3. 計数目標(修正後)
既述のとおり、コロナ禍の長期化や市場開拓の遅れ等により、最終年度である2024年3月期の計数目標を下方修正した。具体的には、売上高を12,200百万円から11,500百万円、営業利益を1,370百万円から900百万円、当期純利益を1,000百万円から650百万円、ROEを8.4%から5.9%、DOEを4.5%から4.6%、1株当たり配当金を70円から68円にそれぞれ修正している。一方、投資計画については変更なく、3年間で総額29億円を予定している。そのうち約60%を研究開発費が占めるが、引き続き、成長分野である「クラウドサービス」への開発投資額が大きい。各事業の計数目標(修正後)とその考え方については以下のとおりである。
a) プロダクトサービス
サービス提供型事業の推進等により、ストック売上高の比率を引き上げるとともに、高い利益率を維持していく方向性である。2022年3月期決算の状況等を踏まえ、最終年度の売上高を4,200百万円から4,388百万円に上方修正した一方、既存製品のサービス化の遅れやクラウドシフトへの転換ニーズの対応不足等を勘案し、セグメント利益を1,120百万円から900百万円に下方修正した。
b) クラウドサービス
売上高は、「IT活用クラウド事業」「事業推進クラウド事業」「ソーシャルクラウド事業」の3つのカテゴリがそれぞれ伸長するが、とりわけ当期間においては「事業推進クラウド事業」の伸びが成長をけん引する。損益面でも、増収により先行投資をまかないながら、利益率の段階的な改善を図っていく方向性である。ただ、事業推進クラウド事業において新たな市場開拓に時間を要していることや、コロナ禍による影響が長期化しているソーシャルクラウド事業の本格的な事業展開の遅れから、最終年度の売上高を4,200百万円から3,670百万円、セグメント利益を310百万円から165百万円に下方修正した。
c) プロフェッショナルサービス
プロダクト及びクラウドサービスとの連携や、コンサルティングからシステム構築、アウトソーシングまでのトータル提案により、顧客のDX化への貢献を通じて事業拡大を目指す。損益面でも、データ活用に係るコンサルティング等を活かした付加価値向上により、利益率の改善につなげていく方向性である。ただ、トータル提案体制や高収益モデルへのシフトの遅れなどを勘案し、最終年度の売上高を3,800百万円から3,442百万円、セグメント利益を320百万円から215百万円に下方修正した。
4. 弊社アナリストによる注目点
弊社でも、DX推進などの動きが本格化する一方、企業のIT人材不足が顕在化するなかで、これまでのIT課題だけでなく、事業課題や社会課題にまで領域を拡げるとともに、ワンストップソリューション体制の提供により、需要の拡大を取り込んでいく方向性は、持続的な成長を実現していくうえでも理にかなっていると評価している。コロナ禍の長期化による影響もあり、新たな市場の開拓に時間を要しているものの、見込み案件は増加傾向にあることから、1つひとつ実績を積み上げていくことが今後の事業拡大につながるものと見ている。これまでのWebマーケティングによる新規開拓に加え、グループの顧客基盤の活用やパートナー企業との協業を通じた複合的なチャネル強化に期待したい。また、ソーシャルクラウド事業については、データを集めるところにこそ将来の優位性や参入障壁が確立されるビジネスモデルであるため、本格的な収益化にはさらに中長期の目線が必要になるだろう。いずれにしても、安定した収益源であるメインフレーム事業がキャッシュカウとしての役割を担っている間に、次の収益の柱を育て上げ、強固な収益基盤の維持・向上を図っていくことが中長期の最大のテーマであることは明らかであり、そういった視点から、今後の動向に注目する必要があろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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