【QAあり】デジタルグリッド、通期業績は計画大幅上振れで着地 蓄電池事業への投資強化で収益基盤拡大を図る
決算ハイライト | 通期業績

豊田祐介氏(以下、豊田):みなさま、こんにちは。デジタルグリッド代表取締役社長CEOの豊田です。本日は、2025年7月期の通期決算についてご説明します。どうぞよろしくお願いします。
まずは決算のハイライトです。今期の売上高は61億5,300万円、営業利益は27億4,200万円となり、前期から大幅に進捗しました。この要因は、本業であるプラットフォーム事業が大幅に拡大したことにあります。
契約容量は前期比プラス29.4パーセントとなり、ついに1ギガワットを超える規模にまで積み上がりました。
他方で、2022年と比べると電力価格はやや落ち着きを見せ、競争環境も従来の状況に戻りつつあります。後ほど詳細をご説明しますが、特に第3四半期以降は単価が安定し、第4四半期のプラットフォーム利用料は前年同期比14.4パーセントの増加となっています。
2026年7月期の計画については、売上高は前期比プラス2.1パーセントの微増、営業利益は前期比マイナス13.8パーセントの減益を見込んでいます。この背景としては、単価が通常モードに落ち着くことを想定しているためです。
一方で、当社が開示している非財務KPIの1つである取扱電力量、つまりお客さまの参加料については、増加を計画しています。
これだけを見ると、投資家のみなさまにとっては少し物足りない印象があるかもしれません。しかし、我々としてはすでに手を打っている部分もありますので、新中期経営計画と併せてご説明します。
なお、本日1対6の株式分割を実施し、その内容も開示していることをこの場でご報告します。
中期経営計画

中期経営計画では、ROE、営業利益率、プラットフォーム事業における総取扱電力量、さらに第3の柱とする系統用蓄電池の事業(調整力事業)への投資額を定量的なKPIとして掲げています。
戦略としては3点あります。先ほど単価についてもお話ししたように、プラットフォーム事業はまだまだ成長途上にありますので、加速度的な成長を実現していきたいと考えています。
次に、再エネプラットフォーム事業についてです。創業以来、力を注いできた事業で、最近になってようやく黒字転換を果たしました。足元でも成長が見られるため、事業基盤をさらに拡大していく段階にあります。
そして今回、新たにみなさまにご報告する、第3の柱となる系統用蓄電池の事業(調整力事業)については、3年間で100億円の資金を投下し、成長させていく方針です。
AGENDA

本日のアジェンダです。初めての方も多いと思いますので、コーポレート・ハイライトや会社概要をご説明した後、前期のご報告、中期経営計画の詳細、来期の予算計画についてご説明します。
Mission

まず、会社概要です。当社は、エネルギー問題を解決し、「エネルギー制約のない世界を次世代につなぐ」というビジョンを掲げています。このビジネスは、私が大学時代に研究していたテーマであり、当時の教授とともに始めました。「エネルギーの民主化を実現する」ことを目指しています。
過去10年から15年を振り返ると、電源の分散化や生成AIに代表されるデジタル技術が日進月歩で進化し、足元ではそれらが飛躍的に向上しています。分散電源は中央集権型の電源と異なり、制御が困難で予測どおりに動かない場合も多くあります。
そこで、デジタル技術を融合させ、さらに電気を自由に取引できる自由市場を実現することで、エネルギー価格の抑制やボラティリティの低下を図り、安心・安全に電気を利用できる社会を未来に託すことが我々の使命であり、掲げている目標です。
バリューネットワーク

お客さまの状況についてご説明します。当社のプラットフォームは、需要家で3,400拠点以上、発電家で1,400拠点以上の方々にご利用いただいており、日々このプラットフォームで売買が行われています。
パフォーマンス・ハイライト

パフォーマンス・ハイライトです。2022年7月期からの推移を示しています。順調に伸び続けた要因として、みなさまも記憶に新しいと思いますが、2022年のロシア・ウクライナ情勢による緊張感の影響でコモディティ価格が高騰し、電気代も著しく上昇しました。
これを契機に初めてと言ってもよいほどデジタルグリッドに注目が集まり、「電気代が高騰しているが、何とかならないか?」といったご要望を多くいただきました。その中で、1社1社のお客さまに向き合いながらサービスを提供してきたという背景があります。
スライド右側の四角いボックスをご覧ください。リカーリング比率は、プラットフォーム利用料に関連する売上比率を示しており、プラットフォームを利用していただいている限り継続的に得られる収益を指します。この比率が8割弱の水準となっています。
需要家への提供価値

