3. 新中期経営計画
(1)「新中期経営計画2025」の概要
TOKAIホールディングス<3167>は、2026年3月期を最終年度とした3ヶ年の「新中期経営計画2025」を2023年5月に発表した。「事業収益力の成長(収益基盤の拡大+新サービスの展開)」「脱炭素化社会の実現に向けた持続的成長基盤の強化」「成長の源泉となる人財の育成と組織の活力の最大化」の3点に取り組み、経営数値目標として最終年度となる2026年3月期に売上高で2,600億円、営業利益175億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円、継続取引顧客件数357万件を掲げる。3年間の年平均成長率は、売上高で4.1%、営業利益で5.5%となり、継続取引顧客件数については2.7%成長と堅実な計画となっている。
さらに長期ビジョンとして、2030年度の目指す姿に売上高4,000億円、営業利益300億円、継続取引顧客件数500万件を掲げる。同目標値を達成するためには、2027年3月期以降の成長スピードを加速する必要があり、オーガニックな成長に加えてM&A戦略も推進しながら目指すことになりそうだ。
(2) 事業セグメント別戦略と業績目標
a) エネルギー事業
エネルギー事業は2026年3月期に売上高1,087億円、営業利益78億円を目指す。年平均成長率では2%の増収増益となる。M&A・アライアンスの推進と営業エリアの拡大により、LPガスと都市ガス合わせて顧客件数を前期末の82万件から94万件に拡大するほか、DXによる業務効率化、顧客満足度の向上を図ることで他社との差別化を図り、シェア拡大を目指す。LPガス等の販売価格は2024年3月期以降、横ばいで推移することを前提とする。顧客件数は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響でM&A交渉が難航した直近3期間でも11万件増加していることから、12万件の積み上げは可能と弊社では見ている。
b) 情報通信事業
法人向け情報通信事業は2026年3月期に売上高390億円、営業利益51億円を目指す。年平均成長率では10%増収、3%増益となる。旺盛なDXニーズや行政も含めたクラウドサービスの拡大が見込まれるなか、ネットワークインフラの拡充を進めることで事業拡大を図る。光通信ネットワークの拡張(九州エリアへの延伸)と既存ネットワークの能力増強を図るため利益成長率は低くなるが、ストックビジネスの積み上げにより中長期的な利益貢献が期待される。
個人向け情報通信事業は2026年3月期に売上高259億円、営業利益14億円を目指す。年平均成長率では2%増収、33%増益となり、利益改善を大きく見込んでいる。従来と同様、販売チャネルの連携強化やサービスラインアップの充実に取り組むことで、顧客件数を前期末の84万件から93万件を目指す。利益率の上昇は販売ミックスの改善や減価償却の負担軽減が要因と見られる。
c) CATV事業
CATV事業は2026年3月期に売上高379億円、営業利益64億円を目指す。年平均成長率では3%増収、1%増益と安定成長を見込む。顧客件数を前期末の129万件から135万件に積み上げていくほか、グループ各社において地域のニーズに合わせた新事業・新サービスを展開し、新たな収益の創出を図る方針だ。具体的には、ネットオプションサービス(訪問サポート、遠隔サポート、ネットセキュリティサービス等)や家電のサブスク・空き家管理サービス、フィットネスジム起点の健康系事業、シェアサイクル起点の地産電気活用事業など各種サービスを企画開発して取り組んでいる。引き続きM&Aも検討しているようで、成約すれば上乗せ要因となる。
d) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業は2026年3月期に売上高373億円、営業利益30億円を目指す。年平均成長率では12%増収、14%増益と事業セグメントのなかで唯一2ケタ増収増益を計画している。2019年以降、土木建築工事をメインに展開する日産工業(株)や電気設備工事を行う中央電機工事(株)、大規模修繕工事を行う(株)マルコオ・ポーロ化工など、建築分野における様々な事業会社をグループ化しており、これらグループ会社のリソースを結集、総合建築事業会社として中京エリアで事業を拡大する戦略だ。今まではグループ各社が単独で受注活動を展開してきたため、売上の伸びも限定されていたが、グループとして一括受注する案件を増やすことで売上規模の最大化が可能となり、グループシナジーも顕在化すると期待される。
e) アクア事業
アクア事業は2026年3月期に売上高87億円、営業利益8億円を目指す。年平均成長率では5%増収、17%増益となる。静岡・関東・中京エリアにおける販売強化を推進し、特に静岡県内については今までリターナブルシステムでサービスを提供してきたが、物流コスト上昇を受けてワンウェイシステムでの販売も開始する。2023年4月より給水型浄水ウォーターサーバーの販売も全国で開始し、解約防止策の1つとして活用する。顧客件数は前期末の17万件から19万件と2万件の純増を目指すが、直近3期間では競争激化もあって0.4万件の増加に留まっていることから考えると目標達成のハードルはやや高い印象で、顧客獲得を優先するか利益を重視するかで業績も変わってくると予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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