(2) 青果物流通インフラの構築
a) 新工場・物流センターの拡充と新エリアへの進出
デリカフーズホールディングス<3392>は2024年3月期までに、新工場または物流センターを3ヶ所開設する計画を立てていた。候補地としては、需要増加が見込まれる関東・関西エリアに加えて、直営事業所の空白地帯だった中国エリアをターゲットに、候補地の探索を進めてきた。このうち、中国エリアについては2023年4月に広島に物流センターを開設し稼働を開始した(設備投資額2.5億円)。協力企業の営業所の一部(約320坪)を間借りして開設したもので、当面は広島近郊の新規顧客開拓や中国エリアの契約産地の開拓に取り組む方針だ。また、関西から九州への幹線便の中継ポイントとしても活用する。現地でのカット野菜の需要に対しては、近郊の協力パートナーから仕入れて対応する予定だが、規模が大きくなれば自社工場を開設して供給していくことも視野に入れている。当面の売上目標は年間9億円である。
また、2023年9月に首都圏の旺盛な需要に対応すべく板橋センターを開設した(約353坪、賃借物件)。都内の物流拠点として4拠点目となり、物流拠点の拡充によって配送サービスの質的向上を図ることを目的に新設した。首都圏エリアでも大手顧客の需要に対応するためFSセンターを増設する計画であったが、条件に適う候補物件が出てこなかったため、物流センターの強化をまずは先行した。なお、更なる拠点拡充については次期中期経営計画で方向性を決定することになるが、投資効率や財務状況も考えて業務提携先と連携して開設することも選択肢の1つとして考えているようだ。首都圏で大手ファストフードチェーンとの取引シェアを拡大するためには、専用の製造ラインをもつFSセンターが必要となっており、顧客からも要望されているようだ。こうした状況から、首都圏での外食業界向けの売上拡大余地もまだ十分にあると言える。
一方、現在建設が進んでいる大阪FSセンターは2024年3月末に竣工予定である(総工費41億円)。茨木市内に敷地面積1,398坪の土地を賃借し、延べ床面積1,650坪(3階建て)と同社グループのなかで最大規模のFSセンターとなる。工場ではカット野菜や加熱野菜の製造ラインを導入し、関西エリアでの旺盛な需要に対応していく。売上高は10年後を目途に72億円を目標とする。現在、大阪には高槻センターと茨木工場(カット野菜工場+物流センター)の2拠点があり、年間50億円の売上規模となっているが、このうち賃貸している高槻センターを閉鎖し、40億円分をFSセンターに移管する予定となっている。残り30億円分を新規顧客の獲得により埋める計画だが、すでに大手外食チェーンの関西エリアでの受注見込みが立っており、カット野菜工場も順調に立ち上がるものと見られる。大阪FSセンターは全行程を5℃以下で管理するスーパーコールドチェーン仕様となっているため、全国エリアで取り引きのある大手外食チェーンについては消費期限を延長することが可能となり、仕入率の改善効果も期待できる※。
※全国展開するチェーンとの取り引きでは、各エリアで商品の消費期限が異なる場合、最も短い消費期限に合わせて出荷するルールとなっていた。例えば関東や中京、九州のFSセンターでは、消費期限が長く取れる商品であっても、大阪にはFSセンターがなかったため、短い消費期限に合わせてその他のエリアでも出荷せざるを得なかった。
b) 幹線物流網の強化
同社は全国に安定した供給網を構築するため、自社物流による幹線便の延伸に取り組んできた。当初は東京~名古屋~大阪ルートからスタートし、現在は仙台~東京~福岡までのルートを構築した。当初は北へのルートを伸ばし、北海道から九州までをネットワーク化することで、資材・商材の共同購買及びフードロスを防ぐ在庫コントロール機能を強化する考えであったが、業務提携先のエア・ウォーターが北海道~本州ルートで強い物流網を持っていることから、協業する格好となりそうだ。逆に、西日本エリアについては同社の物流網をエア・ウォーターが活用することも考えられる。同様に提携先のベジテックとも物流に関する協業がすでに進んでいる。配送の内製化率については現状で約35%水準のとなっている。
売上規模の拡大に対応するため、保有車両台数については2023年3月期の110台から2024年3月期は40台増車する予定だ。ドライバーの採用も前期末の193名から212人に増員し、また受託物流サービス事業を拡大することで、2024年問題※に対処する方針である。
※2024年4月より働き方改革関連法により、自動車運転業務の時間外労働時間に年間960時間の上限規制が適用されることになり、主に長距離輸送の物流会社にとってはドライバーの確保が重要となる。荷主企業にとっては運賃の値上がりによる物流コストの上昇が懸念されている。同社は物流の内製化を一定割合まで進めたことで、物流コスト上昇の影響を軽減できるほか、逆に受託物流サービスを行うことによって、コスト増分を吸収できる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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