2日の米株式市場でダウ平均は74.15ドル安(-0.22%)と続落、ナスダック総合指数は+0.66%と4日続伸。9月ISM製造業景況指数や製造業PMI改定値が予想を上回ったほか、連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事が複数回の利上げの必要性に言及し、10年債利回りが2007年来の高水準に達したことが重しになった。東京株式市場でも米長期金利の上昇や金利高止まりによる景気後退懸念を受けてリスク回避の売りが先行し、日経平均は151.91円安からスタート。香港株の大幅下落も重しになり、前場中ごろには31260.99円(498.89円安)まで下落した。その後は下げ渋ったものの、戻りは鈍く安値圏での底這いが続いた。
個別では、原油市況の下落を受けてINPEX<1605>や石油資源開発<1662>、ENEOS<5020>、出光興産<5019>などが大幅安。DOWA<5714>、住友電工<5802>、神戸製鋼所<5406>、三菱製鋼<5632>、日立建機<6305>、コマツ<6301>などの非鉄金属や鉄鋼、建機といった資源関連株も大きく下落。為替の円安基調は維持されているものの、マツダ<7261>や三菱自<7211>の輸送用機器も大幅安。業績予想を下方修正したネクステージ<3186>、瑞光<6279>、ライトオン<7445>、減益決算が嫌気された象印マホービン<7965>、業績上方修正も出尽くし感が先行したダイセキS<1712>などが急落している。
一方、ソニーG<6758>、ニデック<6594>、イビデン<4062>などのハイテクの一角がしっかり。ディフェンシブセクターとして選好されたか、ヤクルト<2267>、キユーピー<2809>、江崎グリコ<2206>の食料品が高い。政府クラウドへの参入方針報じられた、さくらインターネット<3778>は急伸。上半期上振れ着地となったしまむら<
8227>、自己株TOBを発表したリクルートHD<6098>、外資証券が投資判断を引き上げた野村不HD<3231>なども上昇。東証スタンダードではプロネクサスとの業務提携が材料視されたアクセスグループ<7042>がストップ高まで買われた。
セクターでは鉱業、石油・石炭製品、非鉄金属を筆頭にほぼ全面安となっている一方、空運、食料品のみが上昇している。東証プライム市場の値下がり銘柄が全体の76%、対して値上がり銘柄は21%となっている。
本日の東京株式市場は大きく続落。前日の日経平均は一時500円超も上昇した後、午後に急失速し、結局97円安と下落して終えた。高値からの下げ幅は600円を超えた。本日もそうした悪い流れを引き継ぐ形で日経平均は500円近い下落となっている。
日経平均は25日線や75日線の主要な移動平均線を大きく下放れてきている。また、週足では13週線に続き26週線も下回ってきており、テクニカルな悪化が鮮明になっている。心理的な節目の31500円も8月21日以来、割り込んできており、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の売りに拍車がかかるような状況だ。
東京証券取引所によると、9月22日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は3兆7562億円と、8月4日以来の年初来高水準にまで積み上がっていたため、個人投資家の手仕舞い売りなども広がっていそうだ。
米10年債利回りは2日、4.67%と先週末(4.58%)から大きく上昇。一時4.7%台に乗せ、2007年以来の高水準を記録した。日本の10年債利回りも本日一時0.780%まで上昇し、高値を更新してきている。日米長期金利の上昇に加えて個人投資家による手仕舞い売りを背景に、東京株式市場では新興株が特に厳しい下げに見舞われていて、マザーズ指数は年初来安値を更新している。
米長期金利の上昇の背景としては、米財務省による中長期債の発行規模拡大などの中長期的な需給環境の緩みに加えて、全米自動車労組(UAW)のストライキ、依然としてくすぶる米政府機関の閉鎖への懸念など多くの要素が絡んでいるだろう。
また、前日は、米9月ISM製造業景況指数が49.0と、市場予想(47.9)や8月(47.6)を大きく上回ったことも米長期金利の上昇に影響を及ぼした。生産の項目が拡大・縮小の境界値である50を超える52.5にまで上昇し22年7月以来の高水準を記録したほか、雇用の項目も51.2と4カ月ぶりに50を超えた。
一方、仕入れ価格の項目は43.8と8月(48.4)から大幅に減少した。また、米長期金利の上昇に大きく影響していた原油市況については、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格(期近物)が9月28日に一時1バレル=95ドルを超えたものの、足元では88ドル台にまで下落してきた。それにもかかわらず、足元で米長期金利の上昇ペースに歯止めがかからないのは気がかりだ。
今週は週末の米雇用統計に加え、今晩の米労働省の雇用動態調査(JOLTS)、明晩の米9月ADP全米雇用リポートなど雇用関連の指標が相次いで発表される。これらの指標で労働市場の逼迫緩和が改めて示唆されれば、米長期金利の上昇が一服し、株式市場が持ち直すことも考えられるが、目先は金利動向に神経質な状況が続こう。
一方、物色動向に関してはやや変化が出てきた。本日の東京株式市場では、原油市況の下落もあり資源関連を中心に景気敏感株・バリュー(割安)株の下落が目立つ。9月末の配当権利取りを狙った動きが一巡したタイミングで、日米の長期金利が上昇しているなかでも景気敏感・バリュー・高配当利回り銘柄の下落が目立つのは物色の変化を感じさせる。
また、日米長期金利が大きく上昇しているにもかかわらず、東京株式市場でのハイテク・グロース(成長)株の下落率は比較的軽微で、むしろ底堅い印象すら抱かせる。むろん、それまでの下落率が大きかったということもあるが、米ナスダック総合指数については4日続伸と金利高に逆行しており、こうした動きは注目に値しよう。今週の米雇用関連の指標で労働市場の軟化、米長期金利の上昇一服が確認されれば、ハイテク・グロース株への物色シフトが一段と進む可能性がありそうだ。
(仲村幸浩)
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