d) 人材を育成・確保する
若手人材に対しては、新たな経験を積ませ、仕事を通して自己実現を図り、より高い成果を出せる人材とするための教育やローテーションを実施する。中堅人材に対しては、プロジェクトマネジメント力を高めるOJT教育に注力するとともに、より得意な分野を生かすための教育やローテーションを組織横断的に実施することで、多様な人材が活躍できるようにする。またDX人材についても、デジタル技術やビジネススキルを身につける取り組みや、DXリテラシー教育などを実施する。これらに加え、採用活動も積極的に実施し、日本人、外国人など国籍に関係なく、高度な技術力やマネジメント能力を持っている必要な人材を引き続き確保する。
具体的には、若手人材(社歴5年以内)を集め、社内ラボ型プロジェクトチーム(約20名)を編成し、新人を含め若手人材にシステム設計の実践の場を提供している。また、社員が自主的に、AIについて学ぶワーキングチームを立上げるなど、草の根的な学びが進んでいる。
あらゆる業界でDXが進展するなか、顧客企業では、自らIT/DX人材を育成し、デジタル技術を活用したシステム開発を内製化しようとしている。同社にとっては大きな脅威であり、既存のIT技術だけでは生き残れない時代がきている。既存IT技術に一層磨きをかけ、AIなどの先進的IT技術を早急に獲得し、専門性のある業務知識・ノウハウと最先端IT技術を兼ね備えたエキスパートエンジニア集団を形成するのが急務となっている。
e) 働きがいのある環境を作る
社会的課題である少子高齢化対策、長時間労働の是正、ダイバーシティ推進にもつながる「働き方改革」により一層取り組み、働きやすい職場環境作りを進めるとともに、外国人、女性、障がい者、シニアを含むあらゆる人が働きがいを感じ、活躍できる環境作りを推進する。
「特別一時金支給」は、5年前の苦難の時代及びコロナ禍を乗り越えてくれた全社員の頑張りに感謝の意を込めて支給した。また、「女性活躍社会」については、女性管理職比率2025年目標15%を掲げ、具体的には「イチゴアクション」(イチゴ=15%)を実施中である。ちなみに、同社には6つの事業部、本部があるが、そのうちの1つに女性の事業部長が2023年4月に初めて誕生した。
また、より働きがいのある誇りの持てる企業グループを目指すうえでも、世界的に国際目標として推進されているSDGsなどへの取り組みも行い、社会課題の解決につながるソリューション開発を推進することなども含め、同社グループ全体として持続的成長が可能な社会の実現に向けて積極的に取り組む方針である。
3. 第8次中期経営計画の策定
(1) 新コーポレートスローガンの制定と企業ビジョン体系の再構築
第7次中期経営計画では経営目標を上回る成果が上げられた。今回新たに第8次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)を策定し、今年4月にスタートした。
第8次中期経営計画策定に先立ち、企業理念、企業ビジョン、行動理念を見直し、創業者理念として使われてきた「カスタマーファースト」を行動理念に再定義するとともに、従業員にとってより理解のしやすい指標となるよう、コーポレートスローガンを「Design for the future 〜人とデジタル技術でより良い社会を実現する〜」と新たに策定した。「人とデジタル技術」とすることで、デジタル技術を適用すべきところと人がサービスを提供すべきところを見極め、適切で最適なサービスを提供する思いを込めた。
新コーポレートスローガンは、社員と企業のエンゲージメントであり、社員と企業の一体化を図るものである。企業理念、企業ビジョン、行動理念とともに、全社員で共有化を図るため、基本デザインは社員から公募し、社員証とともに携帯できるようリーフレットを配布し、社員一人ひとりがいつでもどこでも身近に見られるようにした。
今後は、組織や個人の目標管理につなげて社員一人ひとりの意識改革・行動改革につなげていく予定である。
今回は、地球規模で拡がりを見せるサステナビリティ(SGDs)を強く意識して、全社目標を共有化し、第8次中期経営計画を策定した。
(2) 中期スローガンと中期ビジョン
・中期スローガン … ONE sdc:ステークホルダーとともに新たなステージへ
・中期ビジョン …「安定的収益を拡大する」、「社会の持続的な成長に貢献する」
(3) 5つの中期基本方針
第7次中計から継続するもの、新たに加えるものを整理して、5つの中期基本方針を定めた。
1) 成長事業を拡大する
2) 新たな収益基盤を確立する
3) コンプライアンスを徹底する
4) 社員の働きがいを高める
5) SDGsを推進する
特に注目すべき施策は、「ファシリティ統合センター構想」、「IT人材確保・育成」、「サステナビリティ/SDGs」となる。
「ファシリティ統合センター構想」は、現在検討中であるが、既存ファシリティ3センター(代田橋、八王子、横浜)を再編し、大規模なファシリティセンターへ集約・統合するものである。統合センターの実現によって、アウトソーシング事業の大幅な収益改善が期待される。
「IT人材の確保・育成」では、賃金体系の抜本的見直しを計画しており、優秀な人材確保はもちろんのこと、現役社員のリテンション対策につなげていく。IT業界はもともとエンジニアの流動性が高いが、コロナ禍後は一層流動性が高まると、同社では危機感を持っているためである。
「サステナビリティ/SDGs」では、第7次中期経営計画において実現した社員の「働きがいのある環境を作る」取り組みを継続するとともに、障がい者の就労支援など、地域への貢献も進めていく。
また、同社は膨大なエネルギーを消費するデータセンターなどの施設を保有していないため、二酸化炭素(CO2)の排出は僅少であるが、データーエントリー事業における伝票の自動車配送をデータ伝送に切替えたり、川崎市のグリーンボンド投資などにより自治体の二酸化炭素排出量実質ゼロの達成等に向けた取り組みを支援している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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