実際にお客さまにどのような価値を提供しているかについては、需要側と発電側で少し異なりますので、まず需要側についてご説明します。
この3年ほどで、コロナ禍の発生やロシア・ウクライナ情勢の緊張に伴い、コモディティ価格のボラティリティが急激に高まりました。それに伴い、電力価格の市場もこれまでにないほどボラティリティの高い状況となっています。
このような中で、電気代が高騰したり、予算から大きく逸れるという問題に直面している方々のニーズに対応しています。具体的には、「電気を安価に調達したい」「価格を固定化したい」といったニーズに対し、プラットフォームを通じて解決策を提供しています。
我々はP2P電力取引によって、需要家と発電家が直接取引できる場を提供しています。これにより中間コストを削減できるほか、価格を固定化できる発電家と需要家をつなぐことで、電気を安価に調達できる仕組みを実現しています。
もう1つは脱炭素に関連するお話として、CO2の削減要求が強まる中で、再生可能エネルギーを調達したいと考えるお客さまに対し、それぞれに合った調達方法を提供しています。再生可能エネルギー電力を望む割合で調達する柔軟な方法を選びたいというニーズに応えるため、さまざまな電源種や量、調達方法も含めた柔軟性を提供してきました。
発電家への提供価値

発電家への提供価値についてです。こちらも大きな構造変化がありました。東日本大震災後の2012年に始まったFIT(固定価格買取制度)により、再生可能エネルギーが爆発的に増加しました。しかし、2022年からこの制度が順次終了し、新しい制度、または制度に頼らずに再生可能エネルギーを増やす必要がある環境へと変化しています。
その結果、発電家は売先を見つける必要があり、さらに需給管理を行い電気を送らなくてはなりません。加えて、その電気価格がいくらになるのかという点も不透明な状況です。我々は、発電家のみなさまが直面しているこの三重苦に対し、解決策を提供してきました。
当社には3,400拠点以上のお客さまがいらっしゃるため、安定的な売先を確保できる環境を提供するだけでなく、安心・安全に電気を送り届ける仕組みを整えています。
また、電力価格が不透明な状況への対応として、当社では四半期に一度オークションを実施しています。このオークションでは実名を伏せて匿名で行い、統計情報を開示することで、市場の相場や再生可能エネルギーを作り出せる価格帯を提示しています。
このように、再生可能エネルギーの普及に貢献するとともに、発電家のみなさまに対して価値提供を行うことに尽力しています。
成長ポテンシャル

まだ道半ばではありますが、発電拠点や需要拠点の数は、世の中全体を見ると70万から80万近く存在しています。また、さまざまな電源種があるほか、今後新しい技術に基づく発電所などが出現する可能性もあります。
このような状況の中で、我々は成長を続け、日本を代表するプラットフォームへと拡大していきたいと考えています。
通期業績 | サマリー

昨年度の実績の振り返りです。まず業績サマリーですが、前年比で大きく伸長しています。プラットフォームでの取引量が増えたことが要因で、売上高・営業利益ともに大きく成長しました。
通期業績 | セグメント別の推移

セグメント別に見ると、電力プラットフォーム事業および再エネプラットフォーム事業ともに大きく成長を遂げています。特に再エネプラットフォーム事業は、前々期である2024年7月期に黒字転換を果たし、その黒字幅も順調に拡大しています。
その他事業については、先行投資が多分に含まれています。先ほどお伝えした系統用蓄電池事業に係る投資も含まれており、こちらについては後ほどご説明する中期経営計画において、早期の黒字化を目指して取り組む方針です。
四半期業績 | 各段階収益の推移

四半期ごとの各段階収益の推移を示しています。スライド左側のグラフは売上高および営業利益率の推移、右側は売上総利益と販管費の推移を示しています。
特に注目していただきたいのは、濃い青色の売上高の推移です。先ほどリカーリング比率という言葉がありましたが、プラットフォーム利用料から発生する収益になります。このデータを見ると、「四半期で横ばいになっているのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。スライド下部に要因を2つ記載しています。
1つ目は、プラットフォーム利用料の単価水準に関するお話です。先ほど「競争環境が元に戻りつつある」というお話がありましたが、実際にこの四半期で単価が約16ポイント下落していることを確認しています。
2つ目は、季節性です。取引量(GMV)は気温が関係する部分があり、第1四半期は膨らみやすい傾向があります。当社の第1四半期は8月、9月、10月に該当しますが、現在も9月にしては暑い日が続いています。このような理由で、第1四半期は膨らみやすい傾向があります。
四半期業績 | 非財務KPIの推移

