橋本:こんにちは、フィスコマーケットレポーターの橋本 真依です。2020年も早くも半分が過ぎましたが、今年は、昨年末の時点ではまったく予期することのできなかった「新型コロナウイルス」という突発的な要因によって波乱の幕開けとなりましたね。こうした株式市場にとっても歴史に残る「コロナ相場」を振り返りながら、マザーズ先物取引の魅力や今後の注目マザーズ銘柄について、フィスコ・アナリストの仲村 幸浩さんに解説していただきます。仲村さん、よろしくお願いします。
仲村:はい、よろしくお願いします。2020年はまさしくコロナ一色といえる相場展開となりました。1月下旬から中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスは、グローバル化した世界に瞬く間に広がっていきました。新型コロナの感染拡大が株式市場にどのような影響を与えたのか、日経平均株価のチャートで振り返ってみましょう。
1月後半時点では24000円付近にあった日経平均株価は、コロナショックと呼ばれる世界同時株安が起こった2月24日の週から異例のスピードで急落していきました。売りが売りを呼ぶ展開に歯止めがかからず、また、3月からは世界経済低迷による原油先物価格の下落も相まって、3月19日には16358.19円の安値まで下げました。騰落率にしてなんと30%超の下落率です。
しかし、その後は、ここからの更なる下落を警戒して売りポジションを積み増していった海外投資家の予想とは裏腹に、世界各国の中央銀行による異例の大規模金融緩和政策、各国政府による過去最大規模の財政出動などに支えられて、株価はじり高基調となりました。そして、5月以降は、このじり高基調に耐えられなくなった海外投資家がそれまでのショートポジションの解消・買い戻しに転じたことがこの株価上昇の勢いに拍車をかけることとなり、日経平均株価は遂には6月上旬には23185.85円まで買い戻され、一気にほぼコロナ前の水準までの回復を達成する形となりました。
橋本:まるでジェットコースターのような激しいアップダウンもそうですが、実体経済の回復はまだまだと言われるなかでの、この株式市場の回復スピードはすごいですね。それでは、こうしたなか、個人投資家に人気のマザーズ市場はどうだったのでしょうか。
仲村:はい、年初からのマザーズ指数の株価推移を見てみるとお分かりいただけるように、マザーズ指数はコロナ前の水準を回復するどころか、とうに2019年における高値も更新し、直近では2018年12月以来となる大台の1000ptも回復する場面も見せています。
橋本:そうなんですね。コロナ前に近い水準まで回復した日経平均でもすごいと思いましたが、マザーズ指数は回復どころか、ここ数年内での高値を付けているなんて驚きです。
仲村:本当にその通りですね。私もこれには驚きました。それでは、次に、マザーズ指数の良好なパフォーマンスをより分かりやすくお見せするために、コロナ後の最安値を付けた3月19日を起点とした相対チャートで、東京市場の主な株価指数の推移を比較してみましょう。この相対チャートを見ると、マザーズ指数は他の株価指数を圧倒的にアウトパフォームしていることが分かります。
橋本:相対比較でここまでの差があるんですね。なぜ、マザーズ指数はこれ程までにパフォーマンスが良いのでしょうか。
仲村:はい、この好調の背景としては、コロナ禍でも相対的に堅調な業績が見込める企業が多いこと、もっと言うならば、コロナがむしろ業績拡大の追い風になっているような企業が多いということが挙げられます。つまり、コロナによって大きく変わってしまった「ニューノーマル」と呼ばれる新しい経済状態の中でも生き残っていくことのできる企業が多いということです。その顔ぶれをマザーズ指数の時価総額上位銘柄群を見ることで確認していきましょう。
仲村:こちらの表は、昨年末と今年6月末時点でのマザーズ時価総額上位20銘柄を比べた表です。黒い太字に赤い背景色で色づけられている企業が順位を上げた銘柄、そして、赤い太字にオレンジ色の背景色で色づけられた企業がコロナ禍で勢いを増して新規に20以内にランクインした銘柄です。
総じて言えることは、やはり、常連のバイオのほか、クラウド、AI(人工知能)、オンライン診療、セキュリティなど「コロナ禍」でも業績拡大が見込めるニューノーマル銘柄が多いということです。
アンジェス<4563>は大阪大学教授が創業した医療ベンチャーで、コロナワクチン開発で常に話題のマザーズ売買代金上位の常連銘柄ですね。そして、テレワーク、さらには電子政府関連銘柄としても話題の弁護士ドットコム<6027>やJMDC<4483>といった銘柄が順位を上げ、同様のテーマ銘柄として、ディープラーニングによる手書き文字認識AIを開発したAIinside<4488>も新規にランクインしています。
そのほか、コロナを受けて新しい世の流れにもなっているオンライン診療のテーマで代表的な銘柄でもあるメドレー<4480>や、三密を避けながらの集客や営業活動ができるということで、コロナ禍で困窮していた小規模事業主の救世主となったeコマースプラットフォームを提供するBASE<4477>、拡大する企業リモートワークのセキュリティ上の課題を解決してくれるHENNGE<4475>など、いわゆる「with コロナ」銘柄が多くランクインしました。
反対に、貸会議室大手のTKP<3479>は、三密を避ける動きに伴うオフィス需要の停滞から、業績悪化懸念が増大し、大きく売られ、時価総額ランキングの順位を落とす格好となりました。このようにコロナ禍によるビジネスモデルの在り方の違いによって株価推移に大きく明暗が分かれています。
橋本:コロナを受けて世界は大きく変わりましたが、こうした動きを反映するかのように、マザーズ市場の時価総額上位銘柄も一変しているのですね。
—「マザーズ市場の投資戦略2020 vol.2 ~コロナ相場の振り返り~」に続く—
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