アンジェス<4563>は経営理念として、「治療法がない疾病分野や難病・希少疾患などを対象にした革新的な遺伝子医薬の開発・実用化を通じて、人々の健康と希望にあふれた暮らしの実現に貢献する」ことを掲げ、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。
黒字化の時期に関しては、開発パイプラインの進捗状況次第となる。特に、潜在市場規模の大きい米国でHGF遺伝子治療用製品の開発に成功した場合には、数十億円規模のマイルストーン収入(既に受領した契約一時金含む)が得られる見通しであるだけに、2024年5月頃に発表される後期第2相臨床試験の結果が要注目となる。慢性椎間板性腰痛症を対象としたNF-κBデコイオリゴDNAの国内第2相臨床試験の結果は2026年頃に判明する見込みで、その内容次第で塩野義製薬への導出の可能性も高まると思われる。希少遺伝性疾患の検査受託サービス事業については規模が小さいものの、受託先並びに検査領域の拡大によって2024年12月期以降は収益貢献する見通しだ。Emendoについてはパレスチナ紛争の長期化が懸念要因となるが、ゲノム編集技術を用いた治療法が海外で初めて承認されたことで、パイプライン導出の可能性やOMNIプラットフォームを活用した共同開発契約の実現の可能性が高まると期待される。早期にPOCを取得して、IPOにより資金を独自で調達できるようになれば、同社の財務負担の軽減にもつながるだけに開発の進展に期待したい。弊社では、これら取り組みが順調に進めば2020年代後半には連結業績も黒字化する可能性があると見ている。
成長戦略としては、グローバル化に向けた組織強化や人財育成、並びに技術プラットフォームの深化と拡大に取り組みながら、1) 「コラテジェン(R)」の製品価値最大化、2) パイプラインの継続的拡大、3) 欧米を中心としたグローバル展開の推進、4) 検査受託サービスも含めた希少遺伝性疾患への取り組み強化などに注力し、企業価値の向上を目指す。希少遺伝性疾患の検査受託サービスを行うことで同疾患領域での新たな開発品候補を見出し、EmendoのOMNIプラットフォームを活用して治療薬を開発するといった好循環を作り出すことができれば、「遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す」という同社の長期ビジョン実現の可能性が高まるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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