非財務KPIの推移です。取扱電力量は前年同期比プラス38.9パーセント、総契約容量は前年同期比プラス29.4パーセントと伸長しています。
一方で、一部解約があることも事実です。契約容量の月次平均解約率は、足元では約2.9パーセントの水準にあるため、これを削減することが当社の課題の1つとなっています。
2025年7月期 | トピックス

昨年度のトピックスです。スライドの一番左に示しているのは、再生エネプラットフォーム事業において「RE Bridge」という新しいプラットフォームを立ち上げ、その中で大型ディールが成立したことをご報告します。
内容としては、買い手がLINEヤフー、売り手がヴィーナ・エナジーで、70メガワット以上の再生可能エネルギーを対象とした大型の太陽光取引が成立しました。当社の収益認識の観点では、太陽光の運転開始予定日が来年8月となるため、それ以降に反映されます。このような日本を代表する企業さまとの取引が進展していることをご報告します。
スライド右上に示しているのは、系統用蓄電池事業の内容です。昨年度は、特に系統用蓄電池事業の立ち上げに力を注いできました。
まず、子会社であるデジタルグリッドアセットマネジメントを設立し、実際に蓄電池の所有・運営・開発を担う会社として立ち上げました。さらに、蓄電池を運営・運用し、最適化するアグリゲーション事業を昨年12月から開始しています。
スライド下段には、これまで当社が力を十分に注いでこなかったマーケティング領域について記載しています。前四半期の決算説明資料にも、今期の計画としてマーケティングに取り組む内容が記載されていました。
具体的には、「PIVOT」や「日本経済新聞」に加え、さまざまな広告媒体やデジタルマーケティングを通じてリードの獲得を開始しました。こちらが今年の大きなトピックスと考えています。
サマリー

中期経営計画についてご説明します。KPIと3つの方針は、冒頭でお伝えしたとおりです。
策定方針と収益推移

中期経営計画の大きな方針として、さまざまな考え方があるかもしれませんが、当社では不確実要素が多い中で3年間という期間を設定し、ローリング方式で計画を定めつつ組み直していく方針で、今回の中期経営計画を策定しました。
KPIについてはROEから蓄電池投資に関連する4項目を提示しており、基本的には高水準な成長率と、資本効率を高める「クオリティ・グロース」を指向しています。
営業利益率に関しては、足元の単価の影響や先行投資もあり、来期の計画では40パーセントを下回る水準となる見込みですが、この3年間で再び40パーセントの水準に戻る計画を見込んでいます。取扱電力量および蓄電池投資については、次のスライドからご説明します。
電力PF | 地域×電圧区分の拡張と付加価値の強化

まず電力プラットフォーム事業についてです。当社はまだ成長途上にあります。現在も多くのお客さまに毎月新たにご参加いただいています。ただし、これまでは困っているお客さまに1社1社丁寧に対応する運営方法を取ってきた結果、偏りが生じる側面もありました。
具体的には、スライド左側の円グラフのブルー部分が東京エリアを示していますが、全国平均で見ても東京エリアに偏りが見られるなど、地域性における偏りが存在しています。また、少人数体制でリソースが限られていることから、特別高圧や高圧など規模の大きなお客さまとのビジネスが中心になっていたという現状もあります。
今後は、日本を代表するプラットフォームを目指して、低圧のお客さまにも門戸を広げ、地域や領域を拡大することをターゲットとして掲げていきたいと考えています。
スライド右下には各施策を記載しています。これまでまったくマーケティングに取り組んでこなかった部分も、現在はかなり力を入れて動いています。このような施策を基に、加速度的な成長を目指していきたいと考えています。
再エネPF | スキーム・プロダクトの強化と電源種の拡大

再エネプラットフォーム事業については、5年ほど前は苦しい時期もありましたが、2023年頃から順調に伸びてきています。この背景には、FITから非FITへの時流や、太陽光発電に蓄電池を併設する取り組みなどが挙げられます。このような事例を活かし、お客さまのニーズやご要望に応えていきたいと考えています。
特にご好評いただいているのが、コーポレートPPAマッチングサイト「RE Bridge」です。現在では、需要家が検索する機能のみですが、需要家から逆オファーを行う機能などを新たに追加する取り組みも進めています。
事業の拡張に向けて、そのような機能強化や電源種の多様化を進めていきたいと考えています。
その他 | 系統用蓄電池への投資とアグリゲーションサービスの強化

