14日の米株式市場でダウ平均は156.66ドル安(-0.45%)と3日ぶり反落。米1月消費者物価指数(CPI)が前年比で予想を上回ったため、金利上昇に伴う株式売りで始まった。米連邦準備制度理事会(FRB)高官が根強いインフレの制御のためには事前に想定されていた以上の利上げが必要になる可能性に言及したこともあり、利上げ長期化懸念も重しとなった。一方、ハイテク株には押し目買いも入り、底堅く推移してプラス圏を回復、ナスダック総合指数は+0.57%と続伸した。為替の円安進行も追い風に日経平均は83.24円高からスタート。しかし、米CPIの上振れや米長期金利の上昇が警戒される中、寄り付き直後から伸び悩んだ。前場中ごろからはアジア市況の下落や時間外取引のナスダック100先物の軟化、円安の一服などを背景に失速。前引けにかけて
27500円を割り込む展開となった。
個別では、日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>が連日で昨年来高値を更新。為替の円安を受けてSUBARU<7270>、マツダ<7261>、三菱自<7211>などが高い。三井住友<8316>、みずほ<8411>の銀行、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>、東京海上<8766>の保険など金融関連も総じて堅調。決算が好感されたところでRobot Home<1435>、FFJ<7092>、チェンジ<3962>、ギフティ<4449>、堀場製作所<6856>、日ペHD<4612>などが急伸。決算発表を延期していたツバキ・ナカシマ<6464>は業績予想の大幅下方修正を発表し悪材料出尽くし感から大幅反発。モバイル事業の底入れ感が意識された楽天グループ<4755>、今期見通しが好感されたクボタ<6326>、今期配当水準の維持が安心感を誘ったJT<2914>なども大きく上昇。
一方、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、日本電産<
6594>、村田製<6981>、HOYA<7741>、イビデン<4062>などのハイテク株が軟調。ベイカレント<6532>、エムスリー<2413>、マネーフォワード<3994>、ラクスル<4384>、Sansan<4443>などのグロース株も安い。決算関連ではソースネクスト<4344>、エムアップHD
<3661>、ブイキューブ<3681>、インフォマート<2492>、オプティム<3694>、メック<4971>などが失望感を誘い、急落している。
セクターでは精密機器、サービス、倉庫・運輸が下落率上位となった一方、保険、銀行、鉄鋼が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の62%、対して値上がり銘柄は33%となっている。
前日発表された米1月消費者物価指数(CPI)は総合で前年比+6.4%(12月:+6.5%)と小幅に鈍化も、予想(+6.2%)を上回った。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+5.6%(前月:+5.7%)と僅かに鈍化も、予想(+5.5%)を上振れた。前月比では総合で+0.5%と予想(+0.5%)に一致も12月(+0.1%)からは加速。コア指数も前月比+0.4%と予想(+0.4%)一致にとどまったが、12月(+0.4%)と同様に加速が続き、モメンタムの鈍化は確認されなかった。
家賃などから構成され、CPIの約3分の1と最大の割合を占める住居費が前月比+0.7%(12月:+0.8%)となり、引き続きCPIの加速に寄与した。ただ、住居費より1年程先行する傾向のある米国の住宅価格指数は昨年4月頃にピークを打っているため、住居費の鈍化も時間の問題だろう。
一方、これまでCPI総合の鈍化に寄与してきたエネルギー価格が前月比+2.0%(12月:-3.1%)と3カ月ぶりに加速に転換。食料品も前月比+0.5%(12月:+0.4%)
とモメンタムに鈍化の兆しが見られず、インフレ懸念がくすぶる内容となった。サービス分野のインフレも、遅行性のある住居費が鈍化すれば問題解決かというと、そう簡単な話でもなさそうだ。家賃を除いたサービス価格は前月比+0.6%(12月:+0.6%)、また、大幅な減速が続いている医療ケアサービスを除いた場合のサービス価格も前月比+0.8%(12月:+0.7%)と、それぞれ鈍化の兆しが見られていない。
また、警戒されていた中古車価格は今回の1月CPIではむしろ減速となったわけだが、それにもかかわらず指標が全体的に上振れ傾向となったことはネガティブに捉えられる。このため、2月分以降への警戒感はくすぶることになろう。
次回の3月21-22日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までの間に、米雇用統計と米CPIをそれぞれもう一回分確認することができるため、それまでは神経質な地合いが続くと想定しておいた方がよさそうだ。
他方、今週もまだ重要な予定が控えている。今晩の米国市場では、米1月の小売売上高と鉱工業生産が発表される。ともに前回の12月分は前月比でマイナス、市場予想を下振れたことで昨年末にかけては景気後退懸念が強まる経緯があった。今回はどちらも前月比でプラスへの回帰が予想されているが、年始から過度な景気後退懸念は既に和らいできているため、今回の指標のプラス回帰が景気動向に関して投資家心理に与える影響は小さいだろう。むしろ、景気の底堅さが意識されれば、利上げ長期化の思惑を強める可能性があるため、注意しておきたい。
さらに、16日にはCPIより先行性の高い米卸売物価指数(PPI)の1月分が発表される。PPIの結果を受けて改めてインフレ鈍化一服が意識される展開も想定しておいた方がよいだろう。
(仲村幸浩)
<AK>
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