2. 事業部門別売上見通し
(1) 学園ソリューション事業
学園ソリューション事業は3期ぶりの増収を見込んでいる。問い合わせや引き合い件数そのものはコロナ禍以前よりも多いことから、これら案件をいかに早期に受注・納品できるかが増収のカギを握ることになる。既に前下期には前年同期比で5.3%増と増収に転じるなど底を打っているほか、大型の仕掛案件も抱えていることから、増収は可能と見られる。また、次世代学園総合情報システム「CampusPlan Smart」については、新規顧客の獲得だけでなく既存顧客のパッケージ製品からのリプレイス提案も進めており、順次置き換えを進めていきたい考えだ。
「キャンパスプラン」の大きな特長は、学務系業務や法人系業務などをトータルで提供できる点にある。領域ごと(例えば会計・経理や人事、学務などの領域)では強い競合製品がそれぞれ存在するものの、異なる企業のソフトウェア製品を導入している場合はシステム操作に慣れるまで時間を要するといった課題がある。すべての業務システムを同一製品で網羅できれば、職員が他部署に異動となった場合でもスムーズにシステム操作でき、業務効率の向上にもつながり、同社製品を導入する際の長所となっている。「CampusPlan Smart」についても、全機能の開発が完了したことで新規受注獲得の機会も今後は増えていくものと期待される。
大学向け以外では、私立高校や専門学校向けでの顧客開拓も進めていく。私立高校は全国に約1,300校、専門学校は約2,900校あり、そのうち同社製品は約150校に導入されていると見られる。導入シェアで見ると数%とわずかだが、逆にシェア拡大余地が大きいと見ることもできる。私立高校・専門学校の1校当たり生徒数※は、高校で約770名、専門学校で約220名と、大学の約3,500名と比べて規模が小さいため、初期投資負担の少ないクラウドサービス「キャンパスプラン for Azure」で機能性やコストパフォーマンスを訴求し、シェアを拡大していく戦略だ。1校当たりの売上規模は大学と比べて小さいものの、導入校数を積み上げていくことで中長期的に収益貢献するものと予想される。
※文部科学省「学校基本調査」(令和4年度)のデータを基に算出。
(2) ウェルネスソリューション事業
ウェルネスソリューション事業は6期振りの増収に転じる見通し。コロナ禍の影響がほぼ一巡し、フィットネスクラブ事業者や文化・観光施設の投資再開が見込まれる。フィットネスクラブ等では主力顧客である「カーブス」向けの受注が回復してきたほか、小規模事業者向けをターゲットとした「Smart Hello」の導入件数増加が増収要因となる。一方、文化・観光施設向けでは2022年11月にリリースした「Smart Helloチケット」の拡販に注力する方針で、既に既存顧客向けに導入提案を開始した。同製品については、初期負担のかからないクラウドサービスとして廉価な月額利用料で利用できることから、顧客層の広がりも期待される。
(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は前期比10%強の増収を見込んでいる。高校向けでは新たに富山県での導入が進んでおり、増収要因となる。今後は、統合型校務支援システムが未導入の自治体での受注を獲得していくほか、更新案件の取り込みに注力することでシェア拡大を図り、増収を継続することになる。また、「Home services」についても拡販を進めていくが、機能の改良など含めてまだしばらく時間を要するものと見られる。
(4) 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業は前期比2ケタ減収となる見通し。前述したように特需が剥落する影響が大きく、2023年10月期は端境期に当たる。同社では「PPP」の落ち込みをカバーするため、2021年3月にリリースした「Common財務会計システム」の拡販に取り組んでいるが、本格的に導入が進む時期としては早くて1年後になると見ている。
「Common財務会計システム」では、地方公共団体が行う「歳入歳出決算」「地方財政状況調査(決算統計)」「統一的な基準による財務書類」の3つの決算を一元管理することで早期の決算確定が可能となるほか、予算編成の際にPDCAサイクルを実現する各種分析ツールを標準装備するなど、決算処理や予算編成の業務省力化・効率化を支援するシステムとなっていることが特長となっている。既存製品にはない先進的な考え方を取り入れた製品となっており、競争力は十分あると考えられる。自治体の財務会計システムとしては導入実績がまだないため、採用までに時間を要しているが、まずは「PPP」の導入ユーザーに提案し、他社からの切り替えを進めていく戦略となっている。「PPP」の自治体導入シェアが50%超と高いことや、今後公会計で必要となりそうな先進的な機能が実装されていることから、将来的に導入件数が広がり収益貢献する可能性は十分あると弊社では見ている。特に、今後は行政システムを統一化する動きがあることから、その候補品の1つとして同社製品も取り上げられる可能性は高く、事業拡大の好機になると考えられる。
(5) ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業は前期比10%強の増収を見込んでいる。コンプライアンスやコーポレートガバナンスの強化に取り組む動きが、一般企業だけでなく金融機関や学校法人、医療法人、公益法人などにも広がっていることから、2023年10月期も売上高は順調に拡大する見通しだ。
(6) 薬局ソリューション事業
薬局ソリューション事業についても、オンライン資格確認システム導入案件の増加により増収が続く見通しとなっている。ただ、これは特需的な売上げとなるため、薬局への導入が一巡すれば減少要因となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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