1. 2023年11月期の業績概要
サムティ<3244>の2023年11月期の業績は、売上高が前期比54.6%増の198,660百万円、営業利益が同38.7%増の19,533百万円、経常利益が同9.8%増の15,854百万円、純利益が同5.2%減の10,306百万円と大幅な増収増益となり、過去最高益(純利益を除く)を更新した。
売上高は、積極的な物件販売により「不動産開発事業」及び「不動産ソリューション事業」が伸びたほか、「海外事業」の拡大、「ホテル賃貸・運営事業」の好転などが増収に大きく寄与した。また、重視する「インカムゲイン」(売上高ベース)についても、「ホテル賃貸・運営事業」の回復などにより前期比40.7%増の28,399百万円と伸長した。
利益面でも、「不動産開発事業」「不動産ソリューション事業」「海外事業」の伸びにより大幅な営業増益を実現した。また、ここ数年コロナ禍の影響を受けてきた「ホテル賃貸・運営事業」についても、稼働率や客室単価の上昇などにより損益改善が進んでいる。一方、営業外収益は為替差益の減少※1により前期比でマイナスとなった。また、純利益のみ減益となったのは一過性要因※2によるものである。
※1 海外事業(外貨建て資産)に係る為替差益の減少。2022年11月期は急激な円安進行の影響により多額の為替差益(57億円)が発生したが、2023年11月期はその反動減により営業外収益は前期比でマイナスとなった。
※2 2023年1月に公表した不適切な会計処理(連結対象範囲の判断)に係る疑義事案に対して特別調査費用(約9億円)を特別損失に計上したことが理由であるが、事案そのものはすでに解消済である(詳細は2023年10月12月発行の弊社レポートなどを参照)。
今後の成長につながる仕入れについても、開発用地99物件(取得金額約398億円)、収益不動産53物件(取得金額約325億円)を取得した。開発用地については2024年12月期決済予定分が積み上がっており、それを合わせればおおむね計画どおりに進捗している。一方、収益不動産については物件価格の高止まりなどを踏まえ、仕入れ活動のさらなる強化を図りつつ、より厳選された物件への投資を推進する。
財政状態については、開発用地や収益不動産を取得した一方で、物件販売を積極的に進めたことから、資産合計は前期末比ほぼ横ばいの413,429百万円となった。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより前期末比6.9%増の105,544百万円に増加したことから、自己資本比率は25.5%(前期末は23.9%)に改善した。有利子負債(新株予約権付社債を除く)も前期末比0.9%減の265,450百万円に減少しており、財務面では一旦引き締める格好となった。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1) 不動産開発事業
売上高は前期比39.7%増の102,627百万円、セグメント利益は同3.6%増の16,193百万円と増収増益となった。レジデンス(63物件※1)及びホテルその他(3物件)の合計66物件(前期は合計54物件)を販売し大幅な増収を実現した。一方、利益面では増収に伴って増益となったものの、キャップレート※2が若干強含みで推移したことや外部(SRR以外)への販売が多かったことに伴うコスト増などによりセグメント利益率は15.8%(前期は21.3%)に低下した。
※1 そのうち、SRRへの供給は4物件
※2 不動産投資における期待利回り(=賃料等の純収入/物件価格)のことであり、キャップレートの上昇は物件価格の下落につながる。ただ、長期金利などに連動してやや強含みではあるものの、現時点で大きな変動はなく総じて低位に推移している。
(2) 不動産ソリューション事業
売上高は前期比86.8%増の53,523百万円、セグメント利益は同66.8%増の6,554百万円と大幅な増収増益となった。収益不動産60物件(前期は37物件)の販売が業績の伸びに寄与した。
(3) 海外事業
売上高は前期比122.9%増の16,640百万円、セグメント利益は1,237百万円(前期は593百万円の損失)と大きく拡大し、黒字に転換した。ベトナム国ハノイ市での分譲住宅事業「THE SAKURA プロジェクト」(4棟)の販売状況は順調であり、物件の引き渡しとともに売上計上が進んできた。本プロジェクト全体での完売時における売上高は約407億円、プロジェクト利益は約57億円を想定しており、引き続き海外で取り組む初めての分譲住宅事業の完遂に向けて事業を推進する。また、本プロジェクトの好調を受け、同国ホーチミン市において第2弾となる分譲住宅事業「THE STAR プロジェクト」(詳細は後述)が始動した。
(4) 不動産賃貸事業
売上高は前期比0.3%減の8,679百万円、セグメント利益は同3.5%減4,020百万円と減収減益となった。積極的な物件販売の影響を受け、前期比でわずかに減収減益となったが、2023年11月期末のレジデンスを中心とする保有資産は152物件(前期末は160物件)を確保するとともに、レジデンスの稼働率は約93%と引き続き堅調に推移している。また、昨今のインフレに対応すべく、保有する賃貸マンションの賃料の増額施策を進めている※。
※賃料については、入居者の入れ替え時に賃料を増額し、対象戸数(1,986戸)に対して1,206戸の増額を実現した(平均約4.6%の増額)。また、同社開発物件における新築時の募集賃料についても上昇傾向にあり、保有物件、開発物件ともに賃料の増額を推進している。
(5) ホテル賃貸・運営事業
売上高は前期比106.9%増の13,020百万円、セグメント損失は1,086百万円(前期は2,742百万円の損失)と大幅な増収により損失幅が改善した。全国旅行支援やインバウンドの増加などにより、保有・運営ホテルの稼働率及び客室単価は回復傾向にあり、業績の底上げに寄与した。利益面では、開業間もないホテル※の巡航稼働までの影響(先行費用)を抱えながらも、増収により損失幅が改善した。
※2023年11月に開業した同社開発ホテル「メルキュール東京羽田エアポート」(363室)など
(6) 不動産管理事業
売上高は前期比29.0%増の6,700百万円、セグメント利益は同38.6%減の476百万円と増収ながら減益となった。SRRを含むAUM(運用資産残高)の拡大や、PMによる管理受託戸数の拡大が増収に寄与した。AUMは3,827億円(2023年1月末時点)、管理受託戸数は30,646戸(2023年11月末時点)の規模となった。また、後述のとおり、進行中の開発パイプラインも10,000戸以上抱えていることから、今後も順調に拡大する見通しである。一方、利益面で減益となったのは、全国への拠点展開など、事業規模拡大に伴う費用増が影響した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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