―株価変貌の三菱重工業に続け、日本のネクストステージを担う有望株をリストアップ―
12月第3週の東京市場は週初から荒れた値動きで、日経平均はフシ目の5万円大台を割り込むだけではおさまらず、一気にザラ場4万8000円台まで売り叩かれる場面もあった。米国株市場では引き続きAI・半導体セクターの過剰投資に対する警戒感がくすぶるなか、一部のハイテク主力銘柄に利食い圧力が顕在化している。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も崩れ足を見せるなど、投資家のセンチメントが悪化し、東京市場のAI関連全般にもその影響が及んだ。
また、週末19日に予定された日銀金融政策決定会合の結果発表と植田日銀総裁の記者会見への関心が高く、深押し場面で強気に買い向かう動きも限定的だった。しかし、良くも悪くも株は需給によって支配されている。同日の日経平均は500円強の上昇で切り返したが、来週以降は日銀イベントの通過と損益通算目的の売り一巡で、リスクオフの歯車が一気に逆回転することも念頭に置いておきたい。年末年始相場でリベンジ株高のシナリオが始動する可能性は決して低くないが、その際、投資テーマとして有力視されるのはズバリ高市政権肝いりの「防衛関連」ということになるだろう。
●世界的に防衛力強化は不可逆的な流れ
国家安全保障の観点から、世界的に不可逆的な防衛力強化の流れが形成されている。日本でも2022年12月に政府は「5年以内に防衛力の抜本的な強化を行うこと」を閣議決定し、23年度予算からそれが上積みする形で反映され、24年度以降は更に加速した。防衛関連の代表格である三菱重工業 <7011> [東証P]の株価が変貌を始めた時期と見事に一致する。
23年6月には防衛産業のサプライチェーンリスクに対応した「防衛生産基盤強化法」が成立、同年10月から施行される運びとなった。これによって認定事業者には財政的な支援措置が行われ、防衛装備品の利益率上限が引き上げられるなどの改革も進行した。防衛分野は元来、民間企業にとって利益採算があまりよくないが、それも解消する方向で国策が始動している。一方、長射程の新型ミサイルの開発なども政策的な後押しで急速に進み、これは三菱重など大手重工メーカーの業績と株価の変化にも如実に映し出された。
そして、日本の政治も大きな転換点を迎えている。憲政史上初の女性宰相となった高市早苗氏は日本の防衛力強化にかねてから前向きな発言を行っており、株式市場でも「防衛」は高市関連の重要テーマとして投資マネーを誘引している。トランプ米政権は、日本に韓国と同等の国内総生産(GDP)比3.5%の防衛費を要求したとされるが、これを金額ベースに換算すると約21兆円となる。ちなみに24年度は8兆円弱であり、それと比較して実に2.6倍規模の水準である。公には高市政権はGDP比2%超に引き上げるかどうかを議論している状況だが、自民党の小林鷹之政調会長は「2%では到底足りない」と明言したことが直近伝わっており、防衛費増額に向けた流れが早晩強まるとの思惑は根強い。
●防衛予算GDP比2%を2年前倒しで達成
そうしたなか、今週16日には今年度の補正予算が参院本会議で可決、成立した。一般会計の歳出は18兆3000億円あまりで、24年度補正予算と比較しておよそ3割増となり、コロナ禍後では最大規模となっている。このなか、防衛力強化には1兆1000億円が上積みされ、25年度の防衛費総額は約11兆円まで膨らんだ。これは同時に27年度にGDP比2%という目標に2年前倒しで到達したことを意味する。この財源としての増税論議もかまびすしいが、高市首相は、家計の負担増を回避する形での決着を目指す方向で議論を進める構えだ。
有事リスクは日本にとって他人事ではない。近い将来に中国によって台湾有事の引き金が引かれる可能性があり、日本にとっても防衛力強化に向けた動きは現実問題として大きな課題となっている。そして、株式市場でも関連銘柄が再び脚光を浴びるタイミングが近づいている。三菱重を筆頭に防衛三羽烏に位置付けられる川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]のほか、航空機や艦艇の搭載機器を手掛ける東京計器 <7721> [東証P]、救難飛行艇「US―2」を納入する新明和工業 <7224> [東証P]、ロケット推進薬原料を製造するカーリット <4275> [東証P]、レーダー装置などの電子機器系の防衛装備品で実績の高い日本アビオニクス <6946> [東証S]、潜水艦など船舶分野で必須となる水中音響センシング技術で沖電気工業 <6703> [東証P]、これらは関連有力株として今後も存在感を高めそうだ。
●防衛関連「新・七人の侍」銘柄が動き出す
そうしたなか、今回のトップ特集では防衛関連株としての範疇ではニューフェースで、意外性のある出世株候補を7銘柄厳選エントリーした。株価的には既に高値圏を舞っている銘柄もあるが、時価総額で考えれば大化け素地を内包している銘柄群を選抜した。年末年始の相場で本格開花の時を迎えるか否か、その株価動向に注目だ。
◎理経 <8226> [東証S]
