AI Research & Solution事業では、幅広い業種の大企業を中心に研究・開発を通じて個別の業務高度化を実現しており、顧客獲得は大多数がインバウンド型となっている。AI Solutionは「高い継続率」と「積上モデル収益構造」を持つ事業特性を有しており、1年超えの既存顧客の割合は80%、新規顧客は20%。直近はコンタクトセンター領域のAI案件が金融・自動車業界中心に増加しているようで、AI SaaSを複数組み合わせたPKSHA AI Suites for CCをみずほ銀行が全面導入した。自動化に留まらず、有人応対の品質向上や管理業務の高度化までAIに関連する全体設計および開発を支援したようだ。また、駐車場機器メーカーとして画像認識技術を用いたロックレス式駐車場を展開する株式会社アイテックを2019年6月に買収。AI Research & Solutionのモビリティ事業として、2024年9月期上期時点でIoT機器設置車室数14万台、売上高27.6億円と着実に成長を遂げている。
AI SaaS事業では、競争力の高いAI SaaSプロダクトが2,900社以上の企業で稼働している。顧客売上構成比は、上位10社が9%、上位11~50社が17%、残り73%と幅広い企業でAI SaaSが導入されている。特に、コンタクトセンターの知能化領域や労働力人口不足下の業務支援領域において、自然言語処理技術や音声技術を強みにプロダクトを展開しており、中でもPKSHA Chatbot(2022年度市場シェア19.5%)・Voicebot(同31.6%)・FAQ(同57.9%)と、鍵となる3つのプロダクトで市場シェアNo.1のポジションを確率した。
2024年9月期第3四半期累計の売上収益は12,302百万円(前年同期比21.3%増)、調整後EBITDAは3,047百万円(同21.2%増)で着地した。AI Research & Solution、AI SaaSの両事業とも好調に推移しており、AI Research & Solution事業では、生成AI関連の引き合い等からソリューション案件の堅調さが続いた。モビリティ事業においても駐車場運営会社の新規駐車場開設への投資意欲が改善しており、前年同四半期比で駐車場機器の販売が増加したようだ。AI SaaSのARRは年間成長率16.7%で着実に拡大しており64億円に伸びた。通期の売上収益は16,800百万円、調整後EBITDAは3,900百万円を見込んでいる。
同社は、昨今のようにAIが再度大きな注目を集める以前となる2012年に設立された。長年の研究・開発の積み上げによる独自の自然言語処理、画像認識、機械学習/深層学習技術に強みを持っており、日本国内でもトップクラスの顧客との信頼関係や技術力を有している。ビジネスモデルも、AI SaaSで培った顧客基盤に対してAI Solutionで価値提供を重ねる独自のモデルが確立されている。また、潜在規模から考えるとまだAI市場は黎明期という現状で、中でも国内では少子高齢化化進み人口減少が懸念されており、AIによる社会課題解決の重要度が今後さらに増していくだろう。120億円を超える豊富なネットキャッシュを有する中、さらなる成長が期待できるほか、技術革新・ソフトウェアによって課題を解決したいというトレンドをいち早く捉えている同社の今後の動向は最も注目する必要がありそうだ。
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