第3の柱と位置づけており、今後3年間で100億円を投資すると謳っている、系統用蓄電池事業についてご説明します。
この事業は大きく2つに分かれます。1つ目は調整力を創出し蓄電池を自社で保有するビジネスです。2つ目はアグリゲーションサービス(AS)事業で、蓄電池を最適化して運用し、アセットは保有しません。これらは別会社に分けて運営しています。
AS事業についてはデジタルグリッド本体が行い、自社保有の事業は100パーセント子会社であるデジタルグリッドアセットマネジメント(DGAM)が蓄電池を保有し、会計も分けて運営・運用を行っていきます。
蓄電池の用途については、スライド右側にキロワットアワーやデルタキロワット、キロワットといった専門用語が記載されています。昨年の4月以降、多様なニーズが生まれてきています。
その他 | DGAM・ASの提供価値と成長ロードマップ

みなさまにイメージしていただきやすい提供価値の一例を紹介します。スライド左図に示されている山盛りの部分は発電所です。日本では太陽光発電が非常に普及している一方で、一部は使い切れずに出力制御が行われるなど、使い切れない部分をタイムシフトすることがあります。これは「kWh価値」とも呼ばれます。
反対に、太陽光発電が行われない時のスタンバイとして備えておく場合もあります。これは柔軟性事業、調整力事業と呼ばれるもので、このような用途もあります。
また、電源として存在しているだけで助かるといった価値もあり、蓄電池の用途が年々増えている印象を受けています。当社としてもこの価値を非常に重視しており、この事業に全力を注いでいきます。
実際の数字ベースで見ると、2028年7月期の総稼働容量としては、自社保有の事業とAS事業を合わせて383メガワットの蓄電池に携わることを目標としています。現時点では運転しているのは6ヶ所にとどまっていますが、今年度を含めて多くの内諾案件があり、この数字はまったく非現実的ではないと考えています。
蓄電池は日本のエネルギーインフラとして、また社会インフラとして非常に必要性が高まっていると感じています。
28/7期(3年後)の絵姿

2028年7月期の目標として、発電家は4.3倍、需要家は2倍以上の利用者を想定しています。さらに、第3の柱として系統用蓄電池事業に約100億円を投資し、この事業を重要な基盤として確立していく方針です。
サマリー

最後に、2026年7月期の通期計画についてご説明します。2026年7月期の売上高は、前期比で微増のプラス2.1パーセントとなる62億8,100万円を見込んでいます。営業利益については、単価の下落や調整力事業の立ち上げに伴い、23億6,300万円と減益を見込んでいます。
売上高に関しては、競争環境を考慮し、単価水準を低く設定していますが、非財務KPIである契約容量の獲得を継続的に推進し、従来どおりの成長を目指していく方針です。
再エネプラットフォーム事業においては、マーケティングに伴う大型リードの獲得を目指すとともに、「RE Bridge」でのマッチング案件数の拡大を図る施策を進めていきます。
系統用蓄電池事業については、現在多くの引き合いをいただいており、特にAS事業および自社保有の事業の2つのビジネスに注力していきます。
AS事業では一部今期中の収益貢献を見込んでいます。自社保有の事業については、今期は本格的な投資を行い、来期以降の収益貢献を目指していきます。これらの事業は今後さらに成長していくと考えています。
販管費については、先行投資を踏まえ、プラットフォーム事業と系統用蓄電池事業に対する人員採用を強化し、人員投資を行います。また、前期から実施しているマーケティングを通じてリード獲得を進めていきます。
その結果、来期の営業利益率は40パーセントを下回る見込みですが、中長期的な経営計画では40パーセント強を見込む方針です。
私からの説明は以上です。
質疑応答:解約率の現状と低減施策について