理経はIT・情報機器の輸入販売を手掛ける商社だが、官公庁向けで強みを有しているのが特長。子会社経由で防衛省向け航空機部材や保守点検事業を展開し、旺盛な需要を取り込むなど国防関連分野での実績が高い。ヘリコプター用VRフライトシミュレーターなどでも注目された経緯がある。また、電気機械などの技術開発を手掛けるエルム(鹿児島県南さつま市)とは衛星通信用地上局アンテナ開発で戦略的提携を行い、衛星通信分野での展開に傾注の構えだ。26年3月期は増収を見込むものの、営業利益は前期比28%減の8億円を予想するが、これは上方修正含みであり、27年3月期は2ケタ成長トレンドを取り戻しそうだ。株価は11月上旬に開けたマドを埋めに行く展開で、500円台半ばがターゲットに。
◎放電精密加工研究所 <6469> [東証S]
放電精密は金属放電加工の専業で、高技術力を武器に市場シェアもトップクラスの実力を持つ。24年1月に資本・業務提携を行った三菱重工業 <7011> [東証P]は現在、同社株式34%を保有する筆頭株主であり、放電精密はこれによって事業基盤と財務基盤の強化に加え、ビジネス展開力にも格段に厚みを加えている。実際、三菱重から発注された防衛装備品を含む航空宇宙関連部品の増勢が顕著となっており、収益を押し上げている。26年2月期は売上高が前期比9%増の141億100万円と過去最高を見込み、営業利益は同16%増の8億円と2ケタ成長が予想されるが、更なる上振れが視野に入る。13週移動平均線をサポートラインとした中期上昇波が続く公算が大きく、まずは2638円の最高値奪回を目指す。
◎共和電業 <6853> [東証S]
共和電は強度を測定する「ひずみゲージ」を中心に各種センサーや測定器の製造を手掛け、マイコン内蔵などの性能の高い機種で実力を発揮し高い商品シェアを誇る。自動車試験向けや交通インフラ、環境・防災・エネルギー関連向けなど幅広い分野でニーズを捉えている。また、航空宇宙や防衛など国家レベルの研究開発分野でも同社の技術力は高評価を獲得している。業績も好調で、営業利益は前期の大幅増益に続いて25年12月期も3%増益の14億円を見込むなど成長トレンドを維持する。26年12月期は再び2ケタ伸長路線に回帰しそうだ。株価は8月上旬にマドを開けて買われた後も強調展開を継続、年初来高値758円奪回から中期的には4ケタ大台乗せも可能。
◎サイバートラスト <4498> [東証G]
サイバトラスは認証・セキュリティーサービスを主要事業とし、サイバー防衛の観点でも要衝を担うポジションにある。金融向け本人確認などで需要増勢の認証関連が収益貢献しているほか、脆弱性診断やWebセキュリティーなど幅広いニーズに対応。強みを持つLinuxでも基本ソフトのサポートサービスで商機を捉えている。日立製作所 <6501> [東証P]とはICチップを活用したオンラインでの本人確認サービスで連携し、金融向け需要獲得に拍車をかける。業績は上場以前から安定的かつ高水準の伸びを続けており、26年3月期も2ケタ増収増益で過去最高更新を続け、営業利益は前期比11%増の15億7000万円を見込んでいる。1597円(修正後株価)の年初来高値更新は時間の問題か。
◎テクノアルファ <3089> [東証S]
Tアルファはパワー半導体の製造プロセスで使われるデバイスのほか、多岐にわたる理化学機器の輸入販売を手掛ける技術商社で、会社側では「日本一の技術商社」をビジョンとして掲げ活躍領域を広げている。マリン事業では舶用クレーンや舶用特殊甲板機器を取り扱い、防衛省の艦艇向けで実績を有するなど官庁関連の取引も豊富だ。25年11月期はマリン事業の急拡大などを追い風に、会社側は開示していないものの営業利益は前の期比倍増となる5~6億円前後が見込まれる。また、26年11月期も成長トレンドが維持されそうだ。PERの割安感が際立ち、株価も大幅な見直し余地がある。小型株で足も軽く、8月に上ヒゲでつけた年初来高値水準である1500円台への再浮上が当面の目標に。
◎藤倉コンポジット <5121> [東証P]
藤コンポはゴム加工品や産業用資材の大手メーカーで、半導体業界向けや自動車業界向けを中心に受注を獲得している。ゴルフシャフトでも有名で高シェアを確保。また、防衛省向けでは船舶用救命いかだなどで実績を重ねている。26年3月期は営業利益が前期比4%増の50億円を見込むが、今上期時点での進捗率から上振れする可能性がある。PER10倍未満で株主還元にも前向きな点は評価。今期は前期実績から2円増配となる66円を計画、配当利回りは3.5%前後と高い。株価は目先軟化傾向も、25日移動平均線絡みの1900円手前の水準は買い下がってみたい。切り返しに転じれば足は軽く、2000円大台回復から10月27日につけた2059円の年初来高値が射程圏に。
◎IMV <7760> [東証S]
IMVは振動試験・計測装置や電磁波対応のEMC試験装置の製造及び受託サービスでグローバルニッチトップの座を確保。同社のサービスはこれまで自動車業界を主要顧客としていたが、最近は防衛産業向けの需要が想定以上で、航空を含めてこちらが収益の主柱を担うまでに成長している。世界的な防衛力強化の流れを背景に中長期的に新たな成長シナリオが描ける状況にある。26年9月期はトップラインが2ケタ伸長を続けるものの、営業利益は前期比4%増の24億円と伸び率は鈍化する見通し。ただ、会社側見通しは保守的とみられ26~27億円に増額余地があり、4期連続2ケタ成長の公算も十分だ。戻り売り圧力のない青空圏に復帰し、当面は2000円台後半を目指す動きが期待される。
株探ニュース
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