002の中国における承認取得を発表している。
同社は今後も、基盤技術を活用したキナーゼ阻害剤の創製と眼科疾患での知見を活用した自社開発の推進、キナーゼ阻害剤のポテンシャルに注目した他疾患への展開を図っていく。導出済み開発パイプラインや後期共同開発品でベース収益を出しつつ、自社開発品と新薬候補品創出など、成長投資を着実に行っていて中長期的に黒字化を目指している。市場環境では、緑内障は40歳以上の場合、20人に1人が発症するとされ、治療には点眼剤を投与が必要になる。世界の緑内障患者数予測では年平均成長率約3.0%で患者数は増加しており、緑内障の市場は全世界で今後も拡大傾向にある。米国市場が一番大きいが、日本人に多い視覚障害の原因疾患にもなっている。こういった環境からもグラアルファ、H-1337など同社製品の拡大余地も大きい。まずは各パイプラインの進捗状況を確認したいが、自社発明した上市品を保有している数少ないバイオベンチャーとして今後の動向に注目しておきたい。
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