―汚れた廃プラの輸出入が規制対象に追加、求められる国内での適正処理―
国際的な枠組みである「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」の附属書の一部が2019年9月に改正され、21年1月1日から効力が生じたことに伴い、国内でも「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」の省令改正が行われた。改正のポイントは、すべてのプラスチックの廃棄物が網羅的に規定されることで、汚れた廃プラスチックなど規制対象となるプラスチックを輸出する際には事前に相手国の同意が必要となる。使用済みプラスチックの国内での適正なリサイクルがこれまで以上に求められることになり、関連企業のビジネス機会が一段と増えそうだ。
●環境破壊の深刻化が背景
汚れた廃プラを追加対象にする条約改正案は、19年4月29日から5月10日にかけて開催された第14回締約国会議(COP14)で決議された。背景には海洋汚染など環境破壊が深刻化していることがあり、毎年約800万トンのプラスチックごみが海に流出しているとの試算もある。17年までは世界各国が輸出する廃プラの約6割を中国が受け入れていたが、同年末に中国が輸入規制を導入すると代替地として東南アジアへの輸出が増加。この過程で不適切に処理されたことが環境汚染を引き起こし、その結果として東南アジアでも輸入規制が行われた経緯がある。
実際に規制対象となる廃プラについては、「有害なプラスチックの廃棄物」と「特別の考慮が必要なプラスチックの廃棄物」が規定されているが、具体的にどのようなプラスチックが「特別の考慮」に該当するかは各国の解釈に委ねられている。環境省では20年10月に判断基準を公表し、「飲食物、泥、油などの汚れが付着していない」「プラスチック以外の異物が混入していない」「単一のプラスチック樹脂で構成されている」「リサイクル材料として加工・調整されている」といった条件をすべて満たすもの以外を規制対象とした。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、19年の日本の廃プラ輸出量は約90万トンで、バーゼル条約改正による影響は決して少なくなく、有害廃棄物の削減や国内で適正に処理するための仕組みづくりに一層取り組む必要がある。
●リサイクルの取り組み続々
古河電気工業 <5801> は20年12月、食品や洗剤包装などに使われているリサイクルが困難な積層フィルム(プラスチックごみ)を強化プラスチック材料に再生する技術を開発したことを明らかにした。この技術を用いて、日本テトラパック(東京都千代田区)及びゼブラ(東京都新宿区)とボールペンを製造。今後は文具・家電・電化製品・自動車部品など用途拡大に取り組む。
東洋インキSCホールディングス <4634> と伊藤忠商事 <8001> は同年12月、複層フィルム包材のマテリアルリサイクル技術(ごみを製品原料として再利用することを主眼としたリサイクル手法)の協業展開で合意。両社の技術とネットワークを生かし、22年までに世界初となる高品質マテリアルリサイクル実用化を目指す。
双日 <2768> や花王 <4452> などは11月、環境省が実施する「サーキュラーエコノミー都市実現に向けた低炭素型マテリアルリサイクルモデル構築調査事業」の実施団体に採択されている川崎市と調査に関わる委託契約を締結。資源循環及び二酸化炭素の排出抑制に向け、コスト採算性のある廃プラのリサイクルシステム構築やシステム運用による低炭素化の効果について実証に取り組むという。
リンテック <7966> は11月、使用済みプラスチックの再資源化技術の開発などを手掛けるアールプラスジャパン(東京都港区)に出資した。アールプラスジャパンは、サントリーMONOZUKURIエキスパート(東京都港区)やアサヒグループホールディングス <2502> 、東洋紡 <3101> 、レンゴー <3941> 、東洋製罐グループホールディングス <5901> 、ホッカンホールディングス <5902> 、凸版印刷 <7911> 、大日本印刷 <7912> 、フジシールインターナショナル <7864> 、岩谷産業 <8088> などの共同出資会社として6月から事業を開始し、27年までに再資源化技術を実用化するとしている。
このほかでは、プラスチックのリサイクルを手掛けるサニックス <4651> に注目したい。同社は全国15ヵ所の工場から排出される廃プラを加工して燃料化し、サニックスエナジー苫小牧発電所などで発電用燃料として使用。施設は1日あたり最大300トンの処理能力を持ち、さまざまなプラスチックを処理することができる。
また、資源リサイクル大手のエンビプロ・ホールディングス <5698> は19年にグループのエコネコルがプラスチックごみ問題に対応する亜臨界融合技術・装置を導入した新工場を開設しており、関連銘柄として要マーク。廃プラを湿式選別するシステムを展開する巴工業 <6309> 、プラスチック成形機メーカーがプロデュースするリサイクル装置を扱うプラコー <6347> [JQ]、海洋プラスチックごみを主原料としたリサイクルナイロンをアパレル・ファッション業界向けに提供しているリファインバース <6531> [東証M]に今後スポットが当たる場面もありそうだ。
●廃ペットボトル滞留懸念も
バーゼル条約改正は環境を汚染する可能性がある廃プラの輸出を完全に禁止するものではないが、相手国が簡単に輸入を認めることは考えにくく、廃ペットボトルなどの国内滞留が懸念される。
こうしたなか、キリンホールディングス <2503> と三菱ケミカルホールディングス <4188> は昨年12月から、ケミカルリサイクル(廃ペットボトルを選別、粉砕、洗浄して汚れや異物を取り除いたうえで化学分解処理を行い、中間原料まで分解・精製したものを再びペットに合成する方法)によるペットの再資源化に向けた技術検討と実用化を目指すプロジェクトをスタート。セブン&アイ・ホールディングス <3382> と三井物産 <8031> 、ヴェオリア・ジャパン(東京都港区)の3社は10月下旬に、ペットボトルリサイクルを手掛ける合弁会社設立で合意し、22年の工場稼働を予定している。
また、DIC <4631> は12月、回収ペットボトルを原料とする軟包装材用ドライラミネート接着剤「ディックドライ LX-RPシリーズ」を開発したと発表。豊田通商 <8015> が中央倉庫 <9319> などと共同で7月に設立した豊通ペットリサイクルシステムズは、22年から廃ペットボトルの再資源化事業を開始する計画だ。
株探ニュース
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