14日の米株式市場でダウ平均は331.58ドル高(+0.95%)と3日ぶり反発、ナスダック総合指数は+0.81%と続伸。中国人民銀行が利下げを決定したほか、8月小売売上高が予想を上回ったため、世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まった。欧州中央銀行(ECB)は追加利上げを決定も利上げサイクル終了期待が相場を支援した。欧米株の上昇を引き継いで日経平均は260.34円高からスタート。為替の円安基調や時間外取引の米株価指数先物の大幅高を追い風に、景気敏感株を中心にハイテク株まで幅広く買われるなか、序盤からじわじわと上値を伸ばし、前場終盤頃には33634.31円(466.21円高)まで上昇した。
個別では、年初来高値を更新した原油市況を追い風にENEOS<5020>の石油・石炭製品、INPEX<1605>の鉱業が大幅に上昇。東京電力HD<9501>の電気・ガス、中越パルプ工業<3877>のパルプ・紙、野村<8604>の証券・商品先物取引、郵船<9101>の海運、UACJ<5741>の非鉄金属などバリュー(割安)系が引き続き全般高い。円安を支援材料に豊田自動織機<6201>、マツダ<7261>の輸送用機器が軒並み高となり、アイシン<7259>は前日の中期経営計画が引き続き材料視された。清水建設<1803>、三菱地所<8802>の建設や不動産も高い。他にも商社株が属する卸売や銀行・保険、鉄鋼など景気敏感セクターが軒並み強い動きを見せている。業績関連の材料ではANYCOLOR<5032>、TOKYO BASE<3415>、ニーズウェル<3992>が大幅に上昇。
一方、原油市況の上昇でコスト高が懸念されたかJAL<9201>、ANAHD<9202>の空運のほか、小売りが軟調。業績関連のリリースが失望されたポールHD<3657>、Link-U<
4446>、ブラス<2424>、Hamee<3134>が急落し、好決算も出尽くし感が先行したギフトHD<9279>は大幅安となり、MSOL<7033>はストップ安まで売られた。
セクターでは石油・石炭製品、鉱業、電気・ガスを筆頭にほぼ全面高となり、空運と小売りのみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄が全体の72%、対して値下がり銘柄は25%となっている。
日経平均は33500円台を回復し、8月1日の33488.77円、9月7日の33322.45円を超えてきた。上値切り下げトレンドを脱したことで、先高観が強まる状況となっている。為替の円安基調に加えて、世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待が
「世界の景気敏感株」と称される日本株の追い風になっている。
前日に発表された米8月卸売物価指数(PPI)は、総合が前年同月比+1.6%と市場予想(+1.3%)を上回り、7月(+0.8%)から加速。モメンタムを示す前月比も+0.7%と予想(+0.4%)を上回り、7月(+0.3%)から大幅に加速した。一方、食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比および前月比ともに予想に一致し、前年同月比の鈍化トレンドが続いたことで金融引き締めに対する懸念は強まっていない。
米8月小売売上高は前月比+0.6%と予想(+0.1%)を大幅に超過、自動車とガソリンを除くベースでも同+0.2%と予想(-0.1%)に反して加速した。ただ、7月分および6月分が下方修正されたほか、食料品店や百貨店など前月から鈍化した項目も多く、こちらも金融引き締め懸念を強めるほどの内容とは捉えられなかった。
投資家は米国経済の堅調さとインフレ鈍化を同時に確認できたものとして総じてポジティブに捉えているようだ。また、前日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会が開催され、直前になり急速に高まった市場の利上げ予想の通り、0.25ポイントの利上げが決定された。しかし、こちらもECBが経済見通しの軟化を示唆したことで、大半の投資家は今会合での利上げが最後になったとの見方を強めたようで、相場はむしろポジティブに捉えている。
さらには、景気の低迷長期化が懸念されている中国で14日、中国人民銀行(中央銀行)が今年2回目となる預金準備率の引き下げを発表したことで、中国経済の景気後退懸念も和らいだ。
結果として、昨日にかけて米国や欧州、中国で確認された一連の出来事はすべて景気後退やインフレ・金融引き締めに対する懸念を和らげる、株式市場にとってポジティブな材料として消化された。
ただ、今晩の米国市場は株価指数および個別株の先物・オプション取引の4つの取引の決済日が集中する「クアドラプル・ウィッチング」、すなわち米国版のメジャーSQ(特別清算指数)に当たる。この日を境に需給が転換することが多く、来週以降の株式市場の動きには注意したい。振り返ってみれば米消費者物価指数(CPI)も米卸売物価指数(PPI)も総じて上振れ気味の結果であった。米長期金利も高止まりしており、来週以降に再び金利高・株安の局面が訪れる可能性は捨てきれない。
一方、先週末のメジャーSQ日に日経平均がSQ値を上回れなかったことで「幻のSQ」を演出し、先高観が後退していた日本株は今週末になって上値切り下げトレンドを脱し、SQ値も大幅に上回ってきた。これにより一気に先高観が急速に強まっている。クアドラプル・ウィッチング以降の米国株の動向には要注意だが、金利上昇局面は円安も含めて割安株の多い日本株には相対的に追い風になりやすいとみられ、世界株対比での日本株の底堅さはこの先も続きそうだ。
(仲村幸浩)
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