2. 各セグメントの業績
(1) 5Gインフラ支援事業
売上高は前期比4.7%増の9,932百万円、セグメント利益は同9.3%増の1,506百万円となった。MVNO向け支援事業(NVNE)の拡大が業績の伸びに寄与した。モバイル回線網においては、大手モバイル通信キャリアによる格安プランの提供などが同社顧客となるMVNOサービス事業者にネガティブな影響を及ぼしているものの、IoTやインバウンド向けを含む、モバイル市場全体の成長は続いている。特に付加価値の高い「freebit MVNO Pack」(データ+SMS+音声のパッケージ販売)が順調に伸びており、契約単価の向上にも寄与している。また、法人向けICTパッケージとして2023年9月からスタートした新サービス「どこでもIP」についても、既に300社超の契約を獲得しており、業績寄与はまだ小さいながらも大きく伸びてきた。固定網サービス(ISP事業者支援サービス)については、サービス利用の減少やネットワーク原価の上昇により厳しい状況が続いているようだ。
利益面については、人材強化に伴う人件費増(180百万円増)などがあったものの、利益率の高いMVNO向け支援サービスの伸びでカバーし増益を確保した。セグメント利益率も15.2%(前期は14.5%)に改善している。戦略投資については、引き続き5Gデータセンター整備やデータ関連プロジェクトなどに合計301百万円(前期は合計300百万円)を投入した。ただ、予定していた5Gデータセンター移設費用の一部(約2億円)については2025年4月期に持ち越しとなっている。
(2) 5G生活様式支援事業
売上高は前期比14.4%増の26,612百万円(決算期変更影響を除くと同7.0%増の24,880百万円)、セグメント利益は同62.8%増の3,319百万円(決算期変更影響を除くと同43.3%増の2,921百万円)となった。売上高は、集合住宅向けISPサービスの提供戸数の拡大により「5G Homestyle」が順調に伸びた。2024年4月末の提供戸数は累計120.9万戸(2023年3月期末比15.7万戸増)と120万戸を突破した。建物の資産価値や入居率の向上を目的とした高速ブロードバンド環境が標準化している事業環境を踏まえ、今後もより高速なインターネット接続サービスの推進を継続するほか、新規プロダクトの開発※、新規市場の開拓(多目的施設や戸建住宅向けなど)にも取り組む方針だ。「5G Lifestyle」については、固定網サービスの利用は減少傾向にあるものの、新端末発売に関わる一時費用の減少及び店舗展開費用の圧縮等により「トーンモバイル」の利益改善が進んだ。
※クラウド型防犯カメラや防犯・防災・見守り機能を搭載した次世代街灯「Secual Smart Pole」のほか、EV充電インフラ事業を展開するTerra Charge(株)との業務提携などに取り組んだ。
利益面については、戦略投資を継続するなかでも「5G Homestyle」の伸びや「トーンモバイル」の利益改善により大幅な増益を実現した。戦略投資については顧客獲得費用のほか、新領域及びweb3(ブロックチェーン)関係の開発費用、「LIVINGTOWN みなとみらい」プロジェクト関連費用などに合計524百万円(前期は合計769百万円)を投入した。
活動面では、5G/web3時代を見据えたサービス提供※1のほか、web3によるステークホルダーコミュニティ実証実験「One Vision」※2や、これまで培ってきた技術やサービスを、IoTをはじめとする他分野へ展開する「TONE IN」戦略※3を開始した。
※1 例えば、AIで家族を見守る「TONEあんしんAI」を搭載した家族向け見守りサービス「TONEファミリー」などが含まれるが、今後さらに、スマートフォン上で動作する「エッジ型LLMによる生成AIシステム」である「freebit Edge LLM」を開始し、「TONEファミリー」と連携させることで、AIが子供のSNS利用の危険度を判断するサービスも予定している。
※2 2023年12月8日に発表したもので、「SiLK VISION 2027」での5G/web3の社会実装に向けた取り組みの1つである。
※3 「TONE IN」戦略の第1弾として、「トーンモバイル」が利用できる対象端末を拡張し、docomoが取り扱うAndroid/iPhone端末(94種類以上)において専用SIMを挿入するだけで「トーンモバイル」が使用可能となった。
(3) 企業・クリエイター5G DX支援事業
売上高は前期比14.4%増の19,278百万円、セグメント利益は同82.7%増の1,104百万円となった。広告需要が回復傾向にあるなかで、海外顧客をはじめとした新規顧客獲得によりアフィリエイト広告サービスなどが好調に推移した。
利益面でも、注力ジャンル(クリエイター向けプラットフォーム等)の強化及びアフィリエイト広告サービスの伸びのほか、グループ内リソース最適化、広告効率の改善などにより大幅な増益を実現した。
活動面では、これまで培ってきたインターネットマーケティングのノウハウを生かした取り組み※1や、中長期的な成長のための新規事業※2に注力し一定の成果を上げることができた。
※1 1st Party Dataを活用したデジタルマーケティング支援ツール「Beyocon(ビヨコン)」における利便性向上など。
※2 クリエイター向けプラットフォーム「StandAlone」によるクリエイターエコノミーの拡大やクリエイターのためのNFT発行支援サービスの提供など。
3. 2024年4月期の総括
2024年4月期を総括すると、市場環境にはプラス・マイナスの様々な動きがあるなかで、3つの事業がバランスよく伸長し、計画を上回る業績を実現したことに加え、将来に向けた取り組みも順調に進捗しており、「SiLK VISION 2024」の締めくくりとして十分に成果を残すことができたと評価できる。特に、将来に向けた戦略投資と足元業績の伸びを両立させ、短期と中長期の両方を見据えた多方面での展開は、同社グループ経営の真骨頂と言えるだろう。また、5G/web3 領域における事業の方向性が各方面で見えてきたことはもちろん、「TONE IN」戦略や「One Vision」などを通じて、事業拡大に向けた可能性の一端を示したところも注目すべきポイントと捉えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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