「2025年7月期の月次平均解約率は2.9パーセントとご説明がありましたが、他のSaaSビジネスと比べるとやや高水準に見受けられます。この数字の理由、および下げる余地があるのかについて、具体策と併せてご教示ください」というご質問です。
ご指摘のとおり、解約率は決して低くない水準にあることを当社も認識しています。その要因の1つとして、当社の売上の約9割を占めるパートナー企業の影響があると考えています。
パートナーには、当社のプロダクトのみを取り扱う専売のパートナーと、他の電力会社とも取引を行っている兼売・併売を行うパートナーがいらっしゃいます。今回の解約の半分以上は、併売のパートナーが当社ではなく他のパートナーにお客さまを移譲されたことが主な要因です。
この打ち手としては、パートナーとの関係強化や、パートナー向けのチャンピオンシップ制度の導入などが考えられます。それと並行して、ダイレクトセールスの比率を上げることにも当社として力を入れています。これにより、解約率の削減が可能になるのではないかと考えています。
質疑応答:系統用蓄電池事業への投資リターンについて
「系統用蓄電池事業に3ヶ年で100億円投資するとの方針を掲げられました。なぜ今これだけの投資を加速するのか、投資の結果としてどれだけのリターンを得られるのか、中期経営計画にどれだけ織り込まれているのか、時間軸と併せて可能な範囲でご教示ください」というご質問です。
系統用蓄電池は、実は日本で出てきた新しいビジネスではなく、同じ島国であるオーストラリアやイギリスでは、5年から6年前、もしくはそれ以前にビジネスとして立ち上がってきたものです。
最初の立ち上げ時は非常に重要です。その段階で蓄電池運用のシェアを確保すること、もしくは蓄電池運用におけるフロントランナーとしての地位を築くことが必要になります。特に、立ち上がり時の蓄電池の収益性は非常に高いものとなっています。
我々の期待リターンやWACCについては十分に理解しており、「自社で保有して収益が出るのか?」「プラットフォームビジネスに恥じない収益が出るのか?」というご質問をいただくことがありますが、足元では十分にリターンを見込めるのではないかと考えています。
特に、日本の系統用蓄電池市場は昨年4月にスタートしたと言っても過言ではない黎明期にあります。このタイミングでしっかりと存在感を高め、シェアを拡大していきたいと考えています。
質疑応答:今後の単価動向について
「2026年7月期に向けて単価が平常に戻ってきたというお話でした。これまでの水準よりも、新年度の水準が通常であるという認識でしょうか? また、さらなる下落を視野に入れる必要はありますか?」というご質問です。
単価が戻ってきたというよりも、競争環境が通常に戻ってきたというところです。これまで競争環境がやや緩やかだったことにより高単価であった部分が、2026年7月期に向けて変化することが予想されます。特に法人契約の場合、多くの企業が4月に切り替えを行うため、4月には単価が大きく変動する傾向があります。
今年4月は競争環境の変化に伴い、単価が下落したことが1つの要因として挙げられると思います。期中に大きな単価変動が発生することは想定していませんが、来年4月の電気の切り替え時期において、さらなる競争激化が見込まれることを織り込みながら計画を立てています。
質疑応答:今期の解約率の見込みについて
「解約率2.9パーセントについて、基本的な解約要因を教えてください。また、今期計画における解約率の設定はどの程度でしょうか?」というご質問です。
解約率については同水準を見込んでいます。解約要因としては、先ほどお話ししたとおり、パートナー経由の離脱が多かったという点です。
質疑応答:競合他社について
「競合他社について教えてください。直接の競合がなければ、プラットフォームと類似の利便性、需給調整、価格情報を提供しているのはどのようなところでしょうか?」というご質問です。
さまざまな側面で似たサービスを展開している事業者が多いため、一言でご説明するのは難しいと感じています。
例えば、プラットフォームか否かはさておき、電力を卸市場から直接購入するビジネスモデルについては、同様のサービスを展開している新電力事業者が多く存在します。その中で、卸市場だけではなく、再生可能エネルギー、固定化、ヘッジなど、選択肢を持たせて行っている事業者は多くないという認識です。
また、需給調整についてはアグリゲーションというかたちに置き換えてみると、大手商社系列や大手電力関連会社が一部取り組んでいるところはあると考えています。ただし、価格情報を発信し、オークションサイトのようなものを開催している事業者は少ないという認識です。
質疑応答:第4四半期のマーケティング施策について

「2025年7月期の第4四半期に発生した広告宣伝費の費用投下について、どのような媒体かといった詳細を教えてください。また、そこからの顧客獲得の足元の手応えもご教示いただけると幸いです」というご質問です。
第4四半期のマーケティングについて少し詳細をお話しします。まず、非常に基本的なところになりますが、「広告投下を行う前にまずは筋トレをしました」というのが正しいかと思います。
具体的には、ホームページをマーケティングの観点から設計し直し、リードが訪れた際に耐えられるように改善しました。また、Googleに拾われやすいようにホームページを改修したり、新たにホワイトペーパーを作成するなど、準備に時間をかけた部分もあります。
実際に投下した媒体としては、「PIVOT」や「日本経済新聞」、環境系のメディアのほか、一部リスティング広告で「Google」や「Facebook」などを活用しています。具体的な数値については集計中のものもありますが、リードが少しずつ出始めている状況です。
質疑応答:2026年7月期のセグメント別の売上高・営業利益について

「スライド36ページの新年度計画について、売上高の取扱電力量および営業利益のセグメント別の内訳を教えてください」というご質問です。
嶋田剛久氏:取締役CFOの嶋田です。本日はご参加いただき、ありがとうございます。ご質問いただいたセグメント別については非開示となっています。

