同社は、5つの主要事業セグメントを有する。
「高機能プラスチックス」では、自動車のフロントガラス用中間膜や半導体・液晶向けの微粒子材料などを展開している。いずれもニッチ領域で世界トップシェアを誇る製品が多く、顧客との共同開発により高い技術的信頼を得ている。EV化やAI需要の拡大を背景に、モビリティおよびエレクトロニクス分野で堅調な成長が続いており、性能重視の市場構造により安定した収益を確保している。
「住宅」では、「セキスイハイム」ブランドのユニット住宅を展開している。工場生産比率が約8割と高く、短工期・高品質が強みである。都市部では高価格帯住宅の需要が回復する一方、地方では価格感度の高い消費者に対応するため、平屋や企画型住宅などコストを抑えた商品の投入を進めている。また、既存住宅のリフォーム需要が拡大しており、利益率の高い事業として注力している。
「環境・ライフライン」は、上下水道や工場向けの樹脂製パイプなどのインフラ資材を扱っている。老朽化した下水道管の更生材の需要が見込まれ、今後の成長ドライバーとして期待される。
「メディカル」では、臨床検査試薬や検査機器を国内外で展開している。検査需要の増加を背景に安定成長を遂げている。
「その他・新規事業」では、研究開発段階のテーマを育成しており、現在はペロブスカイト太陽電池の量産化を重点プロジェクトとして推進している。
2025年3月期は、売上高が1兆2,977億円(前期比3.3%増)、営業利益が1,079億円(同14.4%増)、当期純利益が819億円(同5.1%増)となった。売上・利益ともに過去最高を更新し、3期連続の増収増益を達成した。高機能製品の販売拡大や原材料高騰に対応した価格改定、リフォーム需要の取り込み、為替対応などが業績改善に寄与した。
2026年3月期の業績見通しは、売上高で1兆3,645億円(前期比5.1%増)、営業利益で1,150億円(6.5%増)、当期純利益で820億円(0.1%増)としており、引き続き堅調な成長が見込まれている。米国関税の影響は予想されるものの、原材料の調達先変更などで吸収可能な範囲である。
2024年3月期から開始し2026年3月期に終了する3ヶ年の中期経営計画「Drive 2.0」では、戦略投資枠4,500億円を設定し、そのうち3,000億円をM&A、1,500億円を設備投資に充当する構想を掲げている。注力分野は高機能プラスチックス(モビリティ・エレクトロニクス)とメディカル(ライフサイエンス)であり、先端技術領域への集中投資を進めている。
また、ペロブスカイト太陽電池の事業化は、今後の最大の戦略テーマである。2027年に生産設備の稼働を予定しており、2028年から本格的な商用展開を目指している。国内需要については一定の引き合いが見込まれており、成長余地は大きい。同社は2030年までに売上高2兆円の達成を掲げた長期ビジョンを策定しており、本事業はその実現に向けた中核事業として位置付けられている。
株主還元については、現在の中期計画において「配当性向40%以上」「総還元性向50%以上(D/Eレシオ0.5以下時)」「自己資本配当率(DOE)3%以上」「取得した自己株式は原則消却」を基本方針としている。2025年3月期の年間配当は79円(前期比5円増)とし、15期連続の増配を達成。2026年3月期は年間80円への増配を予定している。自己株式取得については、2025年3月期に400万株・89億円を実施し、取得分は全数消却した。2026年3月期は最大400万株・108億円の自己株式購入枠を設定するなど、株主重視の姿勢がより一層強まっている。
<HM>
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