エムアップ<3661>の基本戦略は、ファンクラブサイトを起点としてロイヤリティの高い会員基盤の拡大を図るとともに、関連するコンテンツやeコマース事業とのシナジー効果を高めるところにある。特に、ファンクラブサイトを通じたeコマース事業は、ニッチ市場でありながらコアなファン層へ直接リーチする新しい販売チャネルとして、同社の成長をけん引する可能性が高い。また、IT環境の進化や嗜好の変化等を背景として、これまでのノウハウや会員基盤を生かしつつ、新規事業への展開も図っていく方針であり、今回のVR事業の立ち上げや電子チケット事業への参入もその一環として位置付けられる。
同社は、今後の事業戦略のポイントとして、1)基盤強化の継続、2)事業シナジーの追求、3)積極的な事業投資による成長加速を挙げている。具体的には、強力IPの獲得に向けた活動(基盤強化)を継続するとともに、IPと動画配信ノウハウを生かした独自のVR事業の展開、並びにIPとアプリの組み合わせによる公式アプリ展開(ファンメールを含む)といった事業シナジーの追求を目論む。また、電子チケットサービスを同社のファンクラブサイトやVRライブ事業へ導入するととともに、他社アプリへのOEM供給、チケットトレードセンター機能を活かした2次流通市場の創出など、成長加速に向けた新規事業投資にも積極的に取り組む方針である。
弊社でも、市場拡大が期待されるVR事業や電子チケット事業への参入が、中長期的な成長加速に結び付く可能性が高いと評価している。特に、VR事業については、同社ならではのIP獲得やVR体験の提供のほか、課金ポイント(マネタイズ)の巧拙が成功のカギを握るだろう。また、電子チケット事業についても、デファクトスタンダードと成り得る事業モデルとしての優位性はもちろん、単なる電子チケット販売にとどまらず、クラウドシステムでの会員の囲い込みによるクロスセル(他のアーティストのチケットやグッズ販売、各種VR体験等)や、2次流通市場の創出に向けたイニシアティブの発揮など、様々な可能性を秘めていることから、今後の展開やそのスピードに注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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