参考としてご覧いただけるのは、スライド29ページに提示している今後の中期経営計画です。棒グラフに2026年7月期の計画を掲載しています。
それ以外の分野では、系統用蓄電池事業においてAS事業が徐々に開始され、自社保有の事業については2026年7月期から始まります。この効果は2027年7月期以降に表れる見込みで、この点についてもグラフで表現しています。
再エネプラットフォーム事業に関しても伸びが期待されており、スライドをご覧いただくとおわかりのとおり、2025年7月期の実績から計画にかけて徐々に伸び、そこから加速していくイメージです。比率としては今年度からプラスアルファといったところで推定していただければと思います。
質疑応答:マーケティングの手応えについて
豊田:「営業活動強化のお話がありましたが、今期がスタートということで、手応えを教えてください。新しい取り組みとのことですので、多少苦戦などの可能性も想定しています」というご質問です。
現状としては土台作りを進めている段階ですが、一部成果が出始めています。具体的には、リソースが限られているため、狙うべきエリアや業種・業態を絞り込み、効果的なアプローチを進めています。その業態にアプローチする際、どのようなルートが最適かを検討しています。
マーケティングはもちろん1つのツールですが、それ以外のつながりを模索することも行っています。その中で、効果的なものもあればそうでないものもあります。どのルートを選択するか、マーケティングを行う場合はどの媒体が適切かなどは、現在模索中の段階です。
もう1点、投資家のみなさまにお伝えしたいのは、プラットフォームで電気を売買するという行為自体が新しいため、一定のリードタイムが必要になることです。人材の確保と、その後の立ち上げ、新しいユーザーエクスペリエンスをお客さまと共有するまでには少し時間がかかりますが、徐々に進展している状況です。
質疑応答:系統用蓄電池事業における投資計画について

「蓄電池投資額は3ヶ年累計で100億円とのことですが、各年でどれくらい投資される予定ですか? また、投資の内容についても詳しく教えてください」というご質問です。
投資に関しては「なるべく良い案件があれば早く投資していきたい」というところです。いつ・いくら投資するかという詳細な開示は、現在のところは想定していません。ただし、案件として適切なものがあれば投資を進めていく予定です。
もちろん、それに伴う人材への投資という意味合いも含めていますが、100億円という資金の多くは蓄電池そのものに対する投資に充てられる予定です。
ご参考までに、みなさまもお詳しいかもしれませんが、まったく新しい土地で蓄電池事業を始める場合、その土地で蓄電池が系統連携できるかを確認する必要があります。簡易チェックに3から4ヶ月、本チェックを含めると9から10ヶ月ほどかかることがあり、そこから実際にプロジェクトがスタートするまでには、最短でも1年半、通常で2年ほどかかることがあります。
今期に投資するものがあるということは、数年前からその準備を進めてきたということであり、いよいよ投資のフェーズに入る段階だということです。投資のフェーズに至るまでには、やはり1年から1年半ほどのリードタイムがかかるため、その点をご理解いただければと思います。
質疑応答:単価の下落について

「スライド3ページに記載されている単価の下落についてご解説をお願いします。単価は何によって決まるのか、下げないと契約量を増やせないのか、貴社のサービスや業界の慣習、仕組みなど、基本的なところから教えてください」というご質問です。

