1. 事業概要
首都圏エリアを中心にプロパスト<3236>の企画力・デザイン力を生かした分譲マンションを開発・販売している。主たる対象は単身層やパワーカップルである。分譲開発事業は、2~3年程度かかる長期プロジェクトとなる。企画やデザインについては、当該物件の土地の特性や地域性及び周辺環境とのバランスを考慮して、プロジェクトごとに独立したコンセプトによる空間デザインを創り出す。ネーミングに関しても、それぞれのコンセプトにふさわしい個別の名付けが行われる。なおローンが付きやすいため、RC造(鉄筋コンクリート造)を多く手掛けている。最近では、最寄駅から徒歩5~10分、1戸当たりの広さ40~60平米、販売価格50~100百万円のマンションが中心で、1物件当たりの売却金額は2,000~4,000百万円である。
2023年5月期は、成約上の完売物件があったものの2023年10月の引き渡し予定のため、売上計上する引き渡し物件がなかった(前期は427百万円)。一方、売却済の物件に係る追加工事費用が発生したことから、営業損失3百万円(同17百万円の利益)を計上した。同事業は2022年5月期においても、販売が進捗したことに伴い販売戸数が少なくなっていたことから、業績への寄与は限定的であった。ただ、2024年5月期には、ガレリア ドゥエル神田岩本町の竣工に伴い、同事業は再び収益貢献する見通しだ。
2. 特長
同社の強みの1つは、デザイン性の良さにある。都会で生活を送る大人向けのマンションと位置付け、間接照明がくつろぎを誘うような雰囲気を出している。このデザインは自社内の設計部が行っており、これも強みにつながっている。同社では、土地の仕入力、企画力、販売力などにも自信を持っている。
不動産業では、市況価格の変動が業績に最も大きな影響を与える。リーマンショック後には、完成物件の下落率は5~10%にとどまった一方、土地及び仕掛物件では下落幅は30~40%に及んだ。同社では、仕入れてから2~3年後には販売するため価格下落リスクは比較的低く抑制できており、10~15%程度の市況下落でも損失を出さない仕組みを構築している。ただ近年は首都圏の新築マンションの1戸当たり平均価格は高水準で推移しており、それに伴い契約率は低下し販売戸数も減少傾向にある。ディベロッパーが新築マンション市場の先行きに対して慎重になり供給が減少しているためであるが、引き続き都心のマンションに対する需要は根強いようだ。同社では、無理をせず慎重に仕入を行う方針である。同社の強みである「仕入力」「企画力」「デザイン力」などを生かして、事業環境の悪化にも対応すると見られる。
3. 実績例
(1) ドゥアージュ コラッド松濤
ドゥアージュ コラッド松濤(東京都渋谷区松濤、2019年12月竣工、22戸)は、静謐を保ち、気高く刻を重ねてきた地「松濤」に呼応する邸宅である。日本の美が息づくエッセンスとこの地に伝わる地脈と気高さを融合し、日本伝統の和の空気を纏いながらそれらが共鳴する、美しくモダンな非日常の世界を創り上げた。既に全戸を完売した。
(2) プルームヌーベル武蔵野
プルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市中町、2019年11月竣工、31戸+店舗1)は、「三鷹駅」最寄りの武蔵野市アドレスでは、約2.3%しか存在しなかった駅徒歩4分圏内の場所にある。「立地を背景とする資産性」は住まい選びの選択基準の1つと言える。また、安心の「完成後販売」のため実際の部屋を確認できる購入者は入居後の安心を得ることができる。2020年4月には、マンションの資産価値等を比較する不動産情報サイト「住まいサーフィン」で「資産性指数ランキング東京市部」の1位を獲得している人気物件で、既に全戸を完売した。
(3) ガレリア ドゥエル神田岩本町
ガレリア ドゥエル神田岩本町(東京都千代田区岩本町、2023年9月竣工予定、52戸)は、「伝統」と「先進性」の2つのコンセプトを備えた素材を組み合わせることで表現した。素材の1つひとつに、こだわりを持たせながら2面性を融合させた“和の空気”を纏った物件である。2022年5月より第1期販売を開始したが、好評により7月下旬には契約完売となり、2023年10月末に顧客に全戸引渡し予定である。
(4) その他
その他の近年の実績例としては、アスデュール日本橋人形町(東京都中央区日本橋堀留町、2019年11月竣工)、ザ・グランプルーヴ上馬(東京都世田谷区上馬、2019年7月竣工)、グランデバンセ御殿山 ザ・レジデンス(東京都品川区北品川、2018年4月竣工)、バンデルーチェ北斎通り(東京都墨田区亀沢、2017年6月竣工)、ヴァントヌーベル代々木(東京都渋谷区千駄ヶ谷、2017年2月竣工)、ベグレッタ トーレ(東京都葛飾区新小岩、2016年4月竣工)などがある。このように同社では、物件ごとにそれぞれのコンセプトに相応しい個別の名称を付けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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