6. 次世代事業の進捗状況
三井化学<4183>は、成長3分野の周辺事業や外縁事業に対して、サポートを提供し事業開発を加速させるために「次世代事業」という新たな事業ドメインを創り、事業化に取り組んでいる。エネルギーソリューションやメディカルソリューション等4つのテーマが挙げられているが、これに限定されるものではなく、今後も新たなシーズが生まれてくると期待される。計数目標としては、長期経営計画最終年度の2026年3月期において、営業利益250億円を目標としている(次世代事業と、ターゲット3領域における新事業からの営業利益の合計)。
今回、同社はエネルギーソリューションの中の太陽光発電設備の診断事業について紹介した。これは太陽光発電設備の発電性能などについて診断を行い性能評価を行うものだ。顧客は太陽光発電事業者や金融機関などで、資金調達や太陽光発電設備の売買の際の重要な判断材料として活用されている。
同社はこの診断事業の海外展開の一環として、インドにおけるソーラーパネルのBIS認証事業に参入した(2019年8月)。BISとはインドの標準規格を管轄する役所のことで、BIS認証とはインド標準規格にのっとったものかどうかの認証ということだ。インド政府は2022年に太陽光発電によって100GWの発電量を実現する政府目標を掲げている。これに向けて世界各地からインドにソーラーパネルが流入しているが、それらがBISに適合するかどうかを判断し認証を付与するのがインドにおける認証事業だ。これによって実績を積んだ後は、日本同様、発電設備の診断事業につなげることを視野に入れている。
社内に分散するICT関連製品について、横串機能強化によって新事業機会を探索し、収益拡大につなげる
7. ICT関連事業の強化
世の中の大きな流れとしてICTの重要性がますます高まる方向にあることは議論の余地はないであろう。こうしたなかにあって、同社の事業はモビリティなど成長3セグメントと基盤素材の4セグメント、及び次世代事業の5つの分野で構成されており、ICTというのは前面に出てこない。化学業種という区分からも“素材メーカー”というイメージが強く、それもまたICTから遠く離れた存在という連想につながりやすいといえる。
そうした同社ではあるが、ICT関連の製品は数多く有しており、2018年3月期実績ベースでは、ICT関連製品の売上高は前期比7%増となり、営業利益の額は150億円に達した。
同社のICT関連製品は、5つの事業分野に散らばって存在しており、日々の営業活動や研究開発活動も事業セグメントの縦割りの中で行われているのが現状だ。同社はこの点について、今後は横串機能を強化し、既存製品の拡販を目指すほか、新たなニーズに対応した新事業機会を探索することで、収益拡大につなげる方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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