我々は「デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)」において、旧来型の電力小売業者から電力を購入するのではなく、卸の市場で取引できるようにする場を提供しています。
電源や再生可能エネルギーから電力を調達するといった、多様な選択肢を提供しているということです。足元では、市場において電力価格がやや落ち着いていることもあり、多くの方が市場から電力を購入しています。
JEPX、つまり卸市場から電力を購入するだけで、ヘッジをせずに再生可能エネルギーも購入しないというシンプルなプランは、実は複数の新電力事業者がサービス提供を行っています。この部分だけを取り上げると、同様のサービスを提供していることになります。
そうなると価格競争が待ち受けているため、新規顧客を獲得するには単価を引き下げる必要があります。したがって、単価を引き下げてでも、まずは顧客基盤を拡大する取り組みを行っています。
質疑応答:系統用蓄電池事業の収益モデルについて
「系統用蓄電池事業に関する各ビジネスにおける収益モデルを、具体的な金額例を示してご説明していただけますか?」というご質問です。
具体的な金額を示すのは難しいかもしれませんが、アグリゲーションサービスにおいては、当社がアセットを保有したり、イニシャルCAPEXを行ったりするものではなく、運用報酬として収益を得るイメージです。
パフォーマンス連動型の収益体系を採用しており、お客さまが得られた粗利に一定の割合を掛け算したものが当社の運用委託費となるビジネスモデルを構築しています。
蓄電池を保有するアセットマネジメント事業については、イニシャルCAPEXを行い、それを回収していくという、いわゆる投資事業に非常に近いビジネスモデルとなっています。現在、蓄電池の価格はかなり下がっており、採算性も大幅に向上してきている状況です。
具体的な数値についてはケースバイケースの部分が多いため、別の機会にあらためてご説明します。
質疑応答:系統用蓄電池事業における競争環境と競争優位性について
「系統用蓄電池事業の競合はどのように認識していますか? 御社の差別化要因、競争優位な点はありますか? それとも調整力があれば収益化できる状況なのでしょうか?」というご質問です。
現在、蓄電池に限らず、火力発電や揚水発電を含めて調整力が市場で必要な状況になってきています。再生可能エネルギーの増加に伴い、調整力の重要性は今後ますます高まると考えられます。
したがって、競合して市場を奪い合うというよりは、新しいマーケットが創出され、それが拡大してきている状況です。
その中でも、我々の強みや特徴は2つ挙げられると考えています。1つ目は、高いエンジニアスキルを持つエンジニアたちが、さまざまな蓄電池に対応し、充放電を実現する仕組みを構築している点です。
従来のプラットフォーム事業はクラウド上で完結していましたが、系統用蓄電池事業ではフィジカルアセットに指令を出したり通信を行うことがより重要な領域となっています。そのため、さまざまな蓄電池やEMS(エネルギーマネジメントシステム)、さまざまな機器に対応できるスキルを持つエンジニアがいることが、大きな強みだと考えています。
2つ目は、マーケットの動向をしっかりと把握する必要がある中で、金融機関や投資銀行でマーケットを見てきた経験を持つ人材が多数在籍している点です。リスクマネジメントやマーケットでの収益機会を活かしたトレーディングなどに精通したメンバーが多いことが特徴となっています。
質疑応答:季節性の影響について
「2026年7月期の四半期の走り方について教えてください。電力ビジネスである以上、一定の季節性があると思いますが、第1四半期、第2四半期等、特にトップラインやマージン水準について気をつけておくべきところがあればご説明いただけますか?」というご質問です。
ご指摘のとおり、季節性はあります。契約料は季節性を排除した指標となりますが、GMV(電力取扱量)については売上に直結するものであり、気温と非常に高い相関があります。また、再生可能エネルギーは日射量と高い相関があります。
具体的には、第1四半期は毎年、利用料や利用率が高まることが多いです。昨年の状況を踏まえても、特に8月や9月は気温が高いため、やや高い利用率となります。そこからいったん落ち着き、冬場に寒さが厳しくなると再び電力使用が増える傾向があります。このような季節性があることをご認識いただければ幸いです。
質疑応答:キロワットアワー確保義務について
「中長期のキロワットアワー確保義務の影響について検討中とのことですが、制度が開始されると大きな影響は想定されますか? 中期経営計画にはどのように織り込まれていますか?」というご質問です。
正直にお伝えすると、キロワットアワー供給力の確保義務に関する詳細な制度設計は、まだ議論が進行中との認識です。なお、9月9日からパブリックコメント、いわゆる意見募集が進められている状況だと認識しています。
制度の開始については、2028年から2030年頃になると考えています。したがって、現時点では中期経営計画には今回の新制度を織り込んでいません。
新しい制度が始まるのであれば、当社としては業界団体に所属している立場から、より実効性のあるキロワットアワー確保市場となるよう、他企業とも連携しながら、政策提案や政策提言を行っていきたいと考えています。
我々としては、この制度が国益に資し、社会システム上で有用であると判断されるならば、その方針に従い、サービスを展開していくかたちになると考えています。
質疑応答:系統用蓄電池事業によるシナジーおよび今後の投資計画について
「系統用蓄電池事業への投資に関して教えてください。プラットフォーム事業とのシナジーはあるのでしょうか? それとも独立した事業なのでしょうか? また、プラットフォーム事業での需給調整を御社保有の蓄電池で行っていくということでしょうか? その場合、今後100億円を超えて容量を増やしていく計画はありますか?」というご質問です。
サービスが2つあるため、まずアグリゲーションサービス、つまり最適化サービスからご説明します。これは、プラットフォームでの知見がなければ実現が困難なビジネスモデルです。
各市場で需給管理を行い、計画を提出し、蓄電池を適切に運用する業務は、プラットフォームがなければそもそも実現不可能なビジネスモデルです。また、一部において「DGP」も活用して蓄電池の運用を行っており、この関係は切り離せないものだと思っています。
もう1つのアセットマネジメント、つまり投資を行う事業については、ご指摘のとおり、将来的にはプラットフォーム事業のお客さまである需要家や発電家などの実需にもご利用いただけるサービスとして展開していきたいと考えています。一方で、現在は送配電会社の調整力として蓄電池を運用していく方針を掲げています。
質疑応答:電力市場の変動と将来の展望について
「冒頭の会社説明で、電力市場の構造変化を契機に需要家、発電家の相互のニーズが高まって業績が伸びたというお話がありました。
今後、ビジネスチャンスだと考えている将来的な業界変化や、それに対して御社がどのような事業展開を行っていく予定なのか、プラットフォーマーとして確立したい将来的なポジショニングと併せて可能な範囲でご教示ください」というご質問です。
少し時系列を追ってご説明します。現在、我々が直面している状況として、2022年に発生したロシア・ウクライナ問題により電気代が高騰しました。この影響で、電気代にお困りの方々が多くいらっしゃり、それが要因となって業績が伸びてきた側面があると考えています。
今後については、中期経営計画の期間は3年ではあるものの、5年から10年といった中長期的な視点で見ても電力の構造自体が変化していくと見込んでいます。
現在、LNGの長期確保が非常に困難な状況にあるため、電力価格が変動するような事態になれば、その変動をヘッジする、あるいは変動を見越して経済活動を行うことが一部の人々にとって当たり前になると考えています。
現在は比較的市場が安定しているため、多くの方がこちらを選択するかもしれませんが、電気代が急騰したり、コモディティ価格のボラティリティが高まることがあれば、リスクを回避したいと考える方々が必ず出てきます。そこで、我々のプラットフォームとしての本領が発揮される場面が出てくるのではないかと考えています。
電力は電力会社が守っているインフラの1つです。例えば為替や金利などで影響を受ける部分も一部あるものの、比較的自由市場でやり取りされています。
現在、ガソリン価格が毎日変動しているように、電気代も変動性があるものとなりつつある中で、自らを守るというニーズが今後間違いなく生まれると考えています。そのような状況下で、当社はお客さまに付加価値を提供し続けることで、電力プラットフォームの役割を果たしていきたいと思っています。
また、再生可能エネルギーに関しては、長期スパンとなる2040年を見据えて、第7次エネルギー基本計画が2月に閣議決定されました。それに向けて、我々も持続可能なかたちで再生可能エネルギーを増やしていくことに注力し、コミットしてきました。
特に、再生可能エネルギーの価格シグナルを継続的に発信しており、再生可能エネルギーを増やすハブとしての役割を果たしながら、その立ち位置を維持していきたいと考えています。
さらに系統用蓄電池事業については、お話しした内容と重複する部分もありますが、蓄電池のみならず、揚水、火力なども含めた調整力が必要であることは間違いありません。中長期的には、持続可能性、限界費用の低さ、脱炭素といった要素が求められる中で、蓄電池は必要不可欠なインフラの1つと位置づけられています。
これだけですべてを解決するとは考えていませんが、この3年から5年の間に事業や業界全体を立ち上げることが非常に重要なフェーズにあると認識しています。我々もこの分野に対してフルコミットしていきたいと考えています。
質疑応答:成長のボトルネックについて
「需要家と発電家へのプラットフォームとしての提供価値について理解できましたが、成長のボトルネック、阻害要因はどこにありますか? 競争関係も踏まえて教えてください。どのような状況になれば、さらなる成長の加速が見込めるのでしょうか?」というご質問です。
当社をどのように知っていただくかに尽きるかもしれません。プラットフォームをいかに成長させるかは、我々の存在をいかに知っていただけるかにかなり近いと考えています。
これまでは主にパートナーのみなさまに口コミで広めていただき、成長を遂げてきました。しかし、当社を知っていただく機会は他にも多くあると考えています。
その方法がマーケティングなのか、パートナーとのさらなる連携強化なのか、あるいは直販なのかといった点は検討の余地がありますが、いかにリードとなり得るお客さまを獲得していくかが、現時点での重要な課題と捉えています。
一方で、お客さまが当社に興味を持ち、接点を持っていただいた場合の成約率、つまりコンバージョン率は、現状でも悪くない水準にあると思います。そのため、まずは当社を知っていただくことに注力している段階です。
質疑応答:価格競争になる取引の割合について
「価格競争になる取引は、DGP取引量の中で何割ありますか?」というご質問です。
現時点では具体的な数字を明確にお伝えできる資料は用意していません。ただし感覚的には、先ほど「単価が17パーセント下がった」とお話ししたとおり、割合が増加傾向にあるというのが正直なところです。
したがって、その程度の下落が見られるということは、おそらく10パーセントという水準ではなく、それ以上の比較的多い水準で価格競争に一部巻き込まれていると言えるかもしれません。ほぼすべてが市場連動型であり、当社としては付加価値が低めの商品を提供している中で、価格競争に直面している